瑞穂「ん〜、でも何か忘れてるわねぇ・・・」
確か、誰かにあっておきたかったような・・・
・・・・・
あっ!
瑞穂「そうだ、麗子の所に行くんだった!!」
川澄さんの停学の一件で麗子に聞きたいことがあったんだった
Wind Of Alchemist
〜錬金術師の風〜 食い逃げ天使
バンッ!
麗子「な、何ですか先輩、そんなに慌てて・・・」
瑞穂「何もかにも無いわよ。あなた、川澄さんの停学認めたの?」
麗子「はい?」
瑞穂「だから、あなたは川澄さんの停学を認めたのかって聞いてんのよ!」
麗子「ちょっ、ちょっと先輩、落ち着いてください。川澄さん? 停学??」
瑞穂「え? 何、あなたもしかして知らないの?」
麗子「ええ、初耳ですよ?」
瑞穂「いったいどう言うこと?」
麗子の様子からだと、本当に知らなかったらしい
でも、学園長である麗子が知らないと言うことは何かあるわね
麗子「先輩、詳しく話してもらえますか?」
瑞穂「そうね。――――
これまで、私が得た情報を麗子に提供した
魔物の魔力波動と川澄さんの魔力波動が同じだと言うことを除いて
麗子「先輩、一つ言っておきますが、私が川澄さんの停学を認めたことはありません」
瑞穂「どうやら、そうみたいね。じゃあ、麗子を通さないで生徒を停学にすることなんて出来るの?」
麗子「・・・・出来ます。この学園では、ある意味教師より生徒会がかなりの権限を持っています。停学に限っては生徒会が生徒会全員の一致と担当クラス教師の決があれば私を通さずともすることが出来ます。生徒自身の自治を促すために作った権限ですが、このようなことになるなんて・・・」
瑞穂「でも、おかしくない? 生徒会全員と担当教師の決が得られないと出来ないんでしょ? いくら何でもそれは難しいんじゃない?」
麗子「おそらくは久瀬くんでしょう。久瀬くんの家は有名なハンターの一族で生徒会のほとんどと担当教師は久瀬くんの息がかかっていると見て間違いないでしょうね」
瑞穂「ふ〜ん・・・で、それをあなたは見過ごしているというの?」
麗子「久瀬くんがこの学園をよくしたいと考えているのは嘘ではありません」
瑞穂「・・・・」
麗子「そのため、多少のことは目をつぶってきましたが今回はやり方が少々過激ですね」
瑞穂「・・・そうね、久瀬くんのためにもここは指導すべきかしら?」
麗子「指導するのはかまいませんが気をつけてくださいね?」
瑞穂「なにが?」
麗子「久瀬くんに非を認めさせるのは非常に難しいです。プライドが高いというのでしょうか、自分がこうだと決めたらよほどのことがない限り曲げません。障害があれば徹底的に排除しますし」
瑞穂「なるほど。でも、心配無用よ」
ふふっと、笑ってみせる
麗子「・・・そう、そうですね。先輩なら大丈夫ですね」
瑞穂「ええ。じゃあ、これで失礼するわ。悪かったわね、突然来て・・・」
麗子「いえ。先輩なら大歓迎ですよ」
瑞穂「ありがと。そろそろ帰るわね」
麗子「はい、ではまた」
瑞穂「さてと、帰り際にギルドにも寄ってみようかしら?」
帰り道、街をぶらついてそんなことを言っていると
瑞穂「あれ? 祐くん・・・・と誰かしら?」
祐くんが少々背の低い女の子とこっちに向かって走ってくる
あ、でも祐くんこっち見てない・・・
このままだとぶつかるわねぇ・・・
ドン!
祐一「うわっ!?」
「うぐっ!?」
私は身構えていたので何ともなかったがどうやら後ろを見ていた祐くん達は私にぶつかったまま尻餅をついた
瑞穂「だめよ祐くん、前を見て走らないと」
祐一「あ、あれ? 師匠、すいません」
「祐一くん、それより早く逃げないと・・・・」
はて、だれかしら? この子
「よ〜し、捕まえたぞ、この食い逃げめ」
「うぐぅ〜!」
先ほどの女の子がエプロンを着けた中年の男の人に捕まっていた
瑞穂「すいません、この子がどうかしたのですか?」
男「ん? この子の知り合いかね?」
瑞穂「ええ、妹です」
とっさに助け船を出す
祐一「師匠?」
男「そうかい、じゃあ、たい焼きの料金を払ってもらいたいんだが・・・」
瑞穂「へっ?」
男「妹さんが、たい焼き注文したのはいいんだけどね、そのままお金払わずに走って逃げちゃったんだよ」
瑞穂「そうでしたか。それは大変失礼しました。で、料金は・・・」
男「そうだな・・・今日は、あんたに免じてそのたい焼きは妹さんにあげるよ」
瑞穂「いいんですか?」
男「別に悪気はないみたいだしな。でも、次はちゃんと払ってくれよ? 嬢ちゃん」
それまで不安そうに私の後ろで様子をうかがっていた女の子が顔をひょこっと出し、嬉しそうに『うん』と言った
「あ、あの、ありがとうございました!」
瑞穂「別にいいわよ♪ さて、まずはあなたのお名前を教えてもらえるかしら?」
「あ、えっとボクの名前は月宮あゆです」
珍しい子ね、自分のことをボクなんて
瑞穂「私は瑞穂、雪村瑞穂よ。よろしくね」
あゆ「あの・・・聞かないんですか?」
瑞穂「何を?」
あゆ「どうして、逃げてたのか・・・」
瑞穂「さっきの人も言ってたじゃない。たい焼きを注文したのにお金を払わなかったって。だったら、あゆちゃんがたい焼きを頼んだのはいいけど、財布がなくてそのまま走って逃げたって察しが付くわよ」
あゆ「・・・・」
祐一「全く、なんでこう2度も逃げなくちゃならないんだ」
瑞穂「2度?」
祐一「ええ、俺がこの街に来てすぐにあゆと出会ったんですけど、そのときも食い逃げの途中だったんですよ」
瑞穂「・・・・」
あゆ「でもっ! あとでお金はちゃんと払うつもりで・・・」
あゆちゃんが必死に弁解するが語尾が小さくなってしまっていた
瑞穂「まぁ、それならいいでしょ」
あゆ「そうだ!」
あゆちゃんが、持っていた袋の中からたい焼きを取りだし私と祐くんに渡してくれた
あゆ「たい焼きは焼きたてが一番美味しいんだよ」
瑞穂「ふふ・・・そうね。じゃあ頂きますね」
ぱくっとたい焼きにかぶりつく
その様子を見てから二人もたい焼きを食べ出す
あゆ「あの、瑞穂さんって祐一くんとは・・・」
瑞穂「祐くんはね、私の弟子よ。錬金術の」
あゆ「レンキンジュツ?」
瑞穂「そうねぇ・・・」
私はポケットから鉛筆を取り出す
バチチチ
鉛筆の芯の炭素を変換して小さなダイヤを作り出す
あゆ「わあっ・・・」
瑞穂「これが錬金術。詳しく言うと難しくなっちゃうから省くけどね」
あゆ「祐一くんもこれ出来るの?」
祐一「まあな」
あゆ「へぇ〜」
感心したように祐くんを見るあゆちゃん
瑞穂「で、祐くんはあゆちゃんとどういう関係なの?」
祐一「昨日、この場所で会ったんですよ。さっきも言いましたけどそのときも追いかけられてました」
あゆ「うぐぅ・・・」
祐一「あゆは、昔にこの町で俺に会ったことがあるって言うんですけどなにせ師匠と会う前の記憶がないもので」
瑞穂「そう・・・」
祐くんは部分的な記憶が無い
そう聞かされたのは祐くんが私に預けられたとき両親である相沢隆行さん、夏美さんから聞かされた
以前に祐くんの力が暴走したことがあったそうだ
それを沈めるために、夏美さんが祐くんの力を封印したそうなのだが
その影響として、その時点からの記憶も一緒に封印されてしまった
夏美さんは何らかの外的要因によって或いは祐くんが強く望むことによって記憶は回復するとは言っていたけど
祐一「師匠?」
瑞穂「ん? 何?」
祐一「師匠はどうして、こんなところにいたんです?」
瑞穂「ああ、私は、ギルドに寄ろうかと思ってね」
祐一「じゃあ、俺もついて行きますよ。どんなところか興味ありますし」
あゆ「じゃあ、私はもう帰るね」
瑞穂「そう。じゃあ、気をつけて帰るのよ?」
あゆ「うん!」
トテテテテ・・・・
ズルッ ガンッ!
あゆ「う、うぐぅ・・・」
瑞穂「大丈夫かしら・・・」
瑞穂「こんにちは」
アルフ「あ、瑞穂さん。何かご用ですか?」
瑞穂「ええ、この間請け負った仕事の清算をしにね」
アルフ「そうでしたか。では、こちらに仕事の結果をお書きください」
すっと、紙とペンを渡される
私はこの間の出来事を詳細に記述する
瑞穂「っと、はい、これでいいかしら?」
アルフ「はい、結構です」
祐一「あの、師匠?」
瑞穂「ん?」
祐くんがなにか不安げというか、緊張したというか微妙な顔つきでこちらを見ていた
瑞穂「祐くんはギルドは初めてだっけ?」
祐一「あ、はい」
アルフ「そうでしたか。では、私が説明しましょう。ギルドという所はハンター達の仕事或いは情報を処理するところです。また、その仕事に必要な物資も扱っています。仕事の委託、請負、清算もここで行います。まぁ、ハンターにとって無くてはならない場所ですね。また、ギルドは世界中のギルドと情報網でつながっていますので仕事の清算は
請け負った場所で行う必要はありません。」
祐一「・・・つまり、ハンターが仕事をするにはギルドにこなきゃならないと言うことか?」
アルフ「はい、そんな風に解釈してもらっても結構です」
瑞穂「あと、ハンター登録をお願いできるかしら?」
アルフ「はい、ではこちらに」
すっと、登録用紙を差し出す
瑞穂「はい、どうも」
さてと、まずは・・・
祐一「え? 名雪をハンター登録するんですか?」
瑞穂「ええ、あとはね、美坂さんに倉田さん、それと川澄さんっと」
祐一「そ、その3人もですか・・・」
瑞穂「ハンター訓練をするには実践が一番だからね。・・・・はい、これでいいかしら?」
アルフ「では、確認を。氏名『水瀬名雪』、『美坂香里』両名はランクD、『倉田佐由理』、『川澄舞』の両名はランクC。所属、華音ハンター学園。指揮者『雪村瑞穂』ランクSでよろしいですか?」
瑞穂「ええ、大丈夫よ」
アルフ「あ、それと相沢さん?」
祐一「え、はい」
アルフ「ハンター証が発行されましたのでお渡ししますね」
祐一「ハンター証?」
瑞穂「ハンター証っていうは身分を証明するカードのことよ。ランクによって出来ることは様々だけど、とりあえずは公的機関にはこのカードを使えば無条件で出入りすることが出来るわね。でも、情報を引き出すためにはランクごとに制限があるから注意が必要ね。ちなみにランクSだとほぼ全ての情報を引き出すことが出来るわね」
祐一「ランクを上げるためには?」
瑞穂「仕事の数をこなすとか、ランク昇格の昇格検定を受けるとかあるけど、実力を着けつつランクを上げるなら仕事の数をこなすことね」
祐一「へぇ〜」
瑞穂「で、アルフさん。現在、受け付けている仕事あるかしら?」
アルフ「そうですねぇ・・・現在はありませんね」
瑞穂「そう、じゃそろそろおいとまするわね」
アルフ「はい、お待ちしておりますよ」
家に帰り、夕食を取った後祐くんが学校へ出かける準備をしていた
もちろん、川澄さんの様子を見るためだ
瑞穂「じゃ、頑張ってね」
祐一「はい」
瑞穂「川澄さんの力になってあげてね。あの子、苦しんでいるはずだから」
祐一「わかりました。じゃ、行ってきます」
瑞穂「うん」
弟子の姿を見送る
さてと、私も行くとしましょうか
あの子とお話ししなくちゃいけないからね
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