text by Yamamoto


 先日、友達の家にぷらっと遊びに行った時の事。コイツいつの間にこんなにCD増えたんだ?と思って、塔のように積み上げられたCDをちょっと物色してみたらそれが全部CD-Rだったって事があって。そしてPCのハード・ディスクの中にはWinnyで集めたmp3音源がどっさりと詰まってて。

 それを目の当たりにした時、その友達には申し訳ないけど、強烈な違和感を覚えると同時に、すごく残念な気持ちになってしまいました。昔は

「〜の新譜買った?」
「うん、あれ最っ高だよね!」
だったのが、
「〜の新譜買った?」
「いや、買ってはないけどWinnyで落としたよ」
になってしまった事へのえもいえぬ空しさ。そうなると今まで熱く繰り広げてきた音楽談義も、急に熱が冷めて以前のようにエキサイトできなくなってしまいました。

所謂、違法コピーと違法ダウンロード。今の不景気の世の中、財布の紐が硬い若者達にとってこのシステムは非常に画期的です。CDを一枚も買わなくても、何千から何万という曲をいとも簡単に私物化できちゃうわけですから、何とも夢のようなシステムです。

 でもこれってどうなんでしょう…。僕の頭が硬いだけなのかもしれないのですが、この行為は「音楽好き」ではあっても決して「音楽的」ではないと思うんですよね。いや、著作権云々の話をしたいわけじゃなくて。そういう事じゃないんですよ。例えばあなたがスティービー・ワンダーに命を捧げるくらいの熱心なリスナーだとします。そしてもう一人同じように「スティービーを語らしたら俺の右に出るものはいないね。お前なんてまだ甘いよ」と豪語するAさんがいたとします。でもそのAさんのスティービーのライブラリが全て違法ダウンロードしたものだとしたら?または、クラブに遊びに行って、そこのDJが自分の好きな曲ばっかりかけてはくれるものの、それが全てCD-Rだとしたら?―――すごく嫌な気持ちになりますよね。

 要するに「価値のあるものには対価を払って投資してほしい」という事なんですけど(前にも言いましたね…)、こんな田舎のパーティーのスタッフがいくら熱弁を奮ったって、いやどんなカリスマが声高に啓蒙したって、もうこのシステムは止められないでしょう。「モノをタダで手に入れたい」という人間のある種プリミティブな欲望には敵うはずがないのだから(まあ「買うまでもない」という音楽が蔓延しているという業界側の責任ももちろんありますが…)。

 で、プリミティブな欲望と言ったらもう一つ「自分の気に入った曲をたくさんの人に聴かせてあげたい」というものがありますよね。これはミュージック・ラヴァーだったら誰しもが思うことでしょう。でもこれが自分の立場上、実は非常にジレンマを感じるところなんです。例えば今HOLLYWOODでプッシュしている作品、これからHOLLYWOODに来て頂ける(もしくは今まで来て頂いたことがある)ゲストの作品。もちろん一人でも多くの人に聴いてもらいたい。その方が曲を知ってもらっているだけにフロアも盛り上がる。じゃあその作品をCD-Rに焼いてバラ撒けばいいのかというと、それはちょっと良し悪しというか、微妙だよな―というのがHOLLYWOODの考えです。確かに簡単なんですよそっちの方が。でもそれはアーティストの「紹介」はしているけど「サポート」にはならないのではないか?その狭間ですっごく葛藤してるんです。

 当たり前だけどアーティストは作品が売れないと音楽活動が続けられなくなるわけです。そうしてアーティストにある程度は潤ってもらわないと、本当の意味での「シーンの成熟」には至らないのではないのでしょうか?残念ながら友達にアルバム一枚コピーしてあげて、もし気に入ってもらえても、本物を買い直してくれないのが現状なんです。

 じゃあどうしたら買ってもらえるのか?という問題が出てくるわけなんですが…。所謂クラブミュージックのアーティストの作品って残念ながら地方のCDショップには置いていない事が多いし、自ら積極的にならなければ情報収集も困難です。そこで僕達が間に入って一般の方でも手に取りやすい状況を作るのが使命なのではないかと。とりあえずはできる事を始めようということで、もちろんパーティーではヘヴィープレイしています。そしてせっかくこういうHPを持っているんだからPLAY TUNEでは少しでも読んでくれた人の購買意欲を高めるようなレビューを書くように務めていますし(ただ「この曲だ〜いすき!」って言ってるだけのレビューなら意味ないですから)、今まで来て頂いたゲストの新譜情報はトップページで紹介し、フライヤーもこっちから各アーティストの事務所に送ってもらうようお願いしています。ちなみにそれらのCDはぴっくあっぷに行けば全部買えますんで〜(笑)。こんなド田舎の規模も小さいパーティーがいくら粉まいたってそれが果たしてどれだけ有効なのかはわかりません。でも少しでも自分達がシーンに貢献したいという気持ちがあるなら、そういうところから始めなきゃダメなんです。別にこれは「俺らすげーだろ!」って言いたいわけじゃなくて、クラブの現場に携わっている人ならこのくらいやって当たり前だと思うんですよ(だってアマチュアのパーティーって大抵自分達のHP持ってるのに、そういうサポートの精神が全く見られないんだもん。ゲスト呼んだら呼びっぱなし。…あ、またクダ巻いてしまった…)。

 素晴らしい作品っていうのはその楽曲だけじゃなくて、ジャケットから何から何まで全て含めてワンセットですから。やっぱりそれが手元にあるっていうのが一番美しい音楽との接し方なのではないでしょうか?自分にとって「大切な一枚」があの味気ない真っ白のCD-Rだとしたら、それは悲しすぎる。

 前回と同じような事をまた長々とすみませんでした(笑)。

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