茶路めん羊牧場便り

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ラムレター 創刊号(一部ばっすい)

茶路めん羊牧場 武藤 浩史
発行 小西 徹

 

こんにちは!!私たちから皆さんへ、初めてのラム.レターをお届けします。

ラム−そう、生まれて一年にならない子羊のこと。柔らかく、上品な味わい、豊富なビタミン、そのうえ、低カロリーと三拍子揃ったラムは、フランス料理では、最高級とされています。日本人は、羊の肉というと、ジンギスカンを思い浮かべてしまいますが、その多くは輸入された冷凍肉です。国内産の新鮮なラムのヘルシーな味わいを、多くの人に知ってほしい、それだけでなく、私たち人間の衣食住を8000年以上の昔から支えてきた"羊"を通して、素敵な出会いをしてみたい...そんな願いをこめ、この小さな通信をお届けします。
 北海道は道東、釧路のとなり町に白糠町があります。町内を南北に流れる茶路川を、鮭と一緒に9km遡った川のほとりに、白い綿帽子の様に羊たちが点々と牧草を食む姿が見えたらそこが総勢350頭の羊たちが暮らすブラウニーレーン・シープランチです。ブラウニーレーンとは、Browny茶色の、Lane小径、SheepRanch羊牧場、すなわちこの地名をあてた「茶路めん羊牧場」という意味と、Brownie茶色の妖精、Lane小路で「妖精の小径羊牧場」という二つの意味があります。(実際はメルヘンティックな名前とはほど遠い発展途上?の農場で、6年前ひつじ小屋の片隅に寝起きしながら35頭のひつじと共にスタートして以来、あっちこっちつぎはぎしながら奮闘中...)
牧場全景 この牧場をやりくりする羊飼いの名は、武藤浩史(35才)。京都生まれの牧場主です。ひつじに魅入られて15年、羊に飯を食べさせるのではなくて、羊に飯を食べさせてもらうことを夢見て、くる日もくる日も羊を追いかけている羊男。彼の羊への情熱と、その哲学は、後頁の彼自身の文に譲ることにします。もう一人の羊男、田口裕一(30才)は、大学で武藤氏と出会い、カナダで2年間羊飼い修行を積んで帰国、武藤氏と共に5年間この牧場をきりまわして、今年9月に山一つ隔てた丘陵地にめでたく牧場を開設しました。二つの羊牧場が、ラム・レターの両輪です。
 労働も、暮らしも、すべての価値をお金に引き変えながら、あくせく都会で働く私たちに茶路の羊牧場は、風の通り道を作ってくれそうな予感がします。自然とのつきあい方、見失いかけていたのびやかな"夢"・・・。それらをそんなに肩肘はらずに、おいしいラムを食べながら、鼻歌まじりにやってみようと思います。この小さな通信がラム・ファンをつなぎ、活用していただければこんな嬉しいことはありません。_____ラム・レターは、"羊ネットワーク"への期待をつめこんだあなたへのラブ・レターなのです。

武藤 邦代

 


 

なぜなぜ羊 なぜなら羊!

茶路めん羊牧場 武藤 浩史

 なぜなぜ羊?なぜなら羊。僕が羊と知り合ってから15年になりますが、最初に羊に対して抱いたなぜという疑問に対して今だになぜならばと言う答えが得られてはいません。それほど羊とは興味が尽きずミステリアスな存在であり、知れば知るほどに新たな楽しみが湧き出てくる不思議なポケットのようです。羊と付き合うという事は羊を好きな人達との出会い、親交であり、この出会いの楽しさとそれら多くの友人の励ましが羊飼いを続ける活力になっているのかもしれません。羊と同様優しく、穏やかで、とても個性的で、ユニークな人ばかりです。機会があればそんな友人たちと皆さんにご紹介したいと思います。
子羊 みなさんにとって羊飼いという言葉から描くイメージは、モンゴルの遊牧民や、スイスの山小屋で生活しているペーターの様な現実の生活からかけ離れたものかもしれませんね。しかし、実際僕自身は毎日朝から晩まで休む暇なく仕事に追われ、牧歌的イメージの羊飼いとは似つかない、時間におわれる都会のビジネスマンの様な生活を送っています。それでもそんな仕事の合間にふと羊が草原で草を食む姿を見ていると時間がゆっくり流れているように感じられるのは、どうしてでしょうか?一説によると、羊と人は8000年の昔から一緒に生活しているといわれています。この間に人類は色々な出来事がありましたが、トルコの草原で、モンゴルの大地で、ピレネー山脈の山肌で、オーストラリアの地平線をバックに、そしてここ白糠の牧草地で、彼等は変わる事無く草を食み続けてます。一昨年の湾岸戦争の折に、イラン、イラク国境地帯でクルド人達が養う羊達も人類の愚かしさを横目に草を食べていたことでしょう。今年始めに釧路を襲った大地震の直後、停電の中がらくたをかきわけて羊の様子を見に牧舎へ行ってみると何事もなかったかのように草を食べていました。悠久の歴史の中で変わることなく過ごしてきた羊、だから彼等を見ていると時間がゆっくりと流れるのが分かり、自分自身が瞬間の存在だと気づくのかも知れません。
 羊と営む1年のカレンダーは、2月の厳冬期に子羊が生まれ、草木が一気に芽吹く春にその子羊が離乳して一人立ちし、親羊は毛刈りで衣替えします。牧草地に放された羊達は心地良い北国の春から夏にかけ太陽をいっぱい受け、すくすくと育ち、やがて秋には親達の種つけが始まり、それと同時に丸々と成長し仔羊が順番にラム肉として出荷されていきます。
 山の草木が枯れた頃羊達が、牧草地から戻ってきて冬の支度が始まり、そしてまた季節は巡り同じようにカレンダーがめくられてゆきます。実際にはこの間羊の世話ばかりでなく営業に出かけたり、肉の解体やら調理やら、事務仕事もあれば、アルバイトもあったり、羊の総合利用を商売としている羊屋家業ですが、羊とそれを取り巻く自然の移ろいに触れながら季節を感じ、一年が過ぎてゆくのは貧しくとも幸せなことかなあと感じています。

 


 

草−羊−土のサイクルが美味しいラム肉やふわふわの羊毛を生むのです

 羊は朝から晩までひたすら口をもぐもぐさせて、ひねもすのたりのたりと牧草を食べながら草地を歩き、一見食っちゃあ寝の優雅な生活に見えるかもしれませんが、どっこい彼等は一生懸命働いているのです。もぐもぐしているのは、反芻動物としての習性です。牛、羊の仲間は反芻獣といって、4つの胃袋を持ち草を食べ、胃袋の運動により食物を砕き胃袋の中にいる微生物によってそれを分解しています。この為一度飲み込んだ草をまた口に戻して噛み返すという作業(反芻)を繰り返しています。彼等は一日中採食、反芻、休息を繰り返しながら人間の分解できない食物繊維(草)を動物性蛋白(お肉)に変え、我々に提供してくれます。草は消化吸収された後は糞尿となって排泄されます。排泄された糞は昆虫やミミズや更に微生物により分解されて、有機物は植物が吸収できる無機物として土に還元されてゆきます。活発な分解作業により土は養分を逃がしづらく、微生物やミミズ等のすみかとなりうる、そして草が根を伸ばしやすい構造になり、その結果、草がすくすくと育つのです。そしてまた羊が草を食べて草−羊−土の正常な循環は繰り返されていきます。この過程に化学肥料を多給すると草は反応して最初どんどん伸びますが、やがて化学肥料の影響で土は酸性化し、ミミズや微生物も減り、土は硬くなり草の状態も悪くなり、5-6年毎に土を機械で起こし直して柔らかくして、石灰を播いて酸性度を矯正しなければなりません。茶路めん羊牧場ではこの2年間化学肥料を全く播いていません。それでも毎年行う土壌検査からは今のところ養分の不足は見られず、どんどん草地は良くなっています。健康な土から健康な草が育ち健康な羊が育っていきます。一見食っちゃ寝の優雅な姿に映る羊が実は生態系の中で果たしている役割は大きく、一生懸命働いているわけです。それじゃあ人間は生態系の中で有益に働いているでしょうか?羊飼いとしては羊が働きやすいようにしてやり、十分な上前をいただくしかないようです。

 


 

-----羊子さんのクッキングメモ〜ラム肉の串焼き-----

以前トルコに行ったときにレストランで羊の肉を食べました。私はてっきり牛肉だと思ってペロリとたいらげました。良質のフレッシュなラム肉を食べて『羊肉は臭い』なんていう先入観を取り除いてみませんか?
そこで、わりにどなたにも人気の串焼きを紹介します。夏は、野外でビールと共にバーベキューパーティで、冬は熱燗でグッとおやじ....してみませんか。

<作り方>

  1. ラム肉を薄い角切りにする。
  2. ボールに長ネギのみじん切り、にんにく・しょうがのみじんぎり、しょうゆ・みりん・酢・酒(同量にして適量)、ゴマ油・塩・コショウ・一味・唐辛子を少々、トマトペーストに入れ、よく混ぜる。
  3. 2の中に、ラム肉を加え手で握りしめるようにして、力を入れてよく練り混ぜ、冷蔵庫で2時間ねかせる。
  4. 竹串に、肉、野菜(玉ねぎ・ピーマン・ミニトマトなど)を刺して焼く。炭がないときはフライパンで。


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羊仕切り

最終更新日: 1999/11/15.
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