人は今ここにある世界が唯一だと思うだろう。
それは、その世界しか知らないからだろう
だが、それは違う

世界は絶えず、分岐している
もし、自分があの時、あの選択をしていれば・・・。

ただ一人の一瞬の選択でさえ世界は分岐する

そうやって、今いる世界とはほんの少しずつ違う世界が平行して存在する。
言わば、パラレルワールドというやつである。

それは、過去に至っても変わらぬこと

もし、史実とは違う過去があったら。
そんな、過去に触れることがあるならば。

自分は何ができるのだろうか・・・

WOAスピンオフ作品

『恋姫†無双 〜乙女絢爛☆新たなる風が吹き込む三国志演義〜 もう一人の御使い様』

第一話 時間逆行?→異世界跳躍?


「困った・・・」

見渡す限りの原っぱ
遠くには山脈が多く見える

そして、傍らには見慣れない少年が寝てる
おそらく、高校生くらいの年だろう

どうしてこんなことになったのか
思い返してみる

たまたま立ち寄った町を散策していて
道の角を曲がった瞬間、目の前が真っ暗になって・・・

「なんだか、思い返しても訳がわからないわねぇ」

深い黒のローブを纏い
腰まである髪の毛をなびかせて
額に指を当て
難しい顔をしている少女

雪村瑞穂。
それがこの少女の名前
職業、錬金術師兼魔法使い

別に頭がおかしい訳じゃない
本当にそうなのだ
地を揺らし、風を纏い、火を揺らし、水を湧かせる・・・
そういうことができるのだ

今回の事象、よくわからないところに飛ばされたことについて瑞穂は自分の魔法使いとしての今までの経験と類似点を探してみるが全く見当がつかない
わかることは、ここが自分の居た世界ではないということだけ

瑞穂「仕方ない、とりあえず、現状の確認からっと」

いつも通り、魔法を使って空へと舞い上がろうとした
のだが・・・

瑞穂「あれ、飛べない」

そして、違和感に気づく

瑞穂「マナがない・・・いやこれは・・・」

マナとは周囲に漂う魔法を使うための源、魔素のことである
逆に体内にある魔素をオドというのだが

空を飛ぶ魔法はマナに依存した魔法であり、マナがなければ魔法は発動しない
だが今回の場合はマナ自体は存在するのだが、この世界におけるマナの質が違うようだ
つまり、瑞穂の居た世界とマナの性質が違うため、体内にマナを取り込むことができず
魔法を発動させるために必要なマナを確保できないのである

時間をかければ、適応しこの世界のマナを取り込むことができるようになるはずだが
それがどのくらいかかるのかは全く見当がつかない

どうやら、オド事態は体内生成できるようなので魔法自体が使えなくなったわけではないが
使える魔法はかなり少なくなってしまった

瑞穂「これは、最悪、元の世界に帰れないかも・・・」

そう言って、何もしないで黙っていても事は進展しない

とりあえずは、周囲の探索をすることにした
男の子は寝かせておいた方がいいと判断し、しばらくおいていくことにした

10分ほど周りを探索して
だんだん、一つの仮定が浮かんだ

原因は不明だが、異世界にとばされた。しかも、それは現代時間軸の平行世界ではなく、そこからさらに過去にとばされている
まず、異世界という理由はマナの性質が違うということ
単に過去にとばされたと言うだけならば、マナ依存の魔法が使えるはずなのである。
マナの性質は世界によって違う。そして、マナの発生は世界の発生と同時であり
過去、未来といった時間によって左右されないのである
そして、異世界の過去にとばされた事の理由
周囲を見ていて気づいたのだが、よく似ているのである
歴史書に出てくる風景に・・・

そんなことを考えながら、先ほどの場所に戻ってみると
男の子の周囲に人が群がっている
遠目に見ても瑞穂たちのいた世界とはまったく服装が違う
それでも、無人ではないことがわかっただけでも少し安心した
とりあえずは、ここのことを聴かないことには始まらない
今はゼロと言っていいほど情報がないのだ

話を聞こうと近づくとなにやら様子がおかしい

男1「なに、いつまでも寝てるんだよ、ぶっ殺すぞ?」

ぶっ殺すとは穏やかではない

男2「おい、兄ちゃん。身ぐるみおいてもらおうか?」

一緒にいた男の子を囲んでいるのはガラの悪い男三人

瑞穂(どこの世界にも居るのねぇ。こういうの)

???「はっ?」

男1「服を全部脱げって言ってるんだよ!」

???「ちょっ、まて。訳がわからない。なんでそんなことをしなきゃいけない?」

男1「うるせぇ! ぐだぐだ言ってるとぶっ殺すぞ!」

男の一人が少年の首筋に剣を当てる
その際に皮膚が切れ、赤い筋が流れ出す

いよいよ、雲行きが怪しくなってきた
このまま放っておいて、一緒にとばされてきたであろう彼を見捨てることなってしまうほど
薄情ではない

瑞穂「ねぇねぇ、そこのお兄さん達」

男2「あん? なんだおまえ」

瑞穂「寄ってたかって、一人を虐めるなんてかっこ悪いわねぇ」

男2「なんだ、邪魔しようって言うのか? いや・・・ほう、姉ちゃん、良いからだしてるじゃねぇか」

背の小さな男がなめ回すような視線を向けてくる

瑞穂(うわっ、すごいベタな台詞ねぇ。逆にしっくりきすぎて違和感がないわねぇ)

「そう?ありがと。なんなら、相手をしてあげても良いんだけど?こっちのほうで」

なぜか近くに転がっていた木刀を手に構える

男2「なんだぁ? やる気か?女だからって容赦はしねぇぞ?」

瑞穂「どうぞ、ご自由に」

男2「へへっ・・・」

下品な笑いを浮かべながらじりじりとこちらに近づいてくる

瑞穂「あ、一つ忠告。女だからって馬鹿にしていると・・・」

男2「がはっ」

瑞穂「痛い目にあうわよ?」

気づけば瑞穂は男の後ろに回り込み横薙ぎに木刀を振るい男の脇腹を打ちぬいた
たまらず、男は膝付き嗚咽を漏らす
横隔膜付近に打撃を加えたので肺の空気を強制的に排出した
そのせいで、男は一時的に呼吸困難に陥る
それでも、回復のために体力をごっそりと持って行かれただろう
しばらくは行動不能だ

男1「チビっ!ちっ、おい、デクおまえが何とかしろ!」

デクと呼ばれた巨漢が瑞穂に向かってくる

見た目から素早い動きはできなさそうな感じだった

瑞穂「やめておきなさいって!」

先ほどのチビと呼ばれた男と同じように高速で後ろに回り込み横薙ぎの一閃を放つ

ドスッ

攻撃は確かに当たった
だが・・・

デク「痛いんだなぁ・・・」

瑞穂「くっ!」

どうやら、木刀での衝撃をこのデクという巨漢は吸収してしまうらしい
痛みすら与えれど、それが決定打にはならないみたいだった

瑞穂「仕方ない・・・すぅ・・・」

瑞穂はゆっくりと息を吸い込む
その瞬間、瑞穂の周りの空気が変わった

冷たく
鋭く
研ぎ澄まされたピリピリした空気

瑞穂「はっ!」

裂帛の気合いとともにデクに一直線に突進する

その突進にあわせてデクが持っている剣を振るう
剣が瑞穂に接触する瞬間

デク「ぐへぇ・・・」

デクの方が先に倒れ込んだ

男1「一体何が・・・」

瑞穂「ん? ああ、このデクって子ね。衝撃吸収体質なのね。一方向から打ち込んでも打撃を与えられないから一度にいろんな方向から打ち込んで衝撃の逃げ場を断たせてもらったわ。結果はみての通りね」

チビ「げほっ・・・げほっ・・・アニキぃ・・・」

アニキ「まだだ、こっちには人質が・・・ひっ!」

いつの間にか瑞穂はアニキと呼ばれた男ののど笛に木刀の切っ先を突きつける

瑞穂「いいから、彼を離してここから去りなさい。見逃してあげるから・・・・ね?」

満面の笑みを浮かべ
なおかつ、殺気はそのままに瑞穂は撤退を促す

アニキ「く、くそ・・・覚えてろよ!」

男達は互いを庇いつつ、逃げていった

瑞穂「まったく、あれだけベタだと逆に気持ちいいわねぇ。さてと、君、立てる?」

???「あ、うん」

瑞穂が手を伸ばして立ち上がらせようとすると

???「まて! 貴様、この方に何用か?」

瑞穂「はい?」

声をかけられたので振り向いてみると
自分の背より長い得物を持った少女がどう見ても瑞穂を威嚇していた

???「この方に手をかけようものなら、我が青龍偃月刀が相手をしてやろう!」

どうやら、勘違いをしているようだ
この少女には瑞穂がこの少年を襲おうとしているに見えるらしい
まぁ、確かに見ようによっては木刀をもった瑞穂が手を伸ばし胸ぐらを掴もうとしているように見えるかも知れない

瑞穂「落ち着きなさい、私たちは今、野党の一味を振り払っただけです」

ね? と少年に向けて目を配る

???「うん、それは間違いない」

???「そうですか、それはとんだご無礼を」

少女は急にかしこまり、瑞穂に向かって一礼をした

瑞穂「それで、あなたは?」

???「はい、私は、姓は関、名は羽。字は雲長。そこにおられるあなた様をお迎えにあがるために、馳せ参上いたしました」

そこにおられるあなた様
それは、そこにいる少年の事だろう
しかし、そんなことよりも

二人「えっ!?」

???「どうされました?」

二人は同時に驚愕した
今、この少女が名乗った名前
姓が関、名が羽、字は雲長
つまりは、関羽
そう、あの有名な三国志演義に出てくる蜀の武将、美髯公こと、関雲長というのだ

???「え・・・あ・・・、もしかして、その関羽に憧れて自分の名前にしたとか?」

どうやら、少年はかなり混乱しているらしい
まぁ、無理もない
このような体験はおそらく初めてのこと
自分の居た世界に置き換えて言葉を発しているのだろう

???「それに、ここは日本のはずだし。芸名か何か・・・」

関羽「失礼、日本とはなんです?」

確定
ここは日本じゃない
すでにある程度予測していたが、この関羽の発言でそれが確信のものとなった

???「なんだって?」

関羽「あなたがおられた天のことを、そういうのですか?」



この言葉から予想されるは
この少年を神様かなにかの遣いかと認識しているのだろうか
それならば、この少年に対する言葉の物腰の良さの理由となる

瑞穂「関羽さん? 一つ質問してもよろしいですか?」

関羽「それは、かまいませんがあなたの名を教えてはもらえませんか?いつまでも名無しじゃ少々居心地が悪い」

瑞穂「これは失礼しました。私は、雪村瑞穂。おそらくは、この少年と同じ世界から来たと思います」

関羽「なんと、あなた様も天の使いだと?」

瑞穂「天の使いかどうかわかりかねますが。それで、質問なのですが、ここはどこなのでしょう?」

関羽「はい、ここは幽州啄郡。向こうに見える五台山をみていただければわかるかと・・・」

???「ちょっと、意味がわからない・・・どうなってんだ?」

それもそうだろう
少年の今までの言動をみるかぎりどうやら、この少年も瑞穂と同じ世界、或いは同等の世界からやってきたと思われる
ただ関羽のいう「天」からという括りにするならば同じ世界といっても間違いではないだろう
そんな世界の人間に「幽州啄郡」だ「五台山」だと言われてもぱっとこないものだ

関羽「あの・・・」

???「えっ?」

関羽「あなたのお名前をお聞かせくださいますか?」

???「あ、ごめん。俺は北郷一刀。えっと、確か迎えにきてくれたって・・・」

関羽「はい、数日前に管輅という占い師がこの戦乱を治めるために天より遣わされた方が落ちてくると言っていたのです」

瑞穂「その言葉を信じて、この地にくると丁度私たちが居たと?」

関羽「そうです。あなた達以外にそのような者は居ませんし、なにより陽の光を照り返し輝く服、そしてすべての光を吸い込むかのような漆黒の服を着ている。あなた達が天の御遣いであることを示している。そうでありましょう?」

一刀「いや、これはポリエステルだから、光を反射してるだけなんだけど」

瑞穂「北郷くん、ポリエステルといっても、関羽さんにはわからないと思いますよ?」

ほらと、関羽の方をみると頭の上に?マークがいっぱい出てるように見えた

関羽「なにやら、天の言葉は珍妙不可思議ですね」

一刀「いや、だから、俺はその天の御遣いとかじゃ・・・」

???「姉者ーーーーーーー!」

なにやら、ものすごい砂煙と立てながらこちらに向かってくるのがいる

関羽「鈴々、やっと来たな」

???「愛紗は、ひどいのだ。鈴々を置いてけぼりにして」

関羽「何を言っている。鈴々が子犬と遊んでいるから悪いのだろう?」

???「むーっ。ところで、このお兄ちゃん達だれ?」

関羽「鈴々、失礼な言い方をするな。この方達こそ、私たちが探していた天の御遣い様だぞ」

???「お兄ちゃんとお姉ちゃんが天の遣いの人?」

瑞穂「ん、そういうことになってるみたいです」

一刀「いや、俺はそんなんじゃ・・・」

なんか、蚊帳の外状態になっている一刀がぶつぶつ言っているが
瑞穂は気にしないことにした

???「それじゃ、自己紹介。鈴々は、姓は張、名は飛、字は翼徳。真名は鈴々なのだ!」

また出てきた
張飛といえば、やはり蜀の武将。言わずも知れた燕人張飛。その武は瑞穂達の世界でも有名だ

瑞穂「ふむ、人物の性別が違うけど、ここは間違いなく三国志演技の時代に当てはまる世界・・・」

一刀「はぁ・・・受け入れるしかないのか」

どうやら、一刀もこの状況を受け入れる事にしたようだ
しかし、それは賢明な判断
否定、拒否をしたところで事態は好転しない
ならば、肯定した上で状況をつかむしかない

関羽「おお、では、認めてくださるのですね?」

張飛「ありがとう、お兄ちゃん、お姉ちゃん」

一刀「え?」
瑞穂「ん?」

関羽「我等の主となってこの乱世を治めるために戦ってくださるのですね」

張飛「そうなのだ。お兄ちゃん達は鈴々達のご主人様になって弱い人たちを助けるのだ」

瑞穂にとってはこれも予想内
三国志の時代は、戦乱の時代
思考のどこかでこういう事態になることも考えていた

しかし、こっちの少年。
北郷一刀は動揺している

それもそうだ
おそらくは、普通の学生だったであろう彼が
突然、戦ってくれといわれれば動揺だってする
もちろん、そんな覚悟もないだろう

だが、そんなことを言っても、すでに自分たちはこの世界に紛れ込んでしまっているのだ
瑞穂はともかく、一刀の方には覚悟を決めてもらうしかない
そう、生き残るために

瑞穂「北郷くん、覚悟を決めなさい。この世界で生き残るためにはこの子達の力を貸してもらわなきゃ」

一刀「むぅ・・・」

一刀はうなるだけで質問に答えることはない
どうやら、まだ混乱しているのだろう
もしくは、自分なりに必死に現状を理解しようとしているのかも知れない

張飛「よーし、それじゃあ、早速、近くにいる黄巾党を退治しようよ」

関羽「そうだな。近くの県境の谷に居るとのことだし、この辺の街で義勇兵を募るとしよう」

張飛「そうと決まれば、早く行こう、すぐ行こう!」

関羽「そうか、では、鈴々先に行って街の人たちを集めてくれ。私はご主人様達と一緒に行く」

張飛「了解なのだ。じゃあお兄ちゃん達、またね」

そういうとあっという間に張飛はものすごい速さで走っていった

関羽「では、ご主人様。我等も向かいましょう」

一刀「まってくれ、そっちにいる雪村・・・」

瑞穂「雪村瑞穂。瑞穂でいいわよ」

一刀「その、瑞穂さんはともかく、俺の方はまだ理解しきっている訳じゃないんだ。そっちで話を進められても困るんだが」

関羽「困るのですか?」

一刀「いや、それすらもわからないと言ったところだな」

関羽「なぜでしょう、あなたは天の御遣い様ではないのでしょうか?」

一刀「その天の御遣いがどういう事なのか俺にはさっぱりわからない。俺はただの学生だし・・・」

関羽「学生・・・」

一刀「そんなやつが乱世を治めるだって?弱い人間を助ける? 今の状況を把握できていない人間にそんなことを急に言われてもできると思う?」

関羽「それは、ご主人様が天から降りてきたばかりでこの世の事をまだ分かっていないということですか?」

一刀「有り体に言えばそんな感じだけど。早い話が俺がなんでここに居るのか、それが分かっていないんだよ」

瑞穂「北郷くん、その話は私が・・・」

一刀「一刀でいいよ」

瑞穂「なぜ、私たちがこの世界に来たのかは私も分からない。一刀くんも薄々感づいているかも知れないけど、ここは私たちの世界にある三国志演義に出てくる物語に酷似している。そうねぇ私たちの世界から大体1800年ほど昔の大陸」

一刀「やっぱりか。だけど、俺の知っている三国志演義とはかなり違うんだけど」

瑞穂「そうね。一刀くんと私の知っている三国志演義にでてくる人物、関羽と張飛だけどそれはすべて男性になっているわね。でも、目の前に居る関羽。そして、先ほどの張飛。考えられるのは、平行世界の昔に来てしまったことになるわね?」

一刀「平行世界?」

瑞穂「パラレルワールドと言った方がわかるかしら?」

一刀「ああ。でも、どうしてそんなことに」

瑞穂「それが分かれば苦労はしないわ」

関羽「あの・・・それでは、あなた様方は天の御遣いではないのでしょうか?」

一刀「たぶん。俺は日本に住んでいた、ただの学生」

関羽「そうですか・・・」

関羽は悲しい顔をして俯いてしまう

関羽「私は戦乱に苦しむ人々を救いたいがため、鈴々とともに郷里を離れ、この乱世を鎮める方を探しておりました。そんな中でも戦火は広がり力の持たない者達が次々と死んでいきました。そんな中、管輅と出会い、お告げを聞き、ようやく戦火に苦しむ人々を救えるを思っておりました。ですが、あなた様が天の御遣いではないとおっしゃるならば私はどうすればいいのか。戦火に苦しむ人々はどうなるのかと思うと私は・・・」

そこまでいうと関羽は涙をこぼす
そんな姿をみた一刀はようやく決心を固めたようだ

一刀「なぁ、その、天の御遣いってやつ。大義名分にはなるんだろ?」

瑞穂「そうね、私と一刀くんはこの世界に突然現れた存在。一刀くんの言うとおり天の御遣いじゃないとしても天の御遣いとして大義名分としては十分のはず」

関羽「はい!勿論です。戦乱に苦しむ者達は自分たちを救ってくれる英雄を欲しています。地に降り立った英雄を彼らは歓迎してくれるでしょう」

瑞穂「それならば、義勇兵も集まりやすくなるわね」

関羽「ええ。ですが、あなた様達は天の御遣いではないのでしょう?」

瑞穂「そうはいっても、このまま放っておくほど薄情ではないわよ」

一刀「ああ、それにこっちにはそれなりの知識もあるし」

関羽「知識ですか?」

一刀「爺ちゃん家で読んだ本の中に兵法に関する本もあったし」

瑞穂「へぇ、一刀くん、兵法の知識あるんだ」

一刀「少しだけどね。それに辛そうな顔をしている女の子を放っておけないからね」

関羽「! 私は女の子となどとそのようなものではありません!」

瑞穂「落ち着きなさい、関羽さん。これは一刀くんの本心だろうし。その辺の気遣いはありがたく受け取っておきなさいな」

関羽「しかし・・・」

瑞穂「それから、これからは天の御遣いって言う役は一刀くんがやりなさい」

一刀「ええっ!? 俺だけ?」

瑞穂「そうよ、この場合、天の御遣いは一人の方が良い。二人いるとその存在価値が霞んでしまう」

一刀「俺よりも瑞穂さんの方が良いんじゃないか?俺よりも強いし」

瑞穂「いいえ、あなたの方が適任。天の御遣いとして祭り上げるならば、武としての強さは必要ないし。私はそのあなたを守護するものに徹した方がいろいろと都合が良いのよ」

一刀「そうなのか。なら、関羽」

関羽「はい」

一刀「その天の御遣いってやつ、やらさせてもらうよ。その上で、関羽や張飛が俺を天の遣いにはふさわしくないと思ったら捨ててくれてかまわないよ」

関羽「あなた様はそれでよいのですか?」

一刀「うん。俺もいろいろと考えてるから問題はないよ。俺と瑞穂さん。それに関羽達の利益不利益、ちゃんと考えて決めたことだし。それに、女の子の泣いた顔や辛そうな顔を見るなんて良いものじゃないしな」

瑞穂「あらあら、随分と男らしい言葉が出てきたわね」

一刀「っ、からかわないでくれ。本当にそう思ってるんだから。・・・なぁ、どうだろう?俺のこと認めてくれるかな?」

関羽「・・・」

関羽は無言で一刀に深々と頭を下げた

一刀「えっ?ちょっと?」

関羽「やはり、私の目に間違いはなかった。今までのあなた様の言葉をきき、あなた様が天の御遣いという思いは確信へと変わりました。天の御遣いであるあなた様を主として、我等とともにこの乱世を治めましょう」

一刀「主って・・・」

関羽「はい、私はあなた様を自らの主としてふさわしいと認めました。それは我が義妹、鈴々も同じでしょう。今後は、我等の事は真名で呼び、家臣として扱いください」

一刀「家臣って、そんな大げさな」

関羽「大げさではありません。先ほども申し上げましたが、我が名は関羽、字は雲長。真名は愛紗。これからは、どうぞ愛紗とおよびください。私はあなた様をご主人様、そうお呼びいたします」

瑞穂「それじゃ、私も一刀くんのことをご主人様と呼ぶことにしましょう」

一刀「ええっ!?」

関羽「ならば、瑞穂殿も私を愛紗とお呼びください」

瑞穂「いいの?真名って確か、例え知っていても家族とか信頼している人とかにかしか呼ぶことを許さない名前だったはずだけど・・・」

関羽「かまいません。瑞穂殿もご主人様と同じく天からやってこられたお方。そして、我等と同じく我等がご主人様を御守りになる方。志を同じくする仲間同士なのですから」

瑞穂「そう、じゃあ、これからよろしくね。愛紗ちゃん」

関羽「はい! それでは、ご主人様、鈴々を追いかけましょう。黄巾党を倒すために鈴々が街の人たちに声をかけて義勇兵を募っているはずです」

一刀と瑞穂。そして、関羽こと愛紗はこの先の街に向かうこととなった

未だ一刀は状況を理解しきれずまま。しかし、この世界で生き延びるため
そして、瑞穂は元の世界に戻るための術を見つけるために
関羽こと愛紗と呼ばれた少女に頼ることになった二人

この世界にとってはおそらくはイレギュラーな二人
この二人の存在がこの世界にとってどのような影響を及ぼすのか
それは、誰にも分からない
例え、神であったとしても・・・

To be continued...