茶路めん羊牧場便り

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ラムレター 第2号(一部ばっすい)

茶路めん羊牧場 武藤 浩史
発行 小西 徹

 

米騒動で揺れる日本で農業を続ける意味

羊飼いからのある提案

 昨年の異常気象の影響で米が不足し、米泥棒がニュースになるほど日本中がパニックになっています。そんなに米に執着していたのだろうか?飢饉に陥ったわけでもないのに右往左往する人を見ると、日本の崩壊はちょっとした情報操作でいとも簡単に起こりえるのではないかと思わされます。
 日本ではタイの5〜10倍の値段の米を食べさせられていると経済界主導の自由化論争が活発に行われていたのがウソのように、お金を積んで国産米を手にいれようと行列をつくり、タイ米をまずいとけなしています。でも豊作になればこんな騒ぎは忘れてしまうのでしょう。
 こんな状況下で農業を続けることにどんな意味があるのでしょうか?土地代、人件費、農業資材費が世界一高い条件下で、狭い農地への過剰投資は機械の稼働率や労働効率が悪く国際競争力を持つほどのコストダウンは不可能です。それを補うためにあたえられる補助金はサラリーマンの血税の無駄遣いといわれ、受け取る農家も肩身の狭い思いをしています。今後も国民に支持される農業とはどんなものだろうか?そこで羊飼いは四つの保全機能を持った農業を提案します。

<1>安全で風土に適した食料の保全
土と人に優しく、味や生産量だけでなく、安全で耐病性があり冷害に強い適地適産品種の作付けにより非常時にも必要量を自給出来るだけの農業。

<2>自然環境、国土の保全
日本の水田が巨大なダムの役割をはたしているように自然環境と融合し、森林や河川の保全を心がけ、自然の恩恵を感じられる人間の生活の場を確保する農業。

<3>地方社会の保全
都市一極集中が問題になっている日本社会において、コストダウンを図るための農業の規模拡大と後継者不足による離農は農業従事者の減少を招き、地方にその受け皿がなければ都市への人口集中はさらに進み地方の衰退につながる。
規模拡大にのみ打開策を求めるのではなく、中小規模農家や兼業農家や自給型農家等多種多様な農業の可能性を探り人口流出の抑制だけでなく、意欲的な農業指向者の受け入れを促進し、地方社会を活性化させる農業を思考する。

<4>田舎(心のふるさと)の保全
農村社会が健全に維持され、そこに縁者、知人が居れば、そこを訪ねる都会の人達はお金を使って商業的に作られたリゾートでレジャーするのでは得られない人と自然とのふれあいの中での、心身リフレッシュや、子供達の情操教育の場を持つことができます。

 羊は実は昭和30年代前半に完全自由化、非関税品目となっており、自給の必要性のない農産物として見捨てられました。羊肉も羊毛も毛皮も関税なしで輸入でき、国内の羊農家に対する補助金は皆無です。自由化後、繊維加工品の輸出が戦後復興の経済基盤を作りました。現在でも日本は世界でも有数の羊毛輸入国であり、国民一人当たり世界一の消費国です。自由化以前に羊毛の自給自足目的で100万頭いた羊は10年後には1万頭に激減しました。現在はやや増えて3万頭弱の羊がいます。北海道において必要の無くなった羊達が肉として食べられたのがジンギスカンを浸透させたというのは羊の皮肉な歴史です。それでも、どうして羊は無くならなかったのでしょうか?
 産業的に価値が認められず捨てられた存在でも、その価値を認める羊飼いが居て、その生産物を認める消費者が居れば、そこに羊は存在できます。それぞれに価値の認め方に違いはあるでしょうが、「ラムレターvol.1」でお話ししたように、<土−草−羊>のサイクルを守る羊は、基本的に4つの保全機能を果たす方向で飼われており、生産物の自給的活用範囲も広く、可愛く手ごろな大きさの羊は親しみを感じられ易いのかも知れません。羊に興味を寄せ、茶路めん羊牧場にかかわってくれる人達には、ウールの作品作りを楽しんでいる人、安全な食品を求めている人、本物の味を求めている人、子供に羊を見せたくて牧場まで訪ねて来る人、アウトドアーライフを楽しみ、野外での豪快な料理に羊が欠かせないという人、独自の価値観で農業に取り組む百姓仲間、同じ町に住み町の将来をグローバルな視野で考えている人、異業種の仲間、将来羊飼いになりたいと思っている学生等多種多様な人達が居て、田舎に住む羊飼いに各地の他分野に渡る知識、情報をもたらしてくれます。
 生産者(農民)、利用者(消費者)という範疇では分けることの出来ない、羊を核にした仲間なのかも知れません。羊の生産物を通じて、それらが作られる課程、作っている人、羊の姿を思い浮かべて、羊とのつきあいを楽しんでもらえたら嬉しいです。
 米騒動を機に、米を噛みしめながら農業のこと、経済のこと、アジアの国々のこと、色々と思い巡らしてみる今日この頃です。

武藤 浩史

 


 

羊子さんのクッキングメモ
−ラムden−

 花野菜の種を蒔いたことがありますか?種を蒔いて、芽が出る時に私はとても感動します。
 その感動をいっぱい味わいたくて、いろんな種をまいているうちに、わが家の庭やバルコニーは、いつのまにかハーブでいっぱいになってしまいました。
 ハーブはとても正直です。水が欲しければ欲しいと言い、植え代えてほしければきちんと言います。機嫌の良いときは、とても元気でどんどん大きくなります。私はそのハーブで羊毛を染めたり、また料理に使ったりして、楽しんでいます。そこで、ハーブを使ったラム料理を紹介します。題して、ラムden。いわゆる豆腐なら田楽、魚なら魚田、ラム肉なのでラムdenです。

<作り方>

  1. ラムチャップ6本に塩、コショウをして、軽くオーブンで焼きます。

  2. 味噌100g、砂糖大さじ2、酒大さじ2、卵黄1個を合わせて弱火にかけ、本練り味噌を作り、みりんで固さを整え、ゴマ油、きざんだクルミを加えます。

  3. 肉の上に味噌をぬり、ミント、ローズマリー、タイム、セージ、マージョラム等をきざんで載せ、味噌にこげめがつくくらいまで焼きます。

 

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羊仕切り

最終更新日: 1999/11/15.
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