南北オペラ報告


<時は2002年5月。場所は新宿歌舞伎町>
新宿コマの下シアターアプルの中に入れば、そこはもう花組芝居世界。
チケットをちぎってもらい、階段を降りるとお祝いのお花やお酒。
そして数々のグッズ販売。パンフ、CD、舞台写真にレコードジャケットの衣装オークション。
ジャケ写や舞台写真では、ぱっと眼に飛び込んできた嶋倉さん写真に早くも心奪われる。
ロビーに集う方々も、めいめいに会話をしたりグッズを眺めていたり、これから始まるアレコレに胸躍らせていたり。

<心踊らせ客席へ>
舞台には幕が降りていて、これから起こる舞台のことなど何も知りませぬ語りませぬ、という佇まい。
着席してしばらくすると、場内アナウンスのあとにきこえてくる、なんだか懐かしいような楽しげなメロディ。
(のちに劇中歌のメドレーだと気づく)
すぅっと場内が暗くなるとともに、幕に光が当たり、南北オペラの歌が流れる。
光が揺れ、さっきまで沈黙していた幕がさざなみのようにざわめくように感じる。

<舞台が、はじまる>
軽快な歌とともに、あらわれたカラフルな衣装。
わ、これがサイケか、と目をひく色使いはポップでキュートでマーブルチョコレートのよう。
そして冒頭から歌って踊って登場の十太丸@嶋倉さん。
そのオコチャマぶりに思わず年上的視線で可愛いと思ってしまう愛らしさ全開。
妖美で重厚な歌い出しで出てきたのは、十太丸の父、純友@山下さん。
ちょっと面白い要素を背負ってのご登場なのに、青い光からすうっと登場するそのオーラに圧倒される。
そんな純友に十太丸の「パパ上〜」、きりりとした劇場の空気を一転ふわんとさせる持ち味お見事。

<さて今回の南北オペラ。大雑把に言ってみるなら>
将軍将門を現世に復活させ、再び勢力取り戻さんという企みとそれに関わる人々。
平安のロミジュリ?七綾姫・頼光に、彼らを追う人守る人、
両者に焦がれるあまりヒトでなくなってしまう清姫、忠文などなど
どこか重なりながらも種々雑多十人十色な人々の
思惑・執着・欲望・愛欲・肉欲・出世欲・勝手気侭が入り雑じり、
歌と踊りが絡み合い、サイケでヒッピーが場を包み、
嫉妬、哀しみ、笑い、怒りに同情に、陽気に妖気の大騒ぎ、といった、
もうもうホントにお祭り騒ぎなハイテンション作品。
物語も人物も説明はしきれません(苦笑)。
見ていても、すべてを咀嚼したいという思いより、その騒乱に身を任せ楽しんでしまえと思う私でしたもので。

<一幕目の嶋倉さん>
今回は最多役・役者だったのでは?という七変化ぶり。
冒頭の十太丸にはじまり、秋葉娘の「場面が変わるわよ〜」の声で登場の茶摘娘では、
たくさんの娘たちの中でも、若々しく活き良く踊る嶋倉娘。きびきび感が眼に心地いい。

お清を七綾の身代わりに、殺めてさし出さんと御厨が刀をふりあげる場面では、
雷鳴とどろき、刀に閃光を走らせる役?の雷小僧として登場。
金髪に角の似合う雷神は、おしゃぶり咥えてパンツ1枚のキュートな姿。小僧というより赤ん坊。
閃光一発放ったあとは、日替りのリアクションで退却退却。

七綾の討手である捕り手たちから、姫を守らんとして登場した茶摘娘=実は腰元では、
学生闘争の頃を彷彿させる戦闘スタイル(ごめんなさい、知識が浅くて説明できない…)に身を包んでのご登場。
ピンクの色味がカラフルキュート。
ジャンプ一番吹っ飛ばされるとこなど、全身使って動き回るその勢いに爽快感。

<一幕目終了と休憩と>
嫉妬に狂ったお清が蛇に、恋に迷うた忠文が鬼に変わったところで一幕終了。
楽しさと熱のこもった舞台にあおられ、一気に魅せられての小休憩は、
カラダに熱をほこほこ残しながらも、なんだか心地よい疲労感と二幕への期待感。

<二幕目の嶋倉さん>
正直、二幕目に、あんなお楽しみがまっていようとは。

二幕目の途中での出来事。突如流れるオトコマエな音楽に、客席通路から現れたのは、赤斑の狼。
白いギターを抱え、赤い衣装に身を包み、しかも歌はソロ。超見せ場。
そんなシチュエーションでどうして壊れずにいましょうか(笑)。
色んな想いが入り混じり、全身全霊で見聞きしてしまいました赤斑。


そして所化。僧侶の衣装がかっこいい、それ以上に踊りがかっこいい。
こういうキビキビした踊りを本当にカッコよく踊れる人だなぁという気持ち。


<終宴へ>
それぞれの正体が露見しはじめ、野望も夢もむき出しになり混沌としてゆく。
各々の目論む未来や、いかに・・・

というところでエンディング。
役者が次々歌に合わせて登場。嶋倉さんは赤斑で秀郷の各務さんとともに。
すべての役者が出揃ったところで、皆それぞれの役の顔でポーズを決めて静止。
まるで一枚の絵のようなその構図は「南北オペラ」の物語がぎゅっと詰まったようであり、
年も15の花組芝居の「今」が詰まっているよう。
15周年にこういう芝居を作る花組を、そしてそんな花組に出会えた自分を嬉しく思いつつ、まず今日はこれぎり。


※本報告はすべて私的見解ですので、ご了承ください。


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