感想文2003年の1

◆被告人

観客が裁判の陪審員という設定で、有罪か無罪かを観客が選択でき、それによって結末が変わるというお芝居。こういう試みって楽しいなあー。両バージョン見たくなっちゃうし。

ちなみに私の観た回は無罪。ただし私が選択したのは有罪。
有罪無罪どちらにも理由づけできるよな、甘いトラップがいくつかしかけてあって、その中のどこに客がココロ動かされるか・・・てことなんだろなあ。
私の場合は、被告が「コーヒーを飲めません。」と言い切った場面。
その前に弁護側が「緊張のあまりブラックをがぶがぶと・・・」と言ってたので、どうしてもどうしてもその嘘が気になってしまったのでした。

結末も有罪無罪どちらにしても、観客が「ほらやっぱりそうだったじゃん!」(判決と逆を選んだ側)「えっ、そんなぁ。」(判決通りだった側)という感想を抱けるようになってるんだなあ。なんて。

無罪の場合、ラスト被告のとても悪魔な表情が見らりました。
被告役の各務さん、この時の顔がすてきでした。


寿 初春大歌舞伎 (昼の部)

1月に歌舞伎見たのは初めてかな。正月ですねー!派手で楽しい〜ステキだ好きだ。
いいなあ初春大歌舞伎。1月上京できる時はぜひ歌舞伎にも行こうと思いました。
玉三郎さんの道成寺が、なんか最後の眼の強さ妖しさがすごかったです。ぞくぞくしました。
菊之助さんは今回立役で見られて嬉しかった。白波・・・ではもすこし男っぽさがあってもいいかなあ、なんても思いましたが、やっぱり立役な菊之助さんにはメロメロしちゃうなあ。


◆・・・ファウスト?(チフリン・チマヴイ歌劇団)


◆風の英雄(劇団アウトローズ)

いやもう、号泣でした。戦争モノだからなーとても弱いですこういうの、ってのはあるけど、それにしてもそんなに泣かなくてもってくらい号泣。皆どっかで叶わないコトかもっていう不安を抱えながら、それでも笑って夢をみて・・・ってその切なさが胸にせまりましたです。
ケンジ役の不動さんの「死なないよね?」って言葉や、「兄ちゃん!」っていう慟哭。
老人になったケンジ役の赤垣さんの「・・・ぼくはなれなかったけど」の笑顔は、今思い出しても泣きそうになります。

不動さん、ちゃんとした?可愛い男の子役、たぶん初めて見ましたが、はまりすぎ。
すごい最強の武器でしょう、これ。ってなくらいの可愛らしさにびっくら。
いやほんと40になっても50になっても、そういう不動さん希望。
赤垣さんってすごいなー!
何回か拝見したことありましたが、今回ホント赤垣さんってすげぇ!って思った。
ケンジ達の物語が明らかになってくにつれ、老人ケンジと、戦時時代のケンジがどんどん合致してきて、最後ほんとに赤垣ケンジの中に不動ケンジが重なってみえました。すごいなー。
あとタツオ役の濱本さんの笑顔が印象的だったな〜。
笑えてないけど笑おうとしてる時とか、マジで怒った時の顔とかの表情の深さが良いです。

戦争モノの芝居で、今っぽい感じ、というのもアレかもですが、その今っぽい感じがいいなあと思いました。ちゃんと今の自分達を切り取って作ってる、そんな等身大の感じがナチュラルに出てる。
他愛もないおしゃべりも、本当に日常で男子のおしゃべりを近くで聞いてる時のよな気持ち。可愛らしくて楽しくてちょっとうらやましい。

そのまま30代には30代の、40代には40代の、80代には80代の感性で作る芝居を見せてって欲しいなあと思いました。うん、なんかそれをずっと観ていってみたい、と思える劇団。


◆アシバー 沖縄遊侠伝

アシバー=遊び人だそう。
アシバーの慣れの果てで何でも屋をやってる2人(前科アリ)が、とある債権回収の事務所でヤクザとはちあわせする物語。←いや、大雑把すぎ(笑)

沖縄をあまり知らない北海道人ですが、沖縄の方ってこういうおおらかさなのかなぁ。
なんかゆるりとしてて、いい感じだなあと思いましたさ。
2人組が最後なんともいえない沖縄の風っぽいよな、てーげーな感じなよな空気をかもし出してて
複雑で悲しい人間関係を少し緩和した終わり方をしてくれて、そこではじめてああ主役ってこの2人だったんだとか思った。遅いよ!(笑)。
そういう意図なのかもしれませんが、私はもちょっとそのアシバーコンビが中心になってるよな感じだとよいなあとか思いました。

その2人組の1人が朝倉さんだったりしたのですが、いやもう朝倉さんはサイコウ!
歌う朝倉さん、落語る朝倉さん、単語でしかしゃべらない朝倉さん(それでもちゃんと喜怒哀楽が伝わってくる感動。)、もう「気がつけば主役な朝倉伸二」とはチラシにあった朝倉評でしたが、まさにまさに観客がきづけば朝倉さんに注目してしまう不思議。ああ好きだステキだ朝倉さん。
とゆうことで、アタクシ的にはそんな朝倉さんが見られただけでもう十分満足です、はい。


◆ちっともコリン君(人形劇団むすび座)

ドジでいたずら好きでいつも怒られてるけど、ちっともこりないコリン君の日常を描いたお話。
授業中や給食中すぐふざけたり(ふざけるネタがトイレネタなあたりも)、放課後は寄り道して基地を作ったり・・・小学生の時、こんな男の子いたいた〜って感じで、なんとも懐かしい感じでした。

色んな大きさや種類の人形やしかけを使って、テンポ良くて面白かった(オトナが見てもげらげら笑ったり、おおーなんて感心したり)ので、1時間強の舞台でも全然コドモもだれずに集中してみてました。

人形は手足の動きがやわらかくて、走ったり動いたりといった動作部分ですごく魅力的。
特に起きる場面での、眠くて眠くて起きたくない様子を、1つの人形を2人で丁寧にゆっくりと動かすことで、ぐだぐだした感じがすごく良く出てたのでした。

昼休みに遊ぶという場面で、コドモを何人か舞台にあげて人形を使ってゲームをさせてました。
そこがちょっとした息抜き的な場になってて楽しかった。
ああすることで、コドモが人形に触れて動かして、でもって人形劇をやることを面白いなーと感じてくれたら嬉しいなあなんて思ってみてました。
あと、そのときの演者さんの説明しゃべりが意外とスパイシーでツボりやした。

コリン君が友人の中島くんとアイサツする時の
「おっす、めっす、きっす、ごっつぁんです!」に異様にはまってしまった〜。
やばあい、いまだに、こういうオバカなあいさつ大好きだので使っちゃいそうだ(笑)。


◆オルフェウス(デフパペットシアターひとみ)

1人の中学生がオルフェウスの物語の世界に迷い込み、オルフェウスとともに行動してゆくことで、自分の無気力さ、諦め感から脱却していく話。

中学生役の方すてきでした。オルフェウスを人形が、中学生を生身の役者が演じるのですが、その方が時にオルフェウス使いになり、時に中学生になってとまどう・・・その表情の良さとか、あと何と言っても手の動き!なんていうかすごくしなやかで表現力が豊かで、指先まで美しいという感じで、ひたすら見惚れてました。

オルフェウスが黄泉の国から元の世界へ戻る際、けして後ろを振り返るなと言われ、だけど後ろに愛する妻がいるというその想いに耐え切れず振り向いてしまう…その場面の緊迫感とか切なさとかにぐぐぐとひきつけられました。

だけど、それでも「オルフェウス、あきらめるな。」っていうのが、その往生際の悪さ(笑)がいいなあと思いました。

 


四代目尾上松緑襲名披露 松竹大歌舞伎

公演内容は「義経千本桜 すし屋」「口上」「棒しばり」。

菊之助さんの女形が綺麗だなあと思うことはありましたが、今回の「義経千本桜」でのお里ちゃんは今まで観た中でも一番かも知れないなあってほどツボりました。
見た目の可愛さよりも、その弥助さん好き好きモード全開な感じが本当にキュートで、お里ちゃんという一人のオンナノコとしてなんか好きだなー可愛いなーって思いましたさ。
いやもうすっごい可愛かったです〜。弥助さんと夫婦になれると思って浮かれまくってる時とか、寝ましょうよって一生懸命誘ってる時とか…その表情一つ一つが、本当にキュートでした。
ああ、こんなキュートな菊之助さんが観られて嬉しい。歌舞伎座で1ヶ月公演とかだったら、通ってしまったかもしれなあい(笑)。

「棒しばり」爆笑!面白かった〜。
前に別の人のを観た記憶があるですが、こんなに劇場中爆笑の渦だった記憶はありやせん。
シンプルな感想なんですが、松緑さん面白いなーって思った。表情豊かで元気いっぱいで何かすごく魅力的でした


◆ゴドーを待ちながら

のっぺりとした公民館が立派な劇場と化してました。
客席に見やすい段差がついてたり、通路がしっかりついてたり。
電球、蛍光灯、様々な照明器具を重ね、組み合わせることで、
さまざまな時間、明るさを表現してたのが何ともステキだったし。
どこだって劇場になる、どこでだって芝居はできる芝居は見られる、を見せつけていただいた気持ちで嬉しい。

緒形さん串田さんのおぢさまたちが可愛らしく、コミカル。
これくらいの年格好のヴラジミール、エストラゴンって何とも切なくて愛しい、なんて思いました。
小松さんラッキー好演。ラッキーがダンスをする場面では、足を上げるだけでおおーと感嘆の声が。
それだけ、疲労し歳をとってるラッキーの下僕っぷりを観客に感じさせてたのだと思う。


梅ちゃんの青い伝説

今回もあっというまの数時間でした。楽しかった〜。
札幌でやるときのスギウラさんとの「山親父」。
梅ちゃんもつい口ずさんでしまうという「山親父」。
奏でれば必ず唱和になる「山親父」。ああもうぜひ恒例化希望!(笑)

2ヶ月前に拝見したシャンソンものと何曲か歌がかぶってて、ひとり悶絶してました(笑)。
どっちが勝ち負けってことでなく、それぞれにそれぞれの持ち味があるなあと。
梅ちゃんの歌は楽しくて、楽しいけど、ほんのちょっとだけ切ない。
あたしがこんなに想ってても、貴方はあたしから逃げるのね…
ていう哀しさを漂わせるのが巧いなあと。
あ、それって、あたし=梅ちゃんが楽しませようと想って、あんなコトやこんなコトをするのに、貴方=客は、本気で嫌がり逃げるのね…っていうのがリンクしてるから?
ってことは、梅ちゃんのアレはまさにシャンソンそのもの!?(笑)

ええと、1つだけお願いしたいのは、見せていいのはチラリまで!(笑)。
梅ちゃん観始めて数回め…、初めてマトモに梅ちゃん‘の’見ちゃいました…。
それ自体は別にいいんだけどさ(いいんかい!笑)
ギリの美学っていうかさ、その寸止め具合が面白いんであって、そうでないとそれは単なるアクシデントでショーじゃなくなっちゃう〜と思う。まあ、ぎりぎり真剣勝負?(笑)だからこその失敗ともいえるんだけど。


OINARI

地震の直後に戦中・戦後の話は、直に関係はしてないものの、ちょっと気持ち的にヘビーでした。

荒唐無稽でも辻褄が合わなくても大雑把でも、面白いかったら、まー面白かったからよしとしよう!って思うし、逆にえ?なんで?なんでこうなるの?なんて、そういうコトが気になって、釈然としないって時は、要はそっちに気がいってしまう程度にしか魅了されてないのかなあって。
面白いということは人を寛容にするのだろなあと、そんなことをあらためて思ってみたり。

こういう舞台の花組芝居って、以前だと花組芝居はどこじゃろうって感じで探して、いたら、あ!花組芝居だって、なんかこう探して見つけて喜んでって感じだったんですが、今回そういうのがなくて、それは花組もスムーズに舞台にとけこんでたし、見るワタシの見方も変わってきたのかなって(大きい劇場に慣れてきた?爆)、その自然な感じは嬉しかったです。


◆3つの事情(泪目銀座)

久々のナミギンは3人芝居。
誰の何かが中心になってるとかいう主軸がない感じなせいか、いつもよりかライトタッチな気持ち。

朝倉さんは、冒頭のちょっとイライラする朝倉さんが、なんだか新鮮。
まあ中盤戦からは本領発揮?とばかりイライラさせてましたが(笑)。
ナミギンでの朝倉さんは、ちょっと変わったコトバを使うことが多いなあ。
福島さんの書かれるセリフや言葉づかいなんでしょけど、
それを朝倉風味にして5倍にも10倍にもふくらませるって感じします。相乗効果?(笑)
あ、あと物陰から恨めしそうに覗いてるときが秀逸!
照明のあたり方もふくめて朝倉好きなワタシでもマジ怖かったですもの(笑)。

長谷川さん、間とかテンポとかセリフの音とか感情の出し方がいいですねえ。
好きな子に振られてからのぐだぐだした感じとか、すごくよかった。
「やはばー!」って言い方も。
言うほうも言わせるほうも、ぴたりとはまってる爽快感?がありました。
あーそりゃ言いたくなるし、言われるわ、みたいな。
その間に入ってうまくバランスとってる山崎さんもステキでした。
温度も色も味も違う3人があわさることで、不思議な面白味が出るという感じ。

あと、最後の最後の「FIN」がなんかすごく好きだったな〜。こういう演出に弱いぞワタシ(笑)。


◆止まれない12人

本年の芝居おさめ。
うーんやはりスピカは私の観たいサイズのお芝居には向かないと思いました。(何様だ・笑)。
席的には、遠いけど全体見渡せたから逆に面白いかもと思いましたがね。
音の響きとかねえ。しょっぱなのセリフ聞き取りづらかった時はどうなることかと。


お芝居本体は、個々にステキな魅力をもつ12人の皆さん。
それぞれに個性的なんだけど、色んな性格設定だったり事情だったりを抱えてたりしてるんだけど、そのへんを掘り下げずサラリと取り扱う、なんともゼイタクなお芝居だなと思いました。

びゅんびゅん飛ばしている乗り物が、きゅーっとブレーキングして、ぴしっと止まるとなんか気持ちよくありませんか?ワタシだけですか?
そんな疾走感&メリハリの良さがまんまお芝居にも感じられた、そんな作品でした。
あれ?よく考えると結局のとこ解決してないんじゃ?って、あとあと思ったりもするけど(笑)、でもそのスッキリ感に気持ち良く陵駕されちゃうって感じ。

植本さん、オレンジの上着がキュートでした。コドモ役というのに違和感は感じなかったですが、あの、全編高音でしゃべるのはコドモを演じようとしてのコトなのかなあ?うーん、私フツウの植本さんの声で全然違和感感じないと思うんですが。っていうか逆にあの声のが気になっちゃうんですが。ナチュラルな声で演じられてるのでも観てみたかったなと思いました。


楠見さん、かっちょいい女の人〜と思ってたんですが、途中からさらにかっこいいことに(笑)。いや、びっくり。でもはまってやした。
小須田さん、うまく表現できないのですが、そのヒトの抱える窮屈さが逆に愛しくてアタマなでてあげたくなる…そんな男の人演じられたらバツグンです。

久ヶ沢さん、ああ久ヶ沢さん(笑)。初演の三上さんのインパクトとかってやはり大きかったと思うし、もうしっかりとナニカが作られてしまってる感のあるキャラだと思ってたんですが、そのキャラをよくぞ、という思い。久ヶ沢的キリヤマだったと思います。
久ヶ沢さんの何を知ってる訳でもありませんが、久ヶ沢徹という人がいて、役があって、その役と御本人の間に、「自然体」という、もう1枚の皮がある感じ。

自然体でいて、それでいて本人ではない感じ。本人ではないけど、自然な感じ。それが久ヶ沢さんの「自由さ」の技術力であり、魅力だと思いました。はい。「しかられた。」がなまらキュートでした。


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