ゴッドイーターバースト
〜緋色の魔眼〜
第1話 第0部隊
「はあっ!」
すでにアラガミによって破壊され放棄された街
通称、贖罪の街
そこにたった一人でアラガミに立ち向かうゴッドイーターがいる
名前は西京院茜
コードネームはAKANE
数年前に新型神機のゴッドイーターとなってから
着々と実力を付け、今ではベテランのゴッドイーターとなった。
今日もゴッドイーターを管理し雇っているフェンリルの要請によって
アラガミの駆逐に来ている。
今日の相手はヴァジュラ。
トラに似た大型のアラガミである。
大型の割に動きが素早く、多くのゴッドイーターが成長のため次のステップに進むため
そして今後生き残るためには必ず倒せるようにならなくてはならない、登竜門的なアラガミである。
しかし、多くの修羅場をくぐってきた茜にはすでにこの手のアラガミはお手の物だった。
茜「せいっ!」
茜は神機に装備されたショートブレードを振るい
ヴァジュラの頭、足、胴体、尻尾を的確に切り刻む。
あまりの猛攻にヴァジュラがたまらず怯む。
その隙を茜は見逃さない。
すぐさま神機を銃器に切り替え、砲撃を撃ち込む。
砲弾の属性は「神」
照準は頭。
撃てるだけ頭に全弾を撃ち込む。
砲頭から煙があがる。
それと同時にヴァジュラが大きな音を立てて倒れ込んだ。
ふぅ、ため息をついて茜はヴァジュラを捕食しコアを回収した。
茜「うん、今日のミッションはこれで終わりかな。帰りましょう。」
茜はアナグラと呼ばれるところへの帰投を開始した。
アナグラとは居住区、食料生産区、工場区などを含んだ施設全体を指す名称であり
ゴッドイーターが所属するフェンリルの支部拠点が地下に張り巡らされているため
そう呼ばれる。
茜はフェンリル極東支部に所属するゴッドイーターなのである。
アナグラに着いた茜は開発部に寄って回収したコアを渡した。
「お疲れ様、持ってきたコアの状態を確認してそれに応じた素材を渡しますね。」
茜「あ、はい。」
しばらくすると、開発部の人が素材をどっさり持ってくる。
茜「えっと・・・多くないですか?」
「いえいえ、コアの状態がかなり良いのでこのくらいで丁度良いですよ」
茜は少し気が引けたが、開発部の人がそう言うのでありがたく頂くことにした。
拠点のエントランスまで戻ると現場指揮官である雨宮ツバキが茜を見つけると声をかけてきた。
ツバキ「茜、ちょっといいか?」
茜「はい?」
ツバキ「うむ、茜に異動の話があってな」
ツバキの話によると、茜の新型神機使いとしての成績を見込んで
ツバキが受け持っていた新人の教練担当を頼みたいとのことだった。
茜はあまりの大任のため、最初は断ったのだが
今後、新型の新人が増えてくるであろうと予想されるため
新型の熟練度の高い茜にツバキはお前しか頼める奴がいないんだと
半ば押し切られる形で了承させられてしまった。
ツバキ「その際に部隊が一つ増設されることになった。」
茜「増設ですか。」
新人ゴッドイーターを専門に教練する部隊
ツバキはその部隊を第0部隊と呼称することにした。
茜「ツバキさん、その部隊は教練員は私だけなんですか?」
ツバキ「いや、お前の他にアリサにも声をかけるつもりだ、茜がいるならアリサも来てくれるだろう」
アリサ・イリーニチナ・アミエーラ
ロシア支部から赴任してきた茜と同じ新型神機使い。
茜とほぼ同時期に極東支部にやってきた。
茜とともにこれまでいくつもの修羅場をくぐってきた。
いわば戦友みたいなものである。
彼女の戦闘スタイルは、ロングブレード/アサルト
一方、茜は、ショートブレード/アサルト
茜とは違った戦闘スタイルのため
多くの組み合わせのある新型には必要な人材である。
しかし、まだ対応しきれるかというと否定せざるを得ない。
茜はツバキに一つ質問をした。
茜「ツバキさん。教練員の確保は誰がしていただけるのですか」
ツバキ「ああ、私はお前に第0部隊の隊長をしてもらおうと思っているからな。お前の方で人選してもらってかまわない。」
第0部隊隊長
ツバキからこの話を聞いたときからそうなるのではないかと思っていたため
さほど驚くことはなかった。しかし、そうなると第一部隊の隊長が空いてしまう。
ツバキ「第一部隊が心配か?大丈夫だ。第一部隊の隊長はソーマにやってもらおうと考えている」
ソーマ・シックザール
前支部長、ヨハネス・シックザールの実子であり、自らの体内で偏食因子を生成できる特殊体質を持っている
茜が出会った頃は、軍規違反、単独行動が目立っていたが
前支部長の企てた「アーク計画」阻止後、そう言った行動はほとんど見られなくなった。
もしあったとしてもそれは他の仲間を助けるために限定されている。
そのため、近いうちに部隊長の任命が予定されていた。
茜はツバキの言葉を聞いて安心した。
ソーマならば隊長を明け渡すことが出来ると。
茜「では、必要な人材はこちらで確保します。その際はツバキさんに報告すると言うことでよろしいですか?」
ツバキ「ああ、かまわない。出来るだけ茜の提案を通すよう努力しよう。」
茜「ありがとうございます。では、当面、新型神機使いの教練員が見つかるまで旧型の方達に助けていただきますね。」
ツバキ「それがいいだろう。では、茜、よろしく頼む。」
茜「はい!」
ツバキから第0部隊の話をしたあと、すぐにアリサの所へ向かった。
アリサは実質でなにやらターミナルで調べ物をしていた。
茜「アリサさーん。」
アリサ「ああ、茜さん。どうしたんですか?」
茜は先程、ツバキから伝えられた第0部隊の事を話した。
アリサは、茜の教練員への申し出に快く応じてくれた。
茜さんほど、うまく教えることが出来ないかもしれませんが。と言っていたが
アリサの戦闘は、新型旧型に拘わらず多くの新人が見習う部分が多くある。
ツバキもそれを見越しての人選だった。
茜はとりあえずアリサとともに、今後の第0部隊としての活動方針を決めることにした。
初めは、模擬戦闘で基本的な神機の扱いについて。
それから、小型アラガミの討伐から段階的に大型アラガミへの以降が良いと、両者の意見が一致した。
アリサ「私達が初めて神機を扱ったころに習ったことと同じですね。」
茜「ツバキさんのカリキュラムだったみたいですからね。ちゃんとポイントは押さえてます。」
茜もアリサも初めからうまく扱えたわけではない。
きちんと、訓練を詰んだ上での実力なのだ。
訓練を怠るといざというときの対応がとたんに悪くなる。
この世界は一瞬の対応の悪さが命取りになるのだ。
アリサ「でも、やっぱり私と茜さんだけだと、戦闘スタイルでの教練対応がカバーしきれませんね」
茜「そうだね。銃撃はもちろんだけど、刀身のバスター系がいないからねぇ。まぁ、そこは旧型神機使いさん達に手伝ってもらいましょう」
アリサ「旧型って括りになっちゃってますが、逆に言えばそれに特化してますから教えを乞う分には申し分ありませんからね」
やはり茜とアリサは息が合うようだ。
二人で話せばいくらでも知恵が沸いてくる。
その日は遅くまで第0部隊の話題が尽きなかった。
今後くる新人新型神機使いを死なせないために。
そして、数日後。
待望の新人が極東支部に配属された。