えこひいき 時々こうしてえこひいきしていきます。己が体力続くまで。


2002 えこ2『 じゃんけんぽん 』

ざっとあらすじ

あるアパートの一室。
家へ帰ってきたユウキのもとへ女性が訊ねてくる。
女性は同棲中のムツコの姉。
ムツコの同棲の様子を探りに来たのだが、相手が求職中の40過ぎのユウキと知ってあ然。
家に帰ってくるようムツコを説得しようと、ムツコの帰宅を待つことに。
待つ間、ふたりの馴れ初めなどを聞き込みするものの、ユウキのとんちんかんな受け答えにすっかりペースを乱される。
常識的に社会人として女性として頑張って生きてきた自分に対し、のんびりとマイペースで、ことごとく神経を逆なでしてくるにユウキの言動にくわえ、ユニットの天井からユウキの前妻との手紙や写真などの想い出グッズを見つけ、ついに大激怒するお姉さん。そして激昂のあまり、つい自分の辛い状況までも吐露してしまう。
それでもそれを受け止めるくらいのんびりしたユウキのペース、そしてムツコとの暮らしの穏かさを垣間見て、見守ってみようかと思いはじめる。というようなお話(ざっとです、ざっと)。

きゃすと(敬称略)

ユウキ
ムツコ(19歳)と同棲中の40代。
(※すいません年齢ど忘れ。たしか43歳位だったよな)
先日リストラされ現在求職中(道路工事の研修中)。
妙に几帳面で整理整頓好き。マイペースでやや鈍感。実はバツ2。

 
(朝倉伸二)

ムツコの姉

ムツコを訪問してきた29歳。
ムツコを家に帰ってくるよう説得する構え。
理知的でばりばりシゴトを頑張りつつ、ちょっと訳あり恋愛中?

 
(小林 美江)

THE かんそう

( ぶたいのこと )

まず座ってすぐ目に飛び込んできたのが小道具の数々。
ごみ箱の買い物袋、棚に入ってるお菓子のオマケ、書店のカバーのかかっている文庫、家庭の医学&イミダス、床に重ねられてる料理本にオレンジページがあったり、壁に飾られてるどこかから貰ってきたよなカレンダー、ハガキや封筒の差し込まれた郵便入れ・・・1つ1つがありそう〜!という感じのリアルな生活感がツボを刺激。
それは始まってから登場した小道具たちもそうで、どこの家にも1つありそな湯飲みとか、ゲームソフトが「みんなのGOLF2」なとことか、散らかされた前妻の手紙&写真&小物などは、それ見たさに2回目はかぶりつきで観たほど(笑)。
そして何よりポッキー。家に5つも6つも常備されてる、という設定のノーマルなチョコポッキーに、なんともいえない普通さがにじんでて、それでいて笑いの小道具としても強力で。まさかポッキーが武器にもなるとは(笑)。なんとも印象的で終演後ポッキーつい食べたくなったのでした。

あと小道具ではないけれど、ドアも印象的。
細かく生活感溢れる舞台に1つ立体的に置かれてあり、ユウキさんが帰ってきた時と、お姉さんが入って出てゆく時くらいしか気にならないのだけれど、その瞬間の部屋と部屋の外という空間を隔ててる感じがなんだか印象的だったのでした。
とくに最後お姉さんが出てゆく時の、扉の向こうとこちらにお姉さんとユウキさんという場面。それぞれの扉一枚隔てての表情の対比とか、すごい好きな構図でした。

また最初薄暗いところから始まるのも好きでした。暗い感じの空間が何だか叙情的で、そして部屋の電気がついて明るくなって…というのが、ユウキさんの帰宅とともに、少しづつ芝居が始まってゆく感じがして好きでした。


( おもしろかったこと )

あげるとキリがないほど、マイツボな面白さが満載でした。

◎お姉さんが激昂する場面
「何もね、米倉涼子になりたいなんて思ってないの!ただこのぷよぷよってぷよぷよってしたとこを取りたいだけなの!!」
わかるーっ(笑)。

◎お姉さん「お仕事は?」
ユウキさんの「十中八九」
お姉さん「なんですかそれ?会社名?違いますよね、嫌ですよそんな微妙な会社。」
結局十中八九工事の作業員に決まりそうだってコトの「十中八九」なんですけど。
たしかに、株式会社十中八九とか、ちょっとヤダ(笑)。

◎トイレへ行って戻ってきたユウキさんの髪がきちっと横分けになでられてたトコ。あれだけで大爆笑とれる朝倉さんのビジュアルが大好き。

( ぐっときたばめん )

「ほんとにバカなんだから、あのこ。」
「ムーちゃんのこと、そんな風に言わないでください。」
「・・・・・。」

同世代として、妹をもつ姉として、なんかお姉さんに感情移入しまくりだったのでした。
特にこの場面で、ユウキさんにいさめられた時のお姉さんの表情。
本当にバカだなんて思ってないのにな、っていう少しの寂しさと、だけどそんなコトバからも妹を守ってくれようとする男の人なんだなって思う気持ちの入り混じった視線に涙。

( きになったてん )

お姉さんが思わずユウキさんの頬をたたいてしまう場面でのこのセリフ。
お姉さん「・・・殴られるかと思った。」
ユウキ「どうしてでしょう。自分でもわかりません。」

このユウキさんのセリフって何故殴らなかったのか自分でもわからない、と捉えたんですが、ええっ殴るものなの?どうなんでしょう、男の人って、こういう状況でさほど親しくない女の人から一発叩かれたら、かっとなって叩き返すものなのでしょか?
お姉さんも殴られるかと思った割には、あまり身構えてなかったよな気が(^^;)

( あさくらさんのこと )

話をつくる側の朝倉さん。
どうしてこういうお話が作れるんだろう、
どうしてこういうお話を書こうと思いついたんだろう、というトコロから不思議(笑)。
視点が女性側主体で、29歳微妙な恋愛をしてる女性の心情とか、こういう男性を目にした時の女性を何故こんなにも捉えることができるのだ朝倉さん!という気持ち(笑)。
初演出・脚本ということで、朝倉さんってこういうコトを思って、こういうことを笑いとして捉えて、こういう世界をこんな感じで作る方なんだ〜っていうこと一つ一つを見ることができるというのが、とにかく興味深かったんですが、自分の考えてた朝倉さんより、朝倉さんってクールなのかもしれないという印象。
お姉さんが今の心情を吐き出す場面、そして妹のことを思ってるのが伝わる場面では、本当にうるうるうるうるだし、心情をぶちまけてからのおさめ方の冷静な感じも好き。変に解決させようとしないあたりが好感。


作ってるものはほのぼのコメディータッチだけど、押し付けがましくなく、笑えるコト&笑えないコトの見極めがクールで、コレは面白いと思えるだけでなく、コレは面白くないを選べてるトコがすごいな〜と思ったのでした。
(↑ユウキさん的には面白いと思ってることが、お姉さんに「何それ?」って言われてしまうあたりとか。笑いの境界線が見えてないと作れないんじゃないかなあと。そしてお姉さんのツッコミまでで、ちゃんと「面白いこと」にするあたりも絶妙。)
それでいてその「面白いと思ってること」がヒトが面白いと思ってることと微妙に違う感じ。
面白いんだけれど、なんていうか笑いのとり方がベタなよでベタとは違う。シュールまではいかないんだけど。
劇中お姉さんがユウキさんに「貴方おかしいですよ。」というけれど、本当にユウキさんって、だだ大丈夫?て思うような壊れた部分を持ってるように感じました。マイペースって言葉で片付けていいのか?ってよな(笑)。そういうキャラ設定ふくめ作品中ににじむ「やってる事は一見ノーマルなのに、なんか微妙に常軌を逸してる」よな(笑)センス。それが朝倉さんの思考ままなら、そのセンスすごく興味ある!と思ったのでした。

( さいごに )

タイトルの「じゃんけんぽん」という視点でみるなら、負けたり勝ったり遅だしがあったり(笑)2人のかけあいが本当に攻防って感じで楽しかったです。

そして朝倉さん、ぜひ第2弾作ってほしいなぁ(^^)。
朝倉さんの脳内にあるモノをもっと見てみたいです。興味津々。


※記憶だけで書いてるので、記憶違いなとこがありましたらゴメンナサイ。

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