text by Yamamoto

■後編

 急いでPEACEに戻るとスタッフ清野のDJはすでに終盤。危ない危ない…。
 僕の前座は21時スタート。清野と「お疲れ様!」とバトンタッチしてブースに入ると、突然僕の体に異変が起こる!顔が途端に暑くなり、汗が噴き出してくる。なんだこれは!つ、冷たい!もしかしてこれは冷や汗か!?神と崇めているDJの前座を務めるのだから、多少の緊張はして当たり前だと思っていたが…しかしこの冷や汗は異常だ!胸に手を当ててみると鼓動がBPM150くらいにまで早くなっている…。ふと「過呼吸」の二文字が頭をよぎる。まさか!落ち着け…落ち着け…。

 フロアの様子を見る余裕もなく、気が遠くなりかけたところで、ようやく沖野さん登場の22時半。ああ助かった…。もう後10分遅かったら倒れていたマジで…(後で友達のお客さんに聞くと、僕はブース内での様子が明らかにおかしく、“泣きながら怒っている”ような表情をしていたそうです…笑)。

 息も絶え絶えながら最後の力を振り絞って「よろしくお願いします!」と沖野さんと握手を交わしバトンタッチ。フロアはいつの間にか満杯になっていた。
 来た…ついに来た…二年間、僕はこの時をずっと待っていたんだ…。最後のビートが鳴り止む。一瞬の間。固唾を飲んで見守るお客さん…。

 突如鳴り始めるピアノの静謐な調べ……。いきなりきたーーーー!!『SLEEP WALKER / Ai-No-Tabi』!!!ドッとどよめくフロア。いきなり感無量。ここから生ジャズ〜四つ打ちへと華麗なミックスで展開していく。『Jazztronik / Samurai(Yukihiro Fukutomi Remix)』を経て、次に鳴り出した印象的なベースライン…『Love Is Everywhere』だー!!ヤバイ。ヤバすぎる…。こんなに早くからピークが来てこの後持つのだろうか…。しかしこの後そんな心配をよそに来たのが尋常じゃない太さの四つ打ちキック。なんだこの曲は?…。このキックは弟・好洋さんっぽい気もするが…。ここで絶妙なタイミングでMCを挟む沖野さん。

「今日は世界に先駆け、ここ別海町で初めてかけます!僕のニュー・アルバムから『Thank You』ハウス・リミックス!!」

 ううううううおおおおおおおおおーーーーー!!前回同様またまた初公開きたーーーーー!!(これはリップサービスじゃなくマジで別海が初だったようです。ちなみに前回の来訪の際には『Kudu』のKJMリミックスを初披露)。原曲はブロークン・ビーツだった『Thank You』がさらにアップ・リフ手ティングなフロア・キラーに生まれ変わってる!!ここまでシャイなせいか、遠慮気味にモジモジしていたお客さんが、たがが外れたかのごとく雄叫びを上げる!!みんな我を忘れて踊り狂っている!!この曲超絶欲しい!!(後で沖野さんに聞いたらこのリミックスのリリース予定はなし!とのことでした…。残念だけど「現場でしか聴けない曲」があるというのがパーティーの醍醐味ですから…。)

 この後も聴いたこともないベースが最高クールなハウス(絶対に探し出してやる!)でフロアをグイグイ引っ張る沖野さん。得意の打ち込み→生音への展開も見事で、ディスコ〜ファンクへと移行していく。隣で踊っていた清野と同時に口をついた言葉が「ラリー・レヴァン乗り移ってるよ!!」(笑)。特に「GIL SCOTT-HERON / HOME IS WHERE THE HATRED IS」のライブ・ヴァージョンからの一連のジャズ・ファンクの流れは身震いがするほどのドス黒さ!!お客さんもフロアに張り付いて離れない…。

 中盤、再びハウスに戻って(ホント自由自在だな…)流れ出した超美麗なメロディ。あまりの美メロぶりにお客さんも福本マンガの如くざわつく…。「これってMonday(満ちる)だよね…?」とりあえず一瞬たりとも聴き逃すまいもスピーカーに噛り付く。
 そしてこの後かかったのが、ここ別海でも大人気のDJ Kawasaki!!しかも僕の一番好きな「I'M SO ON YOUR MIND」だー!!当たり前だけどやっぱり沖野さんがかけると数倍よく聴こえる…。続いてきたのがDJ Kawasakiつながりで、またもや沖野修也ニュー・アルバムから「SHINE」。まだ発売前だからみんな耳にしていないはずなのに、フロアでは諸手があがる。この勢いだとここにいる人達全員アルバム買うな、うん。

 この時点で時間は約束の24時半。しかしお客さんが全くフロアから引けない…。幸い音漏れもないようだしもっと聴きたーい!!いうことで、急遽一時間延長する事に…。ここからはKJMのライブを録音したCD-Rやスティーヴィーやシルベッティなどの往年のクラシックスでサービス・タイム。「別海ってなぜか旧譜のイメージがあったから、今日は朝8時からレコード棚引っ張り出してましたよ!」と言っていただけに、旧譜がすごく前に出て聴こえました。

 終盤は恒例の全員でのショット乾杯を挟みつつ、「KJM / SUBSTREAM」で残りを惜しむようにステップを踏む。そしてラスト、沖野さんが「今日はありがとうございました!またいつかみなさんと会える日を楽しみにしています!」というMCを入れてかけたのは、これも沖野クラシック「AZYMUTH / JAZZ CARNIVAL」。当初の予定を大幅にオーバーしながら、見事パーティーは大団円を迎えたのでした…。

サイン以外にも「LOVE IS EVERYWHERE」の文字が!

 この後も沖野さんはお客さんと会話したり、サインや記念撮影(左の写真参照。自慢です、笑)に応じてくれたりと、惜しみないファン・サービスを披露してくれました(自分の出番が終わったらさっさと控え室に戻る、所謂「スーパースターDJ」!少しは沖野さんを見習え!)。またこっちの気持ちを知ってか知らずか、「タイトル聞いておきたい曲とかあった?明日になったら忘れてるから聞くんなら今のうちやで〜」と逆に沖野さんからふってもらったりもして…。でも全部いい曲だったから、どれから聞いたらいいかわからん…と顔を見合わせる僕と清野(笑)。ちなみにさっきのMonday満ちるっぽい曲とは、年末にリリースされるDJ Kawasakiの作品集に収録の「Jazzida Grande feat. Monday満ちる(DJ Kawasaki Remix)」とのことでした。みんな買おうね!

 次の日は帰りの飛行機までの時間を使って観光。僕は仕事のため同席できませんでしたが、神の子池や開陽台(沖野さんはこのロケーションでジャズ・フェスの構想を練っていたようです。こちらも「沖野修也Official Blog」を参照)を観光して、楽しい一時を過ごしたようでした。

 今年は5月にキャプテン・ファンク&新井仁、今回の沖野修也と二度のスペシャル・パーティーを開催したわけですが、みなさんいかがだったでしょうか?この二組はそれぞれ別々のフィールドで活躍しているアーティストですが、このミックスチャー感こそが今のハリウッドの提案したいモードです(今っていうより9年間ずっとそうです)。現代のクラブ・シーンはジャンルが細分化されて、彩りが豊かになったことは歓迎すべき事ですが、逆に細分化されすぎて、レゲエならレゲエのみ、テクノならテクノのみ、と一つのジャンルの音楽にしか興味を持たないリスナーが増えてきているのも事実。これは非常に悲しい事です。もったいないしクールじゃない。クラブ創世記のようにもっとグチャグチャでもいいんじゃないか?その方がよりエキサイティングなのではないか?この二度のパーティーの両方ともに足を運んでいただいて、目一杯楽しんでくれたお客さんを見たら、それが充分伝わったのではないかと勝手に自負しているのですが、どうでしょう?調子に乗りすぎ?(笑)。ハリウッドはこれからも“OPEN MIND, FREE FORM, FUN & HAPPY”を合言葉にみなさんにたくさんの音楽を提供していくつもりなので、ご支援よろしくお願いしますね!

 最後に、こんな辺鄙な地まで赴いて至高のDJを披露してくれた沖野修也さん、お力添えを頂いていた各地の協賛者の方々、そしていつも最っ高!なお客さんに最大級の感謝を述べて終わりの一言とします!ありがとうございました!来年はいよいよ10周年だー!!(まだ何にも決まってねー!!爆)

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