WOA外伝〜虹色の弾丸〜

第三話 窮地脱出

リチャード「栞か、待ちかねたぞ」
栞「リチャードさん、無事でしたか。そちらの状況は?」
リチャード「うむ・・・」

リチャードは現在、ラクーンシティ南部にある警察署にいること
栞と同じく、得体の知れない敵に襲われたことを伝えた

栞の方も、教会内にいること
そして、視覚がなく、聴覚が異常に発達したと思われる敵と対峙中であることを伝え
今後の行動を指示を仰いだ

リチャード「とりあえず、教会内の敵を排除だな。その後、お前はエルトリムを使って教会内を脱出。北へ向かえ、こちらと合流しよう。座標を端末に送る」
栞「・・・そのプランだと私の能力が一般人に知られる可能性がありますが?」
リチャード「構わん。今はそこからその三人を連れて抜け出すことが先決だ。気になるようならば記憶操作を行うが?」
栞「・・・分かりました。座標を確認。二時間・・・いえ一時間で到着します」
リチャード「了解だ。警察署付近に救助ヘリを要請しておく。なんとかそこまでその三人を連れてくるんだ」
栞「了解です。美坂アウト」




栞からの通信が切れる

リチャードはすぐに本部に連絡を取った
内容はラクーンシティ北部、警察署付近への救助ヘリの要請である

「救助者は可能な限りすぐに救助させる」

これは救助者のいるハンティングにおいて、鉄則事項である

救助者は助けべき者であると同時に足手まといになる
出来うる限り迅速に要救助者は搬送させなければ自分の身に危険が訪れるためである
それ故、ギルドもあらゆる方法を用いて搬送手段を講じている
今回は、ヘリを使っての搬送を用いた

それは搬送先まで長距離であること
また、ヘリは比較的フットワークが軽い等の理由からである





リチャード「ふむ、どうやら無事なようだな」

栞との交信が出来たことでリチャードはとりあえず安心した
そうはいっても動きの遅いゾンビ相手に遅れを取るような栞ではないことは
リチャードが一番知っていた

だが、動きが遅いとはいえ侮れない
なにしろ、数が数だ。
大量に囲まれてしまえば、いくら栞といえどもタダでは済まない
だからこそ、リチャードはエルトリムの使用を命じた
エルトリムならば、大量のゾンビを一網打尽に出来るほどの威力を持っている
命の危険が迫っている場合、背に腹はかえられない

栞ならば、うまくエルトリムを使って今いる状況を打開できるだろう

リチャード「さて、俺は安全地帯を確保しておくか」

栞が連れて来るであろう救助者を安全にヘリに乗せるために
安全地帯は不可欠である

ヘリを着陸させる場所となればだいぶ限定される
リチャードは警察署まで来たルートでそんな場所がないか考える

リチャード「10メートル四方は欲しいところだな」

そうなれば、やはり警察署の駐車場ということになる
早速リチャードは駐車場に移動する
だが、そこにはやはり障害があった
ゾンビが大量にいる上に警察車両が数台ある

リチャード「一台ずつ動かしてたら時間が掛かるな」

リチャードはまず、ゾンビの殲滅を開始した
栞の師匠だけに銃の取り扱いはスペシャリストである
素早く、かつ確実にゾンビ達の頭に撃ち込んでいく
囲まれないように常に移動しながら、撃ち込んでいく
動きながらの射撃はかなり難しい
自分の動きとともに相手の動きも計算に入れて射撃しなければ
当たらない

それをリチャードはいとも簡単にこなしている

結果、リチャードは一発も無駄にすることなくゾンビ達の殲滅を完了した

リチャード「よし、次はこれか」

警察車両が全部で10台
これを何とかしなければヘリがおりることが出来ない

リチャード「久しぶりに使うか」

リチャードは両手を車両の前に突き出し、念を込める
今からやることはイメージが大事である
目を閉じ、これからやることをイメージする

リチャード「はっ!」

気合いと同時に車両が浮き上がる
浮き上がった車両は駐車場の端に移動し、落ちた

サイコキネシス

念動力ともいう
思念の力で物体を動かす特殊能力
リチャードはその力を有しているハンターである
魔法を操る者が多い中で、この能力は異端である
しかし、魔力を使用しない能力故に魔力の使用できない場面において
重宝されるのだ

ものの数分で駐車場は整理され、ヘリが着陸できるほどのスペースを確保することが出来た

リチャード「よし、栞、なるべく急いでくれ。ここもいつまで持つか分からんぞ・・・」















リチャードとの通信を終え、栞は闇にひそむ敵の対処を思考していた

栞「敵は聴覚が鋭い、わずかな音でも察知される・・・ん?わずかな音でも?」

栞は気づいた
今まではなんとか音を立てずに敵を対処しようとしていた
それは敵の聴覚が鋭いからである

ならば、それを逆に利用してみてはどうか
そう、逆に爆音を立てればどうなるか

スタングレネードという非殺傷武器がある
轟音と閃光を放ち、敵を一時的に戦闘不能状態にするものである
栞はこれと同じ効果の魔法を使うことにした

栞「皆さん、ちょっと目と耳を塞いでくださいね」

隅に隠れている人にそう言うと栞は魔法を発動する

使うは光と火の魔法の混合

栞「契約に基づき、全てを照らす聖なる光と全てを燃やす紅蓮の炎よ。我を阻むものに光と音を奪い賜え。フラッシュデトネーション!」


魔法が発動した瞬間、凄まじい閃光と爆音が教会内に響き渡った

その瞬間、教会のあちこちから悲鳴のような絶叫が聞こえどさどさと何かが落ちてきた

それは、先程栞が倒した目のない怪物だった
栞の魔法を受けてぴくぴくと痙攣している

どうやら、魔法の爆音によって致命的なダメージを与えることが出来たようだ

栞「よし、次は外の・・・えっと、なんて言ってたんでしたっけ?」

「リチャードはゾンビと言っていたぞ?」

突然、栞の頭の中に声が響く
それは、栞が腰に携えている銃の声、エルトリムだった

栞「エル、ゾンビですか?」
エルトリム「うむ。先程リチャードの独り言が聞こえてな。なにかと、呼び名がないと面倒だからな。ゾンビで良いのではないか?」
栞「そうですね、そうしましょう。エル、力を貸してください。ここから脱出します」
エルトリム「了解だ。ゾンビの数を考えるとクイックモードがいい」
栞「はい、じゃあエル、クイックモード。行きます!」

栞がエルトリムに手をかけると
栞の容姿が変化する
髪は白銀に輝き、瞳は虹色に変化した

エルトリム「栞、準備はいいか?」

栞「はい!」

エルトリムのグリップに装着されている真紅の宝玉が輝き始める

栞が日本で訓練し、能力が上がった際に発現した
エルトリムの能力

クイックモード

文字通り、高速で銃を撃ち出すための形態。
また、持ち主にも高速化の恩恵を与える

チェスター「ねぇ、その姿は一体・・・」
栞「ごめんなさい、その質問は後で。みなさん、これからここを脱出します。申し訳ありませんが、異議を唱える方はここに置いていきます」

めずらしく、栞は脅しをかけた
そうでもしなければ、ここを統率することが出来ないと判断したからである
結果、栞の目論見通り、先程の言うことをきかなかった男性も黙っていた

フレデリック「しかし、外はやつらで一杯なんだぞ?」
栞「そうですね、わかりました。私がすることを見ていてください」

そういって、栞は勢いよく扉を開けた
当然の如く、ゾンビ達は雪崩のように教会に入ってくる・・・はずだった

しかし、入ってきたゾンビはすべて頭を撃ち抜かれ動かなくなっていた

フレデリック「今、なにを・・・」

栞「高速でゾンビを殲滅しました。いいですか私が道を切り開きます、そこを通ってきてください!」

皆が無言でうなずく

それを見て栞は、気合いを入れる

栞「エル、全開です!フルスピードで行きます!」
エルトリム「了解だ!」

まず、栞が飛び出す
外には無数のゾンビ
それを的確に頭だけをねらって撃ち抜いていく
その速度、秒間数十体
みるみるうちに道ができあがる
まるでモーゼが海を左右に分けたように・・・

栞「今です!」

その声が合図となって、三人は動き出す
しかし、一人は足を怪我している
思うように進まない

栞はすぐに埋まってしまいそうになる道を懸命に広げる

エル「栞!一人遅れているぞ!」

栞は怪我をしている男性を見るとその周りをゾンビが取り囲もうとしている

その打開策を栞は瞬時にはじき出す

栞「エル、補助をします!」
エル「ん、そうかアレだな!」

栞の意図を汲み取ってエルトリムが緑色に輝く
それは、風の属性を纏った証拠

栞「エンチャントバレット、シルフィードステップ!」

栞はエルトリムを三人に向けて撃つ
緑色の弾丸は三人を包み込む

フレデリック「これは・・・」
チェスター「体が軽くなった?」

シルフィードステップ
栞がエルトリムから引き出すアブストラクション、シルフィードダンスをバレットに込めて
打ち出す補助銃技である

これを撃たれたものは重力から解放されて素早い動き、跳躍が可能になる
足を怪我した男性も片足でもかなりの速度で前に進むことが出来た

そして、約束の場所まであと一息のところでとんでもないモノと出会う

植物のような様な巨大なモノがゾンビを喰っていた
そして、それは栞達を見つけると襲いかかってきた

栞「! 見境なしですか。なんですかこれ!」
エル「どうやら、植物が変化したモノだな。どういう理屈は知らんが」
栞「時間がありません、エル、フレイムスタイルブレストモードです!」
エル「了解だ!」

栞の髪が真紅に染まり、目は燃えるような緋色に変わる
エルトリムの方は、銃口が大きく開いた

栞「フレイムバレットリロード! ボルケーノノヴァ!」

巨大な火球が発射され、着弾の瞬間凄まじい爆発が起きた
それは、周りの全ての障害物をはじき飛ばして更地にしてしまうほどだった
後ろにいる三人には栞が咄嗟に防御魔法のプロテクションバリアを使い無事だった

しかし

爆発によって粉々にされた植物がものすごい勢いで再生していく

栞「! ダメなんですか?」
エル「少しでも細胞が残っているとそこから修復する性質のようだな。栞、バレットレベルを上げろ」
栞「はい、フレイムバレットレベル2。地獄の業火を呼び出します!」
エル「うむ、気を引き締めろ。地獄の業火は対象を焼き尽くすまで消えることがない。扱いを間違えれば自分もタダでは済まん!」
栞「了解。フレイムバレットリロード!」

レベルの上げたバレットをエルトリムに込める
すると、栞の容姿にさらなる変化が現れる
真紅に染まった髪の毛が炎が燃え上がるように逆立つ

栞「サモン!ヘルファイア!」

さらに栞の掛け声とともに持っているエルトリムから炎が立ち上がる
エルトリムによって炎の加護が付けられてるため
熱さは感じることはない

エル「よし、準備は出来たな。いけ栞!」
栞「はい!」

栞は巨大な植物に向かって走っていく
沢山のツタが栞を捕獲しようと飛んでくるが
寸ででかわしていくと同時に次々に
炎の銃弾を撃ち込んでいく

栞「我は撃ち放つ。浄化の炎を。灼熱なる地獄の業火は我が願いによって浄化の炎となりて全ての悪を燃やし滅ぼす!」

栞は詠唱する
これは、銃魔の詠唱
エルトリムよりもたらされし、属性の操る力の方向性を強化する詠唱
エルトリムを使いこなしていく栞にエルトリムが次なる力として与えた能力


全てのつたをかわし終わる頃には植物は炎に包まれていた
決して消えることのない地獄の業火は植物を容赦なく焼き尽くす
ものの数秒で植物は灰となってしまった

栞「ターゲットロスト。エル、このまま突っ走ります!」
エル「うむ」

3人を引き連れ、栞は走る
リチャードの待つ、警察署へ

そこに行けば、とりあえず、この3人を助けることが出来る
それにこの状況で単独行動は非常に危険だ
リチャードと共に行動した方が生存率は跳ね上がるはずである

道中、ゾンビが波の如く押し寄せてきたが、栞がなんとか対処している

あともう少しのはずだ
栞は今、この3人の希望の光なのである
その光は少しでも弱まってはいけない
少しでも弱くなればあっという間に闇に飲み込まれてしまうだろう

栞は今まで体験したことのない緊張を感じていた
しかしそれは、良い意味での緊張感だった
3人を救わなければならないという緊張
それが、今の栞の原動力となっている

そんな栞の耳にかすかにローター音が聞こえてきた
そう、ヘリコプターの飛行音である

栞「救助ヘリですね、急ぎましょう!」

3人に希望の声をかけ、再度奮起を促す

栞はエルトリムという相棒を得てから本当に成長した
以前は、気の弱い普通の女の子だった

今では、仲間も一目を置く存在となった
そして、なにより栞の周りには自然と仲間が集まる
もともとそういうモノを持っていたのであろうが、
以前に患っていた病気によってそれを表に出すことはなかった
しかしエルトリムとの契約によって病気や呪いといった類から護られている
そうして、栞の持ち前の明るさが徐々に顔を出し始めていった

今、栞に付いている3人には栞がとても大きな存在となっているだろう
年、背格好など関係ない
3人の目には栞がとても頼もしく映っていることだろう

この惨事を起こしたモノはこの都市のどこかでほくそ笑んでいることだろう
しかし、そのモノの予定は狂うことになる
それは、この都市に美坂栞という大きく強い光が舞い降りたからである

覚悟せよ
この光は、易々と消えるモノではない
今は、小さな電球の様な光かもしれない
しかしそれは、太陽の様に大きく暖かく、そして、闇をかき消すほどの光となろう

この3人をこの場より搬送次第、栞は真相へ向かうだろう

すべての真相を白日の下にさらすために…