text by Yamamoto

 
 我が家の愛犬クロが9月12日、永眠した。16歳だった。何せ人間では悠に100歳を超えている訳だから、さすがに弱ってきてはいたのだがあまりに突然だった。犬小屋の周りにボウボウに伸びきっていた頑固な雑草に鎖が絡まり、それがさらに自分の胴体にも巻き付き、体を締め付け圧迫してしまったのが命取りだった。

 クロとの出会いは平成元年に近所に捨てられていたのを拾ってきたのが始まりだった。その頃はちょうど母が他界した頃で、それまでペットを飼うのは大反対だった父が意外にすんなり許可してくれたのは、今思えば父なりの子供たちへの配慮だったように思う。

 どんな犬でも小さい頃はかわいいもので、飼い始めの頃は僕も小学校から帰ってきたらずーっと一緒に遊んでいた覚えがある。でも段々大きくなるにつれその風貌は犬なのか熊なのか判らないほど強烈になってきてしまった(笑)。しかも出来る芸は何一つなし。そりゃぁもう「雑種の中の雑種」って感じ。性格もとってもマヌケで、台風が襲った夜に犬小屋では可哀想だと物置に避難させたら、次の日釣り針を口の中にめちゃめちゃに絡ませていたり、停まっている車に自ら猛突進して足を負傷したり、仕舞いには鎖から離れて、いつの間にか隣の犬を孕ませていたり…と本当にトホホな犬だった。でも愛嬌だけは良かった。絶対に噛まなかったし誰があやしてもすぐさま仰向けになって腹を見せてしまうほどだった。なぜかウチのスタッフの奥山には異常になついていたんだよな。

 ここ数年は散歩は父と姉、餌をやるのは母の役目で僕とクロの触れ合いというのはほとんどないに等しかったのだけど、毎日仕事から帰ってきて声をかけるのはほぼ欠かさなかった。特に疲れて帰ってきた時はあのブサイクな顔でじゃれてくるのが僕にとってこの上ない癒しだったと思う。

 最近は餌もスズメやカラスに食べられている始末でそれを追い払う元気もなくて、僕が代わりにシッシッ!と追い払ってやったらいつまでも僕の方を印象的な瞳で見つめていたっけ。

 あぁそんなクロももういないんだなぁ。未だに仕事から帰ってきたら無意識にクロがいた辺りを見てしまうんだよね。これだけ長い間生きてきた訳だから大往生なんだろうけど、何か一つの時代が終わってしまったみたいでとてつもなく寂しい気持ちになる。でもやっぱり…もっと散歩とかさせて遊んであげるべきだった。そうしてればもっと沢山の想い出があっただろうに。今更悔やんだって遅いのだけど。でも最後に写真を撮っておいて良かった。その写真はコンピのジャケットにも使ったから持ってる人もいるかも。

 息を引き取ってからは、それまで気付かなかったのだけどお尻になにか大きいデキモノが出来ていて、それに虫がどんどん集ってきてしまっていた。それがあまりに可哀想で見ていられなくて、もっと寄り添っていたかったのを堪えて、直ぐに犬小屋のそばに埋葬した。そして家族一人ずつ線香をあげて手を合わせてクロとお別れをした。
 ちゃんと火葬してあげられなくてごめんね。天国でも元気でね。

 さよなら、クロ。

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