text by Yamamoto

今、日本一「本」が似合う女優、香椎由宇(笑)。


 この間のスペシャル・パーティーの時には圧倒的なDJイングでフロアをロックしてくれたオオエタツヤさんですが、氏のHPはみなさんチェックしてくれていますでしょうか?その中には『findings』という大江さんの日記風のコーナーがあって、そこでは秀逸なテキスト(感動した箇所があればそこを保存しています)と共に毎回オススメの12インチと並んでオススメの書籍も紹介されています。『findings』はほぼ毎日更新されているわけで、本職であるレコードが例え毎日であっても紹介しつくせないのはまあ分かるのですが、本のネタが尽きないのには毎回驚かされます。一体どんだけ読んでいるんだ!?と。というわけでこの前思い切って聞いてみました。

山本「大江さんって月にどれくらい本を読まれるんですか?」
大江さん「うーん、そうですねぇ…二日に一冊は読みますねぇ」

 オゲッ!予想を遥かに超えていました。あれだけ多忙を極める人が二日に一冊!?さすがというか何というか…そりゃあ思考力も鍛えられるはず。プロのモノ書き顔負けの文章力は、やはりこれだけの読書量あってこそなんでしょうね(ちなみに「優れたDJは優れたライターでもある」というのが僕の持論です)。

 現代の世の中、履歴書やプロフィールなんかに「趣味ー読書」なんて書く人はよくいますが、果たして本当にそうなんでしょうか?だって少なくとも僕の身の周りに日常的に読書の習慣を持つ人なんていないんですよ。そこで調べてみるとある興味深いデータが分かりました。

 何と今一番本を読んでいるのは小学生だということです。月平均で7.5冊。中学生になると2.5から3冊くらいで、高校生になると2冊を切り、30代になると1.5冊にまで減るそうです。しかもこれは今に始まった事ではなくて、この50年間ずっと変わらないデータだそうです。驚愕です。「今時の若いモンは本も読まないで…」と憂うオヤジが実は一番読んでなかっただなんて!「若者の活字離れ」というのはウソで「オヤジの活字離れ」だったという。そこから「日本人の平均的な活字解析能力は中学生のレベルで止まっている」と分析する文芸批評家もいるくらいで…。そうかぁ、それなら今の現代わかりやすい本しか売れないっていうのにも合点がいく。お手軽に共感できて泣ける恋愛小説や、酔っ払いオヤジの戯言にしか過ぎない新書ばかり読んでいると、思考の停止を招く。そんなつまらない自意識で共感をえられるようなものばかり読もうとしないで、中身が全然想像つかないものを読んだ方がいいと思いますよ、というのはまた別の機会に話すとして…なぜ大人になると本を読まなくなるのでしょうか?

 まず、読書って「めんどくさい」ですよねすごく。大江さんみたいな猛者は「教養への欲求」を持ち、「教養への敬意」を払っている人で、僕はそういう人が大好きで、無条件に尊敬するのだけども、やっぱり「忙しくて読む暇がない」というのもそれはそれで一蹴できない言い訳にも思えるんです。映画だったらつまらなくてもどうせ二時間程度だからとりあえずは全部観ようと思うし、まぁこんなもんか…で許せるけど、読書の場合、費やした時間と労力が映画と比べて遥かに大きいから、つまらない作品だと見切りも早いしすごく頭に来る。そして読書は映画や音楽のように自分が何もせずとも勝手に続いていくものではなくて、自分で意識的に文字を追ってページを捲らないと成立しない(漫然と文字を追いかけているだけじゃ一向に内容を理解できない)、というひどく面倒で、受け手の意気込みを問われる作業ですから、安易に結論だけを求めようとする現代人には向かないのかもしれません。

 そしてもう一つの理由として挙げられるのが、「とりあえず時間もあるし、読む意欲もあるのだけど、何を読んだらいいのかさっぱりわからん!」というもの。これが現代人が読書から遠ざかった一番の理由でしょう。本はCDやレコードと違って試聴が出来ないから、何を判断基準にしたらいいのかがわからないのです。一月で星の数ほど発行される本の中から自分の読みたい本を探し出すのは至難の業です。音楽には「いい音にはいいジャケ」という法則があるのだけど、それが本にも適用されるかって言ったら実は全然違うし。中身がある程度わかっているならともかく、本のジャケ(装丁)だけの情報に頼ると痛い目に合うんだなこれが。だって『セカチュー』の装丁の写真、あれ、残念ながら川内倫子ですから。『セカチュー』からもっとも遠い写真家なのに。まぁともかく本の「ジャケ買い」はやめた方がいいです。

 じゃあ何を基準に買えばいいのか!?とりあえず平積みされてるベストセラー?いやそれは違う。このHPを見てる目利きのみなさんは先刻承知だとは思うのですが、ベストセラーというのは読書の習慣を持たない(つまりは活字解析能力の乏しい)人たちが買うから100万部も売れるんであって、そんな本にはまずロクなもんがありません(これは断言しても暴論じゃないと思う)。騙されたと思って読んでみたら、『ワルの知恵本』を読んで激怒したウチのスタッフ清野のように(笑)読んでるうちに腹が立ってきて、やっぱり騙される。不毛なんですよ。

 とりあえずは信頼できる文芸批評家を見つけて(これもまた面倒かな…?)、その人のリコメンドするものを読むところから始めるのが一番ベターとは思いますね(フツーの結論になってしまった!)。DJに例えれば、好きなDJのプレイリストに挙げられてる曲を買ってみるというような。はじめの一歩はそれでいいと思う。そのうち自分の嗜好のツボやクセがわかってきて、選球眼も鍛えられてくるはずです。

 「現代は資本の回転が速く、商品の中に情報が蓄積されなくなり、物語はますます一過的になる。それに対して学問や知は積み重ねていくことができる。そこには安定した喜びがある(しかしそれを形成するためには忍耐が必要なのだが)。その喜びを“享楽”と言う。現代人は刹那的な快楽を求める傾向が強いが、快楽はすぐに飽きてしまう。享楽は飽きる事がない」 ―とある大好きな本のフレーズから引用

 いや、何か、みんなもっと読んだ方がいいんじゃないかなあ?って思ったんです。

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