text by Seino

 
 ども。僕も含めたタバコ飲みの憩いの場であり、学校の諸業務からエスケープする格好の避難所でもあった喫煙室も9月いっぱいで閉鎖。これで校舎敷地内全面禁煙の道からいよいよ逃げらんなくなりました。そんなセンチな気分で今日もいつものように喫煙室にへ職場逃避(センチメンタルジャーニー)するオレ。100回は読んだ没収ジャンプの横に「AERA」が置いてあったぐらいにして。普段絶対読まないけど、センチメンタルジャーニー続行のためにパラパラとめくっていると、「若年層のナショナリズム化が云々」という見出し記事が。まあ、その特集自体リベラルオヤジ臭くて共感できなかったんすが、確かに多いんだわ最近。高校生でもなんか変に右傾化したことしゃべりたがる奴。

 自称読書好きっつって、その実たんに「ゴー宣」読んでるだけってな。まあ、高校生の政治観なんて、片手落ちなもんで当たり前なのかもしれないんだけど、そのハマリ方が気持ち悪いのよ凄く。「ゴー宣」のベクトルに共感してんじゃなくて、あの断定口調にカタルシス感じてるみたいな。なにも真逆の立場の本も読んどけよとか言うつもりもないけど、みんなそんな断定されないと不安なのかなあ。あと同業者なのに申し訳ないんですけど、「ヤンキー先生母校に帰る」の人の「週刊文春」に連載されてるコラムとかも凄い。いじめとか教員の不祥事とかネタにしては「教師は生徒のために云々」って毎週嘆いてるやつ。立場が曖昧なまま中途半端に叫ばれる正義。それでいて一見誰が見ても決して間違ってるとは思わない当たり前の正義。さらにそんな正義に仮託して自分は正しいと思い込むことの出来る奴を見ると、本当に言葉にならないほど寂しい気持ちになる。

 みんな、そんなに正義がないと怖いか?

 余計ついでに言うと、件の「AERA」の記事に妄想族のインタビューが載ってたのよ。すごいよこれ。少し抜粋すると(原文ママ)

 〜「戦争マル妄出航 フンドシ一丁男の背中 気合いと根性見さらせ これぞ日本男児の真骨頂」「忘れんな オレ達のルーツはサムライ 他者にはスキにさせんぜマル外 不法入国しようもんなら 撃ったるぜ オレのM16」

 こんな歌詞をヒップホップ調で歌うのは「妄想族」だ。渋谷、三件茶屋出身の20代8人。6年前に結成。ダボダボのアメリカ式ストリートファッションに身をつつんだ彼らは、風貌や音楽とは裏腹に「日本」への思いをストレートにうたい上げる。リーダーの565(ゴルゴ)さんは、

 「ダンコンの世代だか団塊の世代だかしらないけど、勝手に戦争に負けて、原爆落とされた国の言うなりになって、国が借金さんざん作って、汚職に不祥事教師のセクハラ、そんな腐った国したのはお前らだろって。そういう日本を変えたいんだ」

 日本人として、誇りを持って海外に出ていきたい。やがてはアジアのみんなでまとまっていければいい。彼らはそう、夢を語る。〜

 いやーたまらんですね。「ダボダボのアメリカ式ストリートファッション」あたりのオヤジ雑誌臭も凄いけど、「勝手に戦争に負けて、そんな腐った国」云々のくだりはシビれますね。まさしく床屋政談、当事者意識ゼロ。曖昧でそれでいて一見誰が見ても決して間違ってるとは思わない当たり前の正義に仮託するヒップホップ。って、そんなんヒップホップかあ?で、日本人の誇りだか持って海外で何したいのかね。ガイジンに褒められたいってか。ゆくゆくはアジアでかたまって何したいのかね。家族重視のアジア的価値観復興?まあ裏返せばコネと血縁重視のプロトコルな人権「制限」よもう一度ってか。そんでまた経済制裁受けちゃってな。そんな腐った国にしたのはお前らだろってね。ループ&ループ。

 前にウチんとこの若番頭、山本圭一としゃべってたんだけど、「意識的に音楽聞くようになったのと服に興味持ち出したのって普通同じじゃないんですか?」って言ってて、それが「ポップにやられる」ってことだと思うのよ。あまりに当たり前にして、わからない人には全くわからい話かもしれないんだけど。服やら音楽やら映画やら本やら雑貨やらって、それが目的なんじゃなくて、そんなかにあるキラキラした輝きを自分が受けとって動くことで意味が生じるもんだと思うんですよ。別に今いったジャンル全部おさえろって言ってるんじゃないよ。そういうオタク的な意味じゃなくて、あくまで自分の価値観でそれぞれをザックリと座標軸に通して「活用」すること。自分の目で見て、自分で判断して、町にうって出るためのあくまでポップはツールに過ぎないと思うのさ。本やら音楽のありがたいメッセージに自分を仮託する人には基本的にポップは必要ない。(それは一見どんな「お洒落で」「過激な」ジャンルであってもカンケーない。なんか「日本ほどアメリカのアンダーグランドのヒップホップシーンに深い理解を持った国はない」とか某田中宗一郎さんが言ってたりしたけど、それならウチら日本人は明らかに彼らに敵対する搾取抑圧側に立ってるわけで、そんなに共感の意を示したいのならば、拳銃で自分の頭でもブチ抜けばチャックDさんもさぞお喜びになるだろうと思ったりするのである。)ましてや断言だけは得意な政治家なんかに仮託する人には基本的にポップは必要ない。KLFやグランドロイヤルの活動見たり、「8マイル」見たりして、グッとくる感じ。町にうってでる感じ。大事なのはそれだけなんじゃないか。あとはそのグッとくる気持ちだけ持ってあなたが動けばいい。それはグランドロイヤルの出したレコード全部集めるとかじゃないよ。(そりゃポップから最も遠い)。ただ物欲しげに「確信」や「正義」に涎を垂らすのはやめましょうってこと。根拠はだってボブ・マーリーだって愛とラスタファリズム以前に、働き手がひとりでも減ったら家族が路頭に迷うようなジャマイカで音楽やろうっていう根本的なイーカゲンさ、不良性さが世界動かしたんだし、とか…。

 音楽それ自体を目的としても意味がない。人間が音楽的になること、だけが必要。そうなりゃ政治だって経済だって教育だって、自動的に変わる。言葉にしたことはないけど、無謀きわまりないなスケジュールで、ウチらがパーティを続けていく意識は多分そこに一貫して流れてるのかなーと思います。こんな長い文読んでもらってスミマセン。

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