平成23年度 事業推進方針(案)

1.環境適応を求められる酪農経営 ‐環境変化にどう向かい合うか‐
   酪農経営は、土地利用型農業の中でも最も多くの経営資源を結び合わせて産物(生乳)を生産する
  複合素材活用製造業であり、製造工程において単一素材の調達・運用だけではなくその組み合わせ
  によって生産品の算出高、生産費用が大きく異なる特質を有している。
   又、その調達・運用に当たっては外部組織との交渉・妥結を必要とされることが多く、経営者の意思
  だけで最適の投入産出を得られるものではない。
   農業政策や市場等のマクロな外部環境と気象・作況・酪農技術等の内部環境に自らを適合させて
  環境適合していく必要がある。
   その投入・産出とも経営内部で自己完結するものではなく外部環境と競合・共存しながら経営の仕方
 (戦略)を柔軟に変更していかなければならない。
   それらの環境の変化にどう自己変革(適合)していくかが経営の要点となっている。
   経営の仕方(戦略)は、外部環境の生み出す機会や脅威に適合するように経営資源を蓄積・展開
  していくことにあり、環境要因の中にいかなる機会・脅威が存在しているかを主体的に洞察し、どの
  方向と領域で経営内の資源を最も効果的に展開していくかが問われている。

  1)個別経営に影響を及ぼす外部環境変化と趨勢   「H22事業報告一般概要の要約」
    ○ 生乳は貯蔵性が低く需要に応じた生産による需給安定が不可欠となっており、乳製品在庫量
     を適正に保つための計画生産(増産と減産への対応)が欠かせない。
    ○ 景気の低迷により畜産物全体の需要が停滞し、新たな需要喚起による販売量の維持を図らな
     ければならない。
    ○ 新たな需要創出(チーズ生クリーム向)、飲用需要停滞によって低価格のチーズ・加工向のウエイトが
     高くなり手取りプール乳価は、生産コスト(損益分岐)を上回る収益が狭まる傾向にある。
    ○ 生乳生産費の過半を占める飼料費が、穀物価格の高騰によって配合飼料価格が上昇傾向に
     ある。又、原油価格の値上がりは関連資材価格と自給飼料調整のための燃料費の増加を招き
     生産費が嵩みつつある。
    ○ 国内農業の保護、自給率の確保を訴求しながらも、貿易経済のグローバル化により、二国間の
     自由貿易・経済協定等の参加の有無を問わず輸入価格との競合は避けられない。
    ○ 酪農・畜産政策は、国際化の進展の下で、品質や安全性等での優位性の発揮、需要に応じた
     生産・販売、環境負荷低減、自給飼料活用等を重視する方向に向かっており酪農経営の体質
     強化が政策の流れとなっている。

  2)根室酪農に共通する経営発展阻害の環境(要因)
      ○ 2010年6月〜10月までの平均気温は平年を上回り、暑い夏となって乳牛に大きな負担をかけ
     生乳生産の減少、受胎率の低下を招き体調と生乳生産の回復が遅れている。
    ○ 暑熱は、乳牛の体調に最も大きく影響し、個体乳量や無脂固形分率、乳蛋白率乳脂肪率の
     低下、体細胞数や乳房炎の増加で8月以降の生産の落ち込み大きい。
    ○ 受胎率の低下が本年の分娩時期の「後ずれ」を来たし分娩ピークが8月以降にずれ込むこと
     が想定される。
    ○ 2010年産自給飼料は7月上旬の降雨によりの栄養成分は、NDF(中性デタージェント繊維)が
     やや高いが、蛋白・TDNとも前年産より低くなっており自給飼料の低品質を配合飼料の追加
     補充で乳量を維持している。
    ○ 草地改良が滞っており、雑草混入、植生の劣化によって草地生産力と栄養価の低下が
     顕著となっている。

2.根室酪農の経営構造 −飼養規模の拡大に伴う生産基盤・飼養管理の重要性−
   @ 管内の年間生産目標810,977tに対し798,595tの出荷量に留まり98.5%の未達となり、前年度の
    実績(実績811,048t)をも下回り、同じく98.5%の対前年比の実績となった。
   A 酪農家戸数は、1年間で18戸の休農・離脱があり1,319戸に減少した。新規参入を加えても毎年
    休農離脱する傾向は続いており1,319戸で798,595tの生乳を産出し、一戸平均で605tの生乳を出荷
    した。(H22末1,337戸、811,048t、1戸平均606t)
   B 一戸当たり出荷乳量は毎年緩やかに増加しており、600t以上の階層の中でも1,000t以上の伸び
    が著しい。(H22は暑熱の影響で1,500t階層の増減変動大)
   C 生産乳量が多い階層ほど個体能力(2千t生産=@9,967s)は高く、繁殖成績(分娩後初回授精
    日数(78日)・分娩間隔(417日)・初産月齢(24ケ月)等)は良い。
   D 経産牛頭数が減少(H22/1  105,975頭→H22/12 104,575頭 ▲1,468頭)しており生産力は
    弱まっている。
   E H22暑熱は乳生産に影響するとともに、夏以降の受胎率が低下しており次期分娩予定が後ズレ
    し秋期からの分娩が多くなっている。
   F 耕地面積約105,000haのうち年間草地改良実施面積は4,080ha(H22)に留まっており草地更新
    サイクルが長くなっている。植生の劣化によって栄養価(TDN56、蛋白10.4)収穫量とも飼料価値
    は低い状況にある。

   以上のとおり根室酪農の概観は、経産牛の減少、受胎率の低下、粗飼料の品質低下で全体生産力は停滞している。
 一方で大規模経営体では緻密な飼養管理で乳牛能力は高く牛群の生産性も安定しており、乳牛の遺伝的能力に適した栄養(飼養)管理が活き届いているとみてよい。
 乳代の目減りという動かし難い外部環境に対し経営をどう自己変革し適合していくか、増産によって粗収入を伸ばすことが経営維持に好作用を及ぼすことからも、乳量増加と乳牛の生体機能に合わせた栄養管理、それを支える自給飼料基盤が経営革新のスタートとなることを確認したい。