翌日、学校に着くと香里さんに会いに行った
瑞穂「昨日、練金学室にいたけどどうかしたの?」
香里「いえ、別に・・・」
瑞穂「・・・賢者の石なんて何に使うのかしら?」
香里「!」
一瞬、驚いた表情を見せるがすぐに元のクールな表情に戻る
香里「私は、ただ錬金術の勉強をしていただけです。そろそろ時間なので失礼します」
そういうと、香里さんはすたすたと去っていった
瑞穂「ふ〜、一筋縄ではいかないわね・・・っとそうだわ、今日は・・・」
Wind Of Alchemist
〜錬金術師の風〜 招かれざる者
今日は、舞踏会当日
学校自体は、午前中で終了し、午後は準備
舞踏会は夜行われる
朝から祐くんは落ち着かない様子だったけれど・・・
時間はあっという間に過ぎて
夜になった
私は、麗子の許可を受けて「監視役」という名目で参加できることになった
祐一「し、師匠・・・」
すでに準備ができて舞踏会場の位置口付近にいる私に祐くんがおそるおそる顔を覗かせる
祐くんの姿は午前中、学校にいるときに倉田さんから借りたタキシードを身につけていた
瑞穂「あら、様になってるじゃない」
祐一「そ、そうですか? 普段着慣れない物を着るとどうも、居心地が悪いですね」
瑞穂「そのうち慣れるわよ。さ、そろそろ時間ね。行くわよ、祐くん」
祐一「は、はい」
瑞穂「えっと・・・」
会場に入りぐるっと見渡すとタキシードを着た男子生徒、色とりどりのドレスを着た女子生徒がゆっくりと行き交っていた
その中で、あれこれといろいろと指示して忙しそうにしている久瀬くんの姿を見た
瑞穂「なるほど、学校をよくしたいと考えているのは本当のようね」
祐一「師匠・・・」
瑞穂「祐くん、ここで師匠はないでしょう?」
祐一「あ・・・それじゃ、雪村先生」
瑞穂「ん〜、どうせなら名前で呼んで欲しかったけど・・・まぁ、いいわ。で、なにかしら」
祐一「のど乾きませんか?」
瑞穂「あら、緊張してるの?」
よく見ると、祐くんの動きがぎこちない感じだった
祐一「しますよ。大体、舞踏会なんて初めてなんですから」
瑞穂「ま、無理もないか。じゃ、あそこで何か飲みましょうか」
様々な料理が置いてある所に行き祐くんがグラスをとると、一人の女性が近づいてきて飲み物を注いだ
祐一「あ、悪いね」
一息に、グラスの中を飲み干すと祐くんはだいぶ落ち着いたようだ
祐一「君、連れの人とかはいないの?」
舞「・・・連れは祐一、あなた」
祐一「えっ?」
わざとらしく、驚いたそぶりを見せる祐くん
もしかして初めから知ってたわね?
祐一「いや、あんまりドレスが似合ってるから最初は分からなかったよ」
・・・疑わしいわね
瑞穂「さて、私はお邪魔のようね。向こうに行ってるから後は任せたわよ」
祐一「あ、し・・・じゃなかった。雪村先生!」
瑞穂「じゃあね〜」
慌てる祐くんを置いて見慣れた人のいるところに向かった
麗子「あ、先輩☆」
瑞穂「こんばんは、麗子ちゃん」
端から見ればすごい会話だと自分でも思う
自分は突然とはいえ一教師、片やハンター学園の学園長
ふつうは、こんな砕けた会話はしない
瑞穂「無理言ってごめんなさいね」
麗子「いいんですよ。私も、久しぶりに先輩のドレス姿見たかったですし」
瑞穂「見たかったってあなたね・・・」
たま〜に、麗子ちゃんは思わせぶりな発言をする
私は、その気は全くないのに
瑞穂「さて、今晩は無事に済むといいのだけれどね」
麗子「そうですね・・・」
しばらく、二人で生徒の舞う姿を眺める
と、そこに祐くんと川澄さんの姿があった
瑞穂「あら、祐くんダンスなんていつ覚えたのかしら」
麗子「というより、周りのまねをしているようですね。微妙にテンポがずれていますから」
瑞穂「まぁ、初めてにしては上出来ね。二人とも」
麗子「ええ・・・」
ドクン!
瑞穂「!」
急に動悸が走り、胸に手を当てる
麗子「先輩?」
瑞穂「まさか、来る?」
麗子「えっ・・・」
ガシャン!
唐突にテーブルからグラスが落ちた
それを、祐くんと川澄さんは凝視していた
舞「・・・来る!」
刹那、舞踏会場だった講堂の窓がけたたましい音をあげて割れた
運悪くその下には数名の生徒がいた
瑞穂「契約に基づき、時の神クロノスよ、しばしこの時間(とき)を凍らせよ!タイムフリーズ!!」
キィン
私の足下に魔法陣が出現し時を止める
時を止める魔法
今の私だと5秒が限界といったところね
急いで、ガラスの破片が降り注ごうとされている生徒を救出する
ちょうど、安全なところに移動した瞬間に魔法が解かれた
瑞穂「ふ〜、間一髪・・・」
なんとか、生徒を助けられてほっとした私に麗子ちゃんが近づいてきた
麗子「せ、先輩、いったい何を・・・」
驚くのも無理はない。さっきまで一緒にいたのに気づいたら生徒数名を助けていたのだから
瑞穂「そんなことは後よ、それより早くここからみんなを避難させて、私は原因を調べるから」
麗子「分かりました!」
麗子ちゃんは舞踏会を主催していた生徒会と一緒に生徒の誘導をはじめた
私はとりあえず祐くんと川澄さんの所へ向かった
瑞穂「大丈夫?二人とも」
祐一「ええ、なんとか・・・」
コクっと首を縦に振る川澄さん
しかし、一緒にいるべき人がいなかった
瑞穂「倉田さんは?」
祐一「さっきお手洗いに行くって言ってましたけど・・・」
カチャ
金属音がし、その方向を見ると、川澄さんが剣を取り出そうとしていた
瑞穂「待ちなさい、今ここで剣を振るうのはまずいわ」
祐一「そうだ、とりあえず佐祐理さんを探して・・・」
舞「今、佐祐理を探さない方がいい」
祐一「え、どうし────」
祐くんがしゃべり終わる前に人影が目の前を通り過ぎていった
まるで何かに放り投げられたように・・・
ガタッ!
その人影は講堂の中央に打ち付けられ転がった
その姿は紛れもない倉田さんの姿だった
瑞穂「倉田さん!」
祐一「佐祐理さん!」
私と祐くんが急いで近づく
祐くんが倉田さんを抱きかかえ何度も名前を呼ぶが返事をしない
瑞穂「意識がないわね・・・」
倉田さんの怪我の状況を調べる
瑞穂「擦過傷、裂傷、打撲、肋に少々ヒビが入ってるわね」
祐一「師匠・・・」
瑞穂「大丈夫よ・・・契約に基づき、大気を流れし風よ、この傷つき体をその大いなる力で癒し賜え・・・ヒールウインド!!」
癒しの風が倉田さんを優しく包み始める
風が傷を撫でるように消してゆく
佐祐理「ううん・・・」
倉田さんは体が回復して意識をわずかながら取り戻したようだった
ガシャン!
大きな音が講堂に響く
音源は・・・川澄さんだった
いや、川澄さんとおそらくまいちゃんであろう・・・
佐祐理「舞・・・」
瑞穂「大丈夫よ、川澄さんは私が何とかするから」
佐祐理「はい・・・おねが・・・いしま・・・す・・・」
今度はどうやら眠りについたようだった
瑞穂「麗子ちゃん!」
麗子「! はい!」
生徒の誘導をしていた麗子ちゃんを呼び寄せる
瑞穂「悪いけど、倉田さんお願い」
麗子「はい!」
私は倉田さんを麗子ちゃんに預け川澄さんのもとに向かった
川澄さんは倉田さんを傷つけられたせいで完全に理性が飛んでいた
この場にあるものすべてを切り裂くように川澄さんは剣を振るっていた
徐々に破壊されていく講堂
それは、魔物化したまいちゃんだったり、それに応戦する川澄さんだったりする
しかし、まいちゃんの方は姿が見えないため、他人からは川澄さんが一人で暴れているように見えるだろう
そんな川澄さんを祐くんは必死になって止めようとしていた
祐一「舞、止めるんだ! ここじゃ・・・」
だけど、川澄さんが止まることはなかった
まいちゃん・・・どうして・・・
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