午後の授業が終わって放課後になりました
帰る準備をしていると・・・
教室のドアが開き、三枝さんが入ってきました
手には例のビニール袋に入った四文字熟語辞典を持って・・・
ああ、なんか非常に嫌な予感がします
三枝さんは一直線に直枝くんの席に行き
葉留佳「んっ!」
そのビニール袋を差し出します
よく見ると、なにか汚いものでも摘むかのように親指と人差し指でそれを挟んでいました
実際、汚かったんですが・・・
理樹「それ、もういいの?」
理樹くんがビニール袋を受け取ると
三枝さんが間髪入れずに話しかけてきました
リトルバスターズ
Another miracle
世界の秘密
5月15日(PMパート)
葉留佳「理樹くん、言いたいことがあるんだけど」
なんとなく、言いたいことは分かります
ええ、開いたんですよね
あの阿鼻叫喚絵図な辞典を・・・
理樹「なにかな?」
葉留佳「ちょっと理樹くんの机の中見せて」
三枝さんは、直枝くんが狼狽えてるのを尻目に直枝くんを押しのけて机の中をのぞき込んでいました
そして、指を立てて
葉留佳「理樹くん、整理整頓!」
どうやら、三枝さんは直枝くんの机の中が汚くて辞典があんな状態になったと勘違いしているようです
突然、そんなことを言われて直枝くんが三枝さんに説明を求めています
葉留佳「理樹くんばっちぃ」
三枝さんは直枝くんに指を指してそういいます
でも・・・説明になってませんね
その後、辞典を借りていったことを話していました
想像通り、三枝さん、あの辞典を授業中に開いたそうです
あの緑とか、赤とか、白とか、黄色いなにかが蔓延った辞典を
そんなもの開いたものですから、当然クラスからいろいろな意味の視線が飛んできたそうです
慌てて、人の話を聞かずに持って行ってしまったとはいえ
ちょっと可愛そうになりました
まぁ、色々と誤解しているようなので助け船を
かえで「三枝さん、それは直枝くんのせいじゃありませんよ」
葉留佳「?」
かえで「その辞典、井ノ原くんに貸していたそうで、それが三枝さんがいらっしゃる直前でした。で、三枝さんが来る前に中身を3人で確認してます。まぁ、ここで問題なのは、そんな辞典なのに直枝くんが辞典を貸してしまったことですね」
葉留佳「じゃあ、汚かったのは真人くんの方?」
理樹「そういう・・・ことかな」
葉留佳「でもほら、よく小学校とか余り物のプリンとかゼリーとか机に入れてたし」
? そういうものなのでしょうか
私は行ったことがないので分かりませんが
そして、そこからまた話はずれて・・・
三枝さんがプリンを食べたいと言い出して
直枝くんが食堂に行きなさいと叫んだり
それにすねた三枝さんが本当に食堂にプリンを食べに行ったり
そんな騒がしい放課後でした
そうそう、直枝くんが処分に困っていたいた辞典は私が後で焼却処分しておきました
帰り際連絡通路で棗さんを見かけました
どうやら、猫たちの毛をブラシがけしているみたいです
えっと、なんて言いましたっけ・・・
そうそう、猫たちが毛並みを整えるグルーミング
猫っぽい棗さんが行うとブラッシングよりグルーミングの方がしっくり来ます
鈴「ほら、くねくねするな、やりにくいだろ」
猫は棗さんの手際に気持ちよさそうにしています
かえで「棗さん」
鈴「!」
私の声に驚いて、急に立ち上がろうとしました
でも、猫たちがくっついていてうまく立ち上がれないようです
かえで「まってまって、そのままでいいです。続きしてあげてください」
少し警戒した目でこちらを見ていましたがすぐにグルーミングを再開してくれました
かえで「驚かせてごめんなさい。ねぇ、棗さん、私もこの子達と遊んでも良いですか?」
今度は少し驚いた目で見てきました
かえで「駄目・・・ですか?」
棗さんはぶんぶんと首を横に振ります
鈴「駄目じゃない・・・」
かえで「ありがとうございます」
私は、棗さんの横に座ります
猫たちは始め見知らない私を警戒していましたが、しばらく黙っているとすぐに寄ってきました
かえで「おいで」
目の前に来た猫を手招きします
にゃーと一声鳴いて私の膝の上に上がってきました
まず、頭を撫でて、体を撫でて・・・
喉のあたりをごろごろしてあげると私の膝の上で丸くなってしまいました
かえで「あらあら・・・」
鈴「・・・猫好きなのか?」
鈴さんはグルーミングをしながら私にそう聞いてきました
かえで「そうですね。家では動物を飼っていませんでしたけど、好きですよ」
鈴「・・・そうか」
しばらくお互いに無言で猫とじゃれ合っていました
そこへ、直枝くんがやってくると・・・
鈴「理樹だ!」
棗さんが慌てて体にへばりついていた猫をはぎ取り、投げていました
どうやら、直枝くんには猫とじゃれているところを見られたくないようでした
理樹「鈴が優しいからみんなくっつくんだね」
理樹くんは棗さんにへばりついている猫をはぎ取り自分の腕に抱えます
鈴「そんなことない」
否定するものの、棗さんはどこか恥ずかしそうでした
そんな棗さんがなにやら紙切れを取り出します
理樹くんがそのぐるぐるに巻かれてしわだらけになった紙切れを開いてみると
『校門のイモムシ問題を解決せよ』
との文字
理樹「なにこれ?」
鈴「ちなみに、昨日も来てるぞ」
棗さんはさらに紙切れを取り出します
そこには
『この世界には秘密がある、それを知りたいのなら、すべての課題にクリアせよ』
と書かれていました
それを見たとき
頭の中で何かがよぎりました
それは、いつか見た
どこかの森の中
そして漏れた燃料のにおい・・・
え?
今、私は漏れた燃料と思いましたか?
どうして、漏れた燃料などと具体的に思ったのでしょう・・・
私に一体何が起きてるのでしょう
『今、身に起きている事象は、必ず意味のあるもの』
お母さんから言われた言葉を思い出しました
今、私の身に起きた事もきっと何か意味のあるものなのでしょう
そして、もう一つ
この課題を手伝ってはいけない・・・
そう感じました
ならば、私はここに留まってはいけない
私は、すぐにここから立ち去ることにしました
かえで「棗さん、直枝くん、私はもう行きます」
理樹「あ、うん。じゃあまた・・・」
かえで「はい、では、棗さんまた・・・」
鈴「・・・うん」
私は女子寮に向かって歩き出します
一言二人に聞こえないように
かえで「がんばってください・・・」
そうつぶやいて・・・
自分の部屋について着替えて今日出た課題も済ませて・・・
ベッドにぼふっと寝てみたものの
かえで「暇・・・になっちゃいましたねぇ」
しばらくぼーっと天井を見て
ふと、思い出しました
かえで「稽古・・・忘れてました」
少し、体を動かすことにしましょう
改めて動きやすい服装に着替えてから
私は、ここの生徒が裏庭と呼ぶ場所に行くことにしました
今の時間帯ならばそこに生徒もいないと思ったからです
かえで「ふむ・・・」
周りを確認しましたがやっぱり誰もいないようです
稽古と言っても、体を動かすだけにしましょう
魔法の訓練は、見つかってしまうと色々とやっかいです
かえで「すぅ・・・」
ゆっくりと息を吸い込み、気を整えます
これから始めるのは仮想の相手と組み手を行うもの
ボクシングなのではシャドウとも言うようですね
今の私の仮想の相手・・・
それは、お母さん
目に見えない、お母さんを思い浮かべます
隙のない、構え
お母さんの攻撃が来ます
まずは、後ろ回し蹴り
それをバックステップで回避
まだまだ、続きます
そのままの反動で連続空中回し蹴り
それを大きく回避するために、バック転で回避
今度はこちらから仕掛けます
未だ空中にいる相手を私は飛び上がり前転かかと落とし
それを受け止められたと仮定して
着地した場所を受け止められた場所として足場にし大きく相手の後方にジャンプ
おそらく、それを見た相手が間合いを詰め、掌底を放ってくる
まともに受けると、瞬間的に無防備になると判断
回避を試みます
上体を反り、攻撃が不発になった腕を掴みそのまま投げ・・・
パチパチパチ
突然、どこからか手を鳴らす音が聞こえてきました
「いやいや、すごいな。雪村くんは。まるで相手がいるようだ」
いつの間にか来ヶ谷さんが近くに備えてあった椅子に座っていました
かえで「あ、来ヶ谷さん・・・」
唯湖「気分転換に来てみれば、良いものをみせてもらった」
かえで「良いものだなんて」
唯湖「雪村くんは、おとなしい子だと思ったんだがね。それにしても良い動きだ。どうかな、私でよければ相手になるが?」
思ってもない提案でした
たしかに空想の相手とやるより遙かに訓練としての意味が高まります
少し、迷いましたが、自分から、提案してきているのでそれなりに腕に覚えがあると判断
ここは来ヶ谷さんと交流を深める意味でもお願いしておいた方が良さそうです
かえで「では、お願いしてもよろしいですか?」
唯湖「ああ、構わんよ」
私たちは2メートルほど離れて対峙します
かえで「それでは、行きます」
唯湖「うむ」
まずは、私から仕掛けてみました
急速な間合いの詰めから中段蹴りを放ちます
楓「!?」
手応えがない
確かに間合いの詰めは間違っていませんでした
しかし、私の蹴りはほんの少し、届いていません
勢いは落ちていなかったのでそのまま連係攻撃に移行
中段蹴りの足で地を蹴り、反対側の足で上段蹴り
それをそのまま踵落とし、しゃがんで水面蹴り
でも、ことごとくかわされてしまいました
紙一重
まさにそんな言葉がぴったりあう回避
それは無駄な動きが全くない体裁き
どうやら、来ヶ谷さんの方が一歩も二歩も上のようです
かえで「参りました」
膝に手をついて肩で息をするほど消費してしまいました
かえで「一度も当てられませんでした・・・」
唯湖「いやいや、キレの良い攻撃だったぞ。おかげで反撃が出来なかった」
そんなはずはありません
紙一重の回避
それは、最小限の動きで回避し次の攻撃の動作を有利にするため
それに、明らかに来ヶ谷さんは余裕でした
どうやら、気を遣っていただいたみたいです
かえで「私もまだまだですね」
唯湖「ふむ・・・、よければまた機会があれば相手になるが?」
かえで「いえ、そんな・・・」
唯湖「遠慮はいらない。私も最近は運動不足でな。なにか、したいと思っていたところだ」
かえで「そうですか、では、また機会があったときに」
唯湖「うむ。さて、汗をかいてしまったな。寮に戻ってシャワーでも浴びると良い」
かえで「あ、はい・・・」
帰りは来ヶ谷さんと一緒に戻りました
で
気づくとなぜか、私は来ヶ谷さんの部屋に
かえで「えっと、来ヶ谷さん。私はなんでここにいるのでしょうか?」
唯湖「ん? さっき言ったじゃないか。シャワーを浴びると」
かえで「はい、でも、それでなんで私がここに?」
唯湖「一緒に入るからじゃないか」
かえで「あ、なるほど・・・・ええぇぇぇぇぇっ!?」
あまりにさらっと言うものですから思わず納得してしまいました
女同士ですから、別にやましいことはないはずなのですが
なんでしょう、何か危機を感じます
唯湖「ほら、雪村くん、風邪を引いてしまう」
かえで「あ、はい。では、失礼します・・・」
なんとも間の抜けた返事をしてしまいました
結局の所、来ヶ谷さんに隅々まで洗われてしまいました
あぅ・・・
恥ずかしい・・・
それにしても、来ヶ谷さんはスタイルがいいです
出るところは出ていて、それでいてくびれとかしっかりありますし・・・
なんか、自信がなくなりました・・・
唯湖「なに、雪村くんもかわいらしかったぞ?」
かえで「なっ? 来ヶ谷さん、人の考えてること読まないでください!」
みるみる顔が火照ってきます
唯湖「はっはっは。さて、そろそろ夕食だ。食堂に行こうか」
かえで「あ、はい」
その後、食堂でも来ヶ谷さんとお話をして、もう一度お部屋におじゃまして
遅くまで話し込んでしまいました
泊まっていくかと言われましたが
私の本能が、それは危険だと警告を発していましたので
丁重にお断りさせていただきました
来ヶ谷さんは本当に残念そうにしていましたが・・・
日に日に、いろんな人と仲良くさせてもらっています
学校というもんがこんなに楽しいものだとは思いませんでした
やっぱり、実際に経験してみないと分からないことが沢山です
明日は、どんな出会いがあるのでしょうか・・・
楽しみです・・・
to be next scene