昼と夜で校舎の雰囲気が違う
昼は多くの生徒が生み出す柔らかい雰囲気
夜は建物自体が醸し出す張りつめた刺すような雰囲気
今は、その張りつめた雰囲気なんだけど・・・
今日は特に強い雰囲気
瑞穂「もう、祐くんと川澄さんが始めてるわね」
急いでまいちゃんを探さなきゃ
Wind Of Alchemist
〜錬金術師の風〜 二人の救出
瑞穂「すぅ・・・・」
ゆっくりと息を吸い込む
体の感覚が次第に鋭くなっていく
この校舎にいる全ての者の気配を感じ取ろうとする
目を閉じているが、私の感覚が校舎を隅から隅まで調べ尽くす
瑞穂「!」
ある場所に感覚を向けたときまいちゃんの気配を感じた
それは、小さくて・・・小さくて・・・小さすぎて・・・もう、ほとんど無かった
瑞穂「風よ!」
風の魔法を使ってまいちゃんのいる場所へ向かった
祐くんに感づかれる可能性があったけどそんなこと言ってられない
感づかれたにしても今日で最後、なんてことはない
瑞穂「ふぅ・・・最後もここか・・・」
私は、薬品調合室の前にいた
最初にまいちゃんに会ったのもここ
扉を開け、中に入る
そして、いつもの通り水晶を取り出しまいちゃんの姿を具現化させる
現れたまいちゃんはうずくまり、血を滴らせていた
もちろん、まいちゃんは実体ではないのでこの姿はまいちゃん自身がイメージしているものだ
だが、この状態はまいちゃんも川澄さんも危険な状態だった
瑞穂「まいちゃん!大丈夫?」
まい「あ・・・おねぇ・・・ちゃん・・・?」
もう力としての存在力が消えかけているのだろう、話す言葉が途切れ途切れになっていた
瑞穂「・・・まいちゃん、答えて」
私は、うずくまっているまいちゃんに問う
瑞穂「まいちゃんは、祐くんのことが好き?」
まい「・・・うん」
瑞穂「じゃあ、川澄さんのことは?」
まい「・・・すき」
瑞穂「このまま、私と遊べなくなってもいい?」
まい「・・・いや・・・いやだよぉ・・・ゆういちと・・・まいと・・・おねえちゃんと、あえ・・なく・・なるのいやだ・・・」
これが、川澄さんの本心だろう。
川澄さん自信も自分の身をことを知っているんだろう
まい「わたし・・・まだ・・・きえたくないよぉ・・・」
ボロボロと涙をこぼし始める
瑞穂「うん、それがまいちゃんから聞きたかった。大丈夫よ、私が助けてあげるから・・・」
消えたくない、その意志が無いとこれから私がやることの効果がない
まいちゃんの姿を見て、私は『大丈夫、これなら助けられる』と思った
瑞穂「まいちゃん、放出してる魔力を出来るだけ収束して? 出来る?」
まい「うん・・・」
ほんの少し、まいちゃんの姿が実体化する
まい「ごめんなさい・・・これ以上は・・・」
瑞穂「うん、大丈夫だよ。じゃあ、あとは私に任せて・・・」
魔力固定水晶を取り出す
それを両手に挟み、ゆっくりと魔力を纏わせる
両手を徐々に離していくと、水晶が宙に浮いた状態になる
瑞穂「まいちゃん、この水晶に手を添えてくれる?」
まいちゃんの小さな手が水晶を包み込むように添えられる
瑞穂「うん、そのままじっとしててね」
まい「うん・・・」
瑞穂「すぅ・・・」
深く息を吸い込み、人差し指と中指をまいちゃんの前に突き出す
瑞穂「火よ、水よ、地よ、風よ、雷よ、氷よ、光よ、闇よ・・・」
円を描いた中に、順に精霊属性のシンボルを描く
瑞穂「雪村瑞穂の名において、精霊神に懇願する。かの者に今一度、生命の息吹と姿を与えた給え!!」
詠唱が終わると同時に目の前の水晶が光り輝き始める
部屋の中が凄まじい光で溢れ、そして、何も見えなくなる
バキン!
光の中から何かが割れる音が聞こえる
と同時に、急速に光が収まる
そこには・・・
瑞穂「・・・まいちゃん?」
完全に実体化したまいちゃんの姿があった
瑞穂「大丈夫? もう何ともない?」
まい「あれ・・・わたし・・・」
瑞穂「うん、大丈夫みたいね・・・」
まいちゃんの頭をなぜる
まい「あれ? おねえちゃん、わたしのことさわれるの?」
瑞穂「うん、今のでまいちゃんを実体化させたから触れるし、普通の人にも見えるようになったよ」
まい「じゃあ、もう舞にはもどれないの?」
瑞穂「ううん、戻れるよ。ただ、出入りが自由になったの。川澄さんとまいちゃんが望めば一つになれるよ」
まい「そっか・・・んんっ!?」
まいちゃんが突然、胸を押さえ膝をつく
瑞穂「どうしたの? まいちゃん!」
まい「舞が・・・舞の力が・・・消える・・・」
瑞穂「!」
どうして? まいちゃんの力は戻したはず・・・
まさか、力の連鎖が切れかけている?
まいちゃんが川澄さんの力の変化を感じているから
完全に切れているとは考えられないが
どういう理由にせよ、これはまずい
このままだと、川澄さんだけが死ぬ
瑞穂「まいちゃん、川澄さんの位置が分かる?」
まい「うん、分かる」
瑞穂「案内して!」
薬品調合室を飛び出し、まいちゃんの指示通り
たどっていくと・・・
瑞穂「祐くん!」
廊下の奥で川澄さんを後ろから支えて座っている祐くんを見つけた
祐一「し、師匠・・・舞が・・・自分で・・・」
祐くんに言われて川澄さんを見ると
床が赤く濡れていた
瑞穂「川澄さん!」
急いで駆け寄る
傷は腹部の刺傷
近くに川澄さんの持っていた剣が転がっている
祐くんが『自分で』と言っていたことから
自分で剣を突き立てたのだろう・・・
息はほとんど無く非常に危険な状態だった
瑞穂「祐くん、そのまま支えててね・・・・契約に基づき、大気を流れし風よ、この傷つき体をその大いなる力で癒し賜え、ヒールウインド!」
癒しの風が川澄さんの傷を癒していく
瑞穂「よし、止血は完了。でも、意識が戻りそうもないわね・・・」
川澄さんから魔力反応が全くない
力が枯渇しているのだろう
どうにかして、川澄さんに力を補充しなければ・・・
まい「それは、わたしがやるよ」
廊下の暗闇に隠れていたまいちゃんが現れた
瑞穂「やるって・・・」
まい「わたしが、舞の中にはいって力をたしてあげる」
瑞穂「でも、今の川澄さんに入るとまいちゃんの力が全て引っ張られて戻ってこれなくなるかもしれないのよ?」
まい「でも、わたしにしかできないから・・・」
祐一「いや、俺にも出来る・・・」
瑞穂「俺にもって、どういうこと?」
祐一「何でかは分かりませんが、俺にも出来る気がするんです」
もしかして、祐くんの力が解放されたのかしら・・・
瑞穂「そう、今の祐くんが一緒ならおそらく大丈夫でしょう。でも、危なくなったらすぐに精神を切り離すのよ?」
祐一「はい」
まい「うん、じゃあ、行ってくるね」
ぱあっとまいちゃんが川澄さんの中に消えてゆく
祐一「じゃあ、俺も・・・」
祐くんも川澄さんの額に自分の額を当て川澄さんの意識の中に落ちていった
祐一「死なせないからな・・・」
一言そう残して・・・
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