愛紗に連れられて、街にはいると異変がおきていた
瑞穂「なにこれ、滅茶苦茶じゃない」
一刀「どうなってるんだこれ」
愛紗「分かりません・・・」
街のあちこちで火の手が上がり、そこらは壊されていた
まるで、何者かに襲われたように
「姉者〜〜〜〜〜〜」
ズドドドドとものすごい砂煙を上げながら誰かが向かってきた
WOAスピンオフ作品
『恋姫†無双 〜乙女絢爛☆新たなる風が吹き込む三国志演義〜 もう一人の御使い様』
第二話 民衆救済→盗賊退治
瑞穂「あ、張・・・鈴々ちゃん。無事だったんですね」
砂煙を上げていた正体は先程分かれた、張飛こと鈴々だった
愛紗「鈴々、一体何があったのだ?」
鈴々「さっき、黄巾党のやつらがこの町を襲ったらしいのだ」
瑞穂「間に合わなかったのですね」
鈴々「動ける人は酒家に集まってるのだ」
一刀「酒家?」
瑞穂「んー、言葉のからするとお酒を提供してくれる場所なのかしら?」
鈴々「あってるのだ!お酒だけじゃなくご飯も食べられるのだ」
瑞穂「ふむ、人が集まりやすいところですね。一刀くん、愛紗ちゃん。そこへ行ってみましょう。鈴々ちゃん、案内を」
鈴々「応!なのだ」
鈴々に案内されて襲撃を免れた酒家に入った
店内は、まるで野戦病院のような状態になっていた
傷を負って包帯らしきものを巻いている者
体中が煤で汚れている者
力なく地面に座り込んだり、寝そべっている者が多数いた
愛紗「これはひどい・・・」
あまりの悲惨さに声を漏らす愛紗
瑞穂「失礼、痛いのはどこですか?」
見ることしかできない愛紗達を尻目に即座に動いたのは瑞穂だった
状況を一目で判断し、一番重傷であろう人の元へ駆けつけた
村人「あ、足が・・・」
瑞穂は村人の足を触る
すると、すねの部分でひどく痛がった
瑞穂「これは、骨が折れてるわね。愛紗ちゃん、このくらいの棒を持ってきてもらえる?鈴々ちゃんは包帯を。一刀くんはこっちに来て手伝って」
てきぱきと、指示を与え皆を動かす
愛紗がどこからか指示通りの長さの棒を持ってくる
それと同時に鈴々からは包帯がくる
瑞穂は、その包帯を少し取るとくるくると丸める
瑞穂「これから、骨をまっすぐにします。かなり痛いので、これを噛んで耐えてもらえますか?」
村人「わ、わかった」
包帯を口に含んだのを確認して瑞穂が一刀に村人の体を押さえつけるように指示を出す
瑞穂「いい?暴れて失敗しないようにしっかり押さえてね?」
一刀「ああ、わかった」
瑞穂は足を持ち一気に引っ張る
村人「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
予想通り、激しい痛みにのたうち回りそうになるのを一刀は必死に押さえつける
瑞穂「よし!それじゃあ、添え木をするわよ」
おれた方の足に添え木をして固定をする
瑞穂「一ヶ月くらいかかるかも知れないけど、折れた骨をまっすぐに戻して添え木で固定しました。安静にしていれば骨は治ります。治ったらゆっくりと歩く訓練をしてください。いいですね?」
村人「・・・ああ、ありがとう」
それから、瑞穂は負傷している人全員を現時点でできうる限りの治療を施した
瑞穂「これであらかた終わったかしら?」
ふぅと一息ついていると村人のリーダーらしき男が声をかけてきた
村人A「いろいろと助けてくれてありがとう。それにしてもあんた達は一体?」
愛紗「我等は戦乱を憂い、黄巾党を殲滅しようと立ち上がった者だ」
村人B「子どもに何ができる?大人の俺たちが歯が立たなかったんだぞ?」
村人A「そういうな。向こうとは数が違うんだからな?」
瑞穂「数・・・どのくらいか分かりますか?」
村人A「そうだな、四千ほどはいるだろうな。その数で押し寄せればこんな街、簡単に落とされるしかなかったんだよ」
瑞穂「それでも、あなた達は戦ったのですね」
村人A「そうりゃそうさ!ここは俺たちの街だ。黙ってなんていられるか。でも、数の暴力にはかなわないんだよ・・・」
村人B「しかも、あいつら帰るときにまた来るってぬかしやがった」
村人C「次来られたら、あいつらは街の女、子どもを餌食にしちまう。くそっ!」
村人A「それは分かってる!でも、俺たちには力がない。あんな盗賊相手にどうやって戦うんだよ」
瑞穂「一つ、質問を。このあたりを治めている役人達は助けには来ないのですか?」
村人A「ああ、どうやら、自分たちだけ逃げ出してしまったみたいでな」
瑞穂「そうですか、盗賊達は明日も来そうですか?」
村人A「おそらくな。盗賊達はこの街を弱い街と思ったようだな。この街から奪うものがなくなるまで来るに決まってる」
瑞穂「ふむ・・・愛紗ちゃん、鈴々ちゃん。その黄巾党とかいう盗賊さん達をやっつけに行きましょう」
さらっと言い放つ瑞穂にそこにいる誰もが唖然とした
村人A「あんた、さっきの話を聞いていたのか?相手は四千はいるんだぞ?」
不安そうにいう村人に瑞穂は笑顔で答えた
瑞穂「はい、聞いていましたよ。私だって勝算が無い戦いはごめん被ります」
愛紗「ん? すると、瑞穂殿には勝算があると?」
瑞穂「はい。いいですか、相手は四千とはいえ、おそらく統率はとれていないでしょう。もし、指揮官、もしくは軍師が居るのであればこのような中途半端な襲い方はしませんよね?」
瑞穂の言葉に村人はおろか愛紗達も黙る
瑞穂「ならば、こちらは愛紗ちゃんと鈴々ちゃんを中心に陣形を組み、迎撃態勢を整えます。連携さえとれていれば、数に劣っていてもこちらに勝機はあります」
愛紗「さすが、天から来られた方だ」
村人A「天・・・だって?」
愛紗「そうだ。皆の者は聞いたことがないか?洛陽では戦乱を鎮めるために天より遣われし英雄の話を皆が口々にしているぞ。こちらの方が天から遣わされた方の北郷一刀殿。こちらは、その付き人の雪村瑞穂殿だ」
愛紗は、これでよかったのかと瑞穂に目配りをする
先程瑞穂が言っていた、天の遣いは一刀の役回りだというのを汲んでくれていた
瑞穂も愛紗に笑みを浮かべて感謝の意で応える
村人B「その話、本当なのか?」
愛紗「本当だとも。その証拠に今、皆も聞いたであろう。こちらの瑞穂殿が我等に見事な策をくださったではないか」
瑞穂「見事かどうかはやってみないと分かりません。実はこの策の成功率はまだまだ低いのです。そこで、村人さん達の手助けがほしいのです」
村人C「手助けと言っても戦える人間なんてこの村にはそうはいないぞ?」
瑞穂「戦というのは何も、実際に武器を持ち敵に斬りかかることだけが戦ではありません。敵の情報を集める人。味方の食料を確保する人。味方に指示を出す人・・・。まだまだ、たくさんの人が必要になります。戦いは私たちに任せていただきますが、そのほかの兵糧、情報収集、情報伝達などのことをしていただきたいのです」
村人A「まぁ、そのくらいなら俺たちでも出来ないことは無いが」
瑞穂「あなた方が、手助けしていただけるならば、そこにいる、関羽殿、張飛殿が必ずや奮戦し黄巾党を打破してくれるに違いありません。この戦いに勝利するためにはあなた方の力が必要なのです!」
村人B「そこまで言われちゃ、やるしかないだろう!」
村人C「ああ! それじゃあ、俺はなにか武器になるものを探してくる!」
村人D「俺は食料をかき集めてくるぞ!」
村人A「それじゃあ、外に出て男衆を集めてくる。戦える者は一人でも多い方が良いだろう? だが戦い方はまるでわからんからな。指示の方よろしく頼むぜ!」
瑞穂「任されました」
その気になった村人達はあっという間に酒家から飛び出していき、残りは愛紗達4人となった
鈴々「お姉ちゃんすごいのだ」
愛紗「瑞穂殿は、人を操る術を心得ているのですね」
瑞穂「人は言葉一つで状態が変わります。落ち込んだり奮起したり。状況に応じて何を語ればどういう状態になるかが分かれば少しは人を操ることが出来ますから」
一刀「本当に天の御遣いみたいだな」
瑞穂「何を言ってるんです? 天の御遣いは一刀くん。私はあなたの付き人。ですよね?愛紗ちゃん?」
愛紗「くす」
瑞穂「さて、一刀くん、愛紗ちゃん、鈴々ちゃん。作戦を練りますよ」
愛紗「御意!」
数分後、小さな軍議が終わり、瑞穂は愛紗、鈴々、一刀に指示を飛ばす
瑞穂「愛紗ちゃんは、一刀くんと一緒に村人さんの指揮を。鈴々ちゃんは、身軽な村人数名をつれて黄巾党がいないか検索を」
鈴々「御意なのだ! 早速行ってくるのだ」
意気揚々と鈴々は村人数名と共に村の外に行った
愛紗「瑞穂殿は?」
瑞穂「私は、万が一のために保険をかけておきます。愛紗ちゃん、村人さんに短い刀・・・短刀なようなものを二振りないかと訪ねてみてください」
愛紗「御意。では、ご主人様行きましょう!」
愛紗と一刀が集まった村人の前に出ていった
何分も経たないうちに村人の一人が二振りの短刀を持って現れた
村人「雪村さま、このようなものしかありませんでしたが?」
みると、刃がこぼれとてもじゃないがこのままじゃ使えそうじゃなかった
瑞穂「うん、十分です」
村人「ですが・・・」
村人は、刃物として機能しないそれを献上するのがいささか心苦しかった
瑞穂はそれを汲んで、村人に自分の能力を見せることにした
瑞穂「そうですね、あなたに特別に錬金術・・・いえ、仙術をお見せしましょう」
村人「仙術・・・」
瑞穂は、短刀を一本持ち、錬金術を発動させる
魔力自体は自身が生み出す魔力を用いる
錬金術は魔法ほど魔力を使わないため自己生産の魔力で十分なのだ
瑞穂の手が刃物を撫でると、刃が研がれていく
村人「こ、こりゃ一体・・・」
きれいに研がれた短刀に瑞穂はもう一加工施す
瑞穂「風の力を宿らせ給え。我が力となりて、弱き者を守りし力となせ! 風性刻印!」
短刀の柄のところに紋章の様なものが刻まれた
村人「雪村さまは一体・・・」
瑞穂「天から来た者だと説明されていますよね。天にはいろいろな人がいるのですよ。たまたま、私は仙術が使える。それだけのことです」
村人「はぁ〜」
瑞穂はもう一本の短刀にも同じ加工を施す
出来を確認すると、瑞穂は短刀にあった鞘を錬金術で作り出し、
短刀を納め、腰に十字に携えた
瑞穂「さぁ、行きますよ。黄巾党を倒しに!」
村人「はい!」