瑞穂「さてと、色々やることがあるわね」
まずは、麗子にさっきあった騒ぎの報告
次に、関与した生徒の尋問
最後に強制召喚されたヴェリスの居場所の確保
瑞穂「はぁ、ヴェリスには待ってもらうことになるわねぇ…」
Wind Of Alchemist
〜錬金術師の風〜 能力をもたらされし者
色々、考えながら歩いているうちに校長室についた
コンコン……
瑞穂「失礼します。麗子、実はさっき、実技の授業で…」
校長室に入り、机を挟んで麗子に事のあらましを事細かく報告する
麗子「すいません、先輩には色々ご迷惑をお掛けしたみたいで」
瑞穂「ん、それはいいのよ。でも、この後すぐに例の子達に話を聞かないといけないみたいだけど」
麗子「先輩からの話によると、騒ぎを起こした生徒達は美坂栞さんにちょっかいを出していた人みたいですねぇ」
パラパラとなにやら名簿らしき物をめくりながら麗子はそういった
瑞穂「ええ、やりすぎたわね。その子達」
麗子「とりあえずは先輩の尋問後、保護者にも来て頂いて……」
瑞穂「保護者までいらないわ。自分たちがやった責任は自分たちで取ってもらいましょう。正式なハンターになったら誰かに助けてもらうなんて出来ないんだから」
麗子「あいかわらず、手厳しいですね。先輩……」
瑞穂「あら、心外だわ。優しさの裏返しと言って欲しいわね」
麗子「うふふ……」
瑞穂「さて、瀬島美久、田宮吏子とあと、今救護室にいる杉里佳枝。あなた達、なぜあんなことをしたのかしら?」
担当教師を通じて、騒ぎを起こした生徒を指導室に呼び出した
生徒「……」
この指導室に入ってから2人とも、下を向いたまま一言もしゃべろうとしない
瑞穂「ふぅ、黙りか。まぁ、聞かずとも大体分かるわよ。近くにいた美坂栞を驚かそうと異世界から何かを召喚。そのまま、騒ぎの原因を同名になすり付ける」
生徒「……」
瑞穂「いいわよ、別に黙ってても。でもね、あなた達がしたことは、一つ間違えたら大勢の死者を出していたところなのよ。」
美久「────なぜ私たちがやったって事になるんですか? 何か証拠でも?」
瑞穂「魔力の波動。あなた達、一応ハンターの卵なんだから聞いたことあると思うけど、1人1人その波動が違うのよ。指紋や網膜のようにね。それを察知できればどこに誰が居てどんなことをしているか分かるのよ」
生徒「!」
瑞穂「ちなみに、私なら半径100キロぐらいなら魔力の探索、監視が可能よ。まぁ、やる気はしないけど────話を戻すけど、あなた達から話してくれないかしら? そうしてもらえると、こっちも色々やりやすくなるんだけど」
瑞穂のこの発言は単に自慢話ではなく、
2人に対しての威嚇である
吏子「────羨ましかったんです……」
それに屈したように吏子がようやく口を開いた
美久「吏子!」
吏子「もう、止めようよ、美久ちゃん。────栞ちゃんが、復学して一緒に勉強するようになって、いっぱいお話しするようになって、栞ちゃんがすごくいい子だって分かって……」
美久は吏子を制止したが、吏子自身はすでに我慢の限界だったようだ
瑞穂「じゃあ、なんでいじめを?」
美久「あの子、自分の持っている力を使わずに私たちに合わせて、なんか、『あんた達とは違うのよ』って鼻にかけているみたいで、こっちが馬鹿にされてるみたいで」
力って言うのは多分、エルトリムの事ね
────栞ちゃんに能力制限をしたことがこう出ちゃったか
瑞穂「ん〜、あなた達、少し誤解してるようだから言っておくけど、栞さんはあなた達のこと馬鹿になんかしてないわよ。彼女が力を使わないのは私の言いつけを守っているから。彼女の能力はまだ成長段階でね、彼女自身、制御出来ない部分もあるのよ。だから、よほどの緊急事態、或いは私の許可がない限り、彼女は能力を使わないわ」
美久「じゃあ、なんであの子、そのことを!」
瑞穂「言わないのかって? あの子、恐がっているのよ。いい、彼女は長い間、学校に来れなかった。それが、ようやく来れるようになった。今の彼女は、学校に来ることが出来るだけで楽しい、幸福と思っているはずよ。それを、自分の能力が明るみに出ることで壊されるのを恐れているの」
吏子「そんな、自分の能力が知られたぐらいで」
瑞穂「じゃあ、教えるけど、彼女の能力は無属性における全属性の収束及び放出よ。それと、物質の記憶の読み取り。さらには周りの事象変異による反射的超反応。さて、どう思う?」
美久「それって……」
瑞穂「そうね、私が考えるにこの能力が全て自分の意志で扱えるようになれると、S級ハンターとほぼ同等の力を持つ事になるわね そんな素質を持つ子をハンター協会が黙っちゃ居ないわね。能力が暴走して被害が出るのをを防ぐために半ば強制的に特殊訓練施設に送られるわ。言っておくけど、あそこは厳しいなんてもんじゃないわよ。朝から晩まで訓練訓練訓練。私は栞ちゃんがそんな目に遭うのが嫌で、ハンター協会に許可をもらって特別に私と彼女専属の訓練講師で訓練を行っているのよ。もちろん、彼女にはこのことを伝えてあるけど」
美久&吏子「……」
瑞穂「分かったかしら? 力を持つことが必ずしも良いことばかりではないという事よ」
吏子「────そんな、栞ちゃんいつも笑って……そんな素振りなんか一つも……」
瑞穂「そうね、栞さんはとても強い子よ。でもね、それと同時に脆くもある。だからね、あなた達にはこれまでの責任を取って、彼女を支えてあげて欲しいの」
美久「支えるってどうやって……」
瑞穂「友達になってあげることよ。一緒に話したり、遊んだり、勉強したり、喧嘩したり。今まで彼女が出来なかったことをしてあげるの」
美久「そんな、私たちはあの子に酷いことを…」
瑞穂「大丈夫よ、幸い、栞さんはあなた達のことを何とも思っていないわよ。何せ、あなた達を助けるためにヘルタイガーを相手にしてたんだから」
まぁ、リチャードとの訓練がいい結果を出していたけど
吏子「────私たちのやったことが許されるとは思いません。だけど、せめて、栞ちゃんの支えになることが出来るなら……」
瑞穂「うん。あなたはどうする?」
美久「……私は、あの子がそんな重荷を背負っているなんて考えても見なかった。でも、その重荷を私が少しでも軽くしてあげられるのなら……」
瑞穂「それじゃ、2人とも栞さんを支えてくれるのね?」
美久&吏子「はい!」
瑞穂「いい返事ね。あなた達のその意志に免じて今回のことはこれで不問にします。ただし、2度と、彼女を裏切らないように。あ、それから、杉里さんは大丈夫よ。傷口はもう塞がっているから。回復したら、あなた達からこのこと伝えてくれる?」
吏子&美久「はい」
瑞穂「うん、もう帰っていいわよ」
吏子&美久「失礼します」
2人が部屋の出てから、瑞穂はふぅ〜とため息をついた
瑞穂「さて、もうひと頑張りか」
瑞穂「秋子さん、相談があるんですが」
一度、家に帰り、瑞穂は秋子に相談を持ちかけた
秋子「はい、何でしょう?」
夕食の準備をしていた秋子はその手を止め、
瑞穂の方へ向き直った
瑞穂「1人…いえ、一頭、家族が増えそうなんですが…」
秋子「?」
秋子は珍しく、頭の上に?マークが付きそうなほど
不思議な顔をした
瑞穂「実はですね……」
瑞穂は事のあらましを秋子に説明した
秋子「了承……といきたいところですけど、さすがにそんなスペースは家にはありませんね」
瑞穂「ですよね……」
はぁ、とため息つく瑞穂を尻目に秋子はなにやら考えていた
秋子「あそこなら、あの子に頼めば何とか……」
瑞穂「秋子さん?」
秋子「その、ヴェリスという子、他の生徒には危害を加えないんですよね?」
瑞穂「ええ、私が言えば」
秋子「では、その実習場に居てもらってはどうでしょう?」
瑞穂「私はそれでもいいんですけど、何せヴェリスは一度不可抗力とはいえ事件を起こしてますから」
秋子「大丈夫ですよ。学園長の許可が下りれば平気です」
瑞穂「あ〜、麗子なら確かに許可はくれそうですね。でもなぁ…」
瑞穂は、ヴェリスが実習場に留まることによって学園に迷惑がかかることを懸念していた
秋子「背に腹は代えられないでしょう。それに、瑞穂さんの話からすると、今、ヴェリスは体力と魔力のほとんどを消費しています。こっちの世界では回復力も落ちていますから、もう暴走する事はないでしょうね。それに、心配でしたら、一時的に契約を交わしてはどうでしょう? そうすれば、瑞穂さんに絶対服従権が発生しますし、魔力がヴェリスに供給されますから、消滅する事もなくなります」
瑞穂「────それしかないか…」
秋子の提案に瑞穂はしばらく考え込んだが、
他に考えが浮かんでこなかったので
仕方なく、その提案に乗る事にした
瑞穂「稀代のサマナーの見立てだし、そうします」
ハンターの中でも一部の者しか知らない秋子の能力。それは、異世界から様々な存在を呼び出す、召喚者(サマナー)で
クラスは最高位のマスターオブサマナー。
召喚は、通常、魔法陣、詠唱、そして対象との契約によって成り立つ。
召喚するモノによっては多大な魔力と膨大な知識が必要となるため、このクラスになれる者は少ない。
秋子の場合、ハンター協会の記録によると精霊クラスはおろか、神クラスにおいてまで召喚できるとされている
秋子「では、今晩にでも」
瑞穂「お願いしてもいいですか?」
秋子「じゃあ、私が準備をしておきます」
瑞穂「いいんですか?」
秋子「かまいません。瑞穂さんは忙しそうですし。それに私の方が、ハンターとして、一線は退いていますが召喚の道具なんかはまだきちんとそろっていますから」
瑞穂「すみません。じゃあ、私は学園に戻って、麗子に許可をもらってきます」
じゃ、と瑞穂は学園へ戻っていった
秋子「それじゃあ、夕食の準備を早く済ませて、契約の準備をしなきゃいけないわね」
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