瑞穂「うんしょ」
麗子に許可を取ったり契約の諸準備したりで瑞穂は色々と時間がかかっていた
実習場はすでにとっぷりと日が暮れて辺りはほとんど何も見えない
瑞穂「真っ暗じゃまずいわよね〜。────ライト!」
光の球を十数個作って辺りを照らす
そのおかげで、先ほどまでの闇は一切払拭されそこには
まるで昼間のような明るさが広がった
麗子「先輩〜」
瑞穂「あれ? 麗子ちゃんどうしたの?」
実習場に入るための魔法陣から、麗子が現れこっちに向かって走ってきた
麗子「私も付き合わせてもらいます。一応、学園長だし」
瑞穂「ホントは?」
麗子「モチ興味!」
Wind Of Alchemist
〜錬金術師の風〜 異世界からの介入
瑞穂「まったくもう…それにしても、秋子さんはまだ来ていない────ってなにこれ…」
ここに来たときには暗かったので分からなかったが、ライトで照らされると
そこには、大きな魔法陣の中心に数種の道具が置いてあった
秋子「あらあら、遅かったですね」
そして、魔法陣のすぐ傍にそれを作った張本人がこっちを見てニコニコしていた
麗子「あ〜、秋子先輩なら、真っ暗闇でもやりそうですね」
瑞穂「やりそうじゃなくて、やるのよ」
全く持って秋子の行動速度の速さにはいつも瑞穂は驚かされる
瑞穂「あ、そうだ。ヴェリス呼んで説明しないと…」
ヴェリス「その必要はないぞ」
瑞穂「はい?」
ライトの光が届かない暗がりからヴェリスが姿を現した
ヴェリス「先ほど、そこのご婦人から話は聞いた。瑞穂との契約なら私は全く異存はない」
瑞穂「あ、そう」
全て先手を打たれた瑞穂にとってはなんか面白くなかった
秋子「すみません、瑞穂さん。本来なら貴方の方から説明をすべきなんですが、如何せん時間がなかったもので」
瑞穂は秋子にそういわれて改めてヴェリスの方を見る
体の一部分が半透明化しているのが確認できた
瑞穂「体の維持が出来なくなってきている…」
ヴェリスがこの世界に現存するために必要な魔力が切れかかっているせいで
体の維持が出来なくなり、消滅しようとしていた
秋子「では、時間もあまりありませんし、早速始めてしまいましょう」
瑞穂「はい────っとその前に……ライト!」
瑞穂は、何者かの気配を感じ
光の球を一角の暗がりに放り込んだ
「「うわっ」」「「きゃあ」」
複数の驚いた声がその場所から聞こえた
麗子「あらあら…」
瑞穂「これはまた、沢山出てきたわね」
のそのそと、暗がりから出てきたのは
祐一、名雪、香里、栞、潤、佐由理、舞の7人
舞と佐由理の鍛錬の付き合いとして来ていた祐一に
同じ目的で来た美坂姉妹
それらに付いてきた名雪と潤
この7人、秋子が来る前からここにいたらしく
秋子が来たのを見て何事かと隠れて見ていたそうだ
秋子「祐一さん、別に隠れなくてもいいじゃないですか」
祐一「いやぁ、何となく隠れてしまったんですよ。それに、学園長先生まで来てしまったんで…なっ?」
祐一は他の6人に同意を求めると
皆一斉にバツの悪そうな顔して苦笑いを浮かべる(一人を除く)
麗子「別に許可を出さない訳じゃないんですから。一言言ってくれればいつでもここは開放しますよ。まぁ、条件はありますけど」
瑞穂「まぁ、いいわ。それより早くしないとヴェリス消えちゃうわ。あなた達丁度いいから、ついでに見て行きなさい。良い課外授業よ」
「「「は〜い」」」
瑞穂「じゃあ、秋子さん。契約儀式中の魔法陣周辺の外部魔力干渉の遮断をお願いします」
秋子「了承。任せて下さい」
瑞穂「麗子、もしもの時のために過剰魔力増大の逃げ道の確保を」
麗子「了解、先輩」
瑞穂「では、始めます!」
瑞穂はヴェリスと共に魔法陣の中央に立ち
目を瞑り、精神統一を始める
同時に、秋子は魔法陣を中心にドーム型の遮断壁を形成し
麗子はそのドームに六芒星が浮かび上がった両手をむけ、魔力を集中させた状態で維持する
間もなくして、瑞穂の体から淡い緑色の光が放ち始める
ゆっくりと目を開き、ヴェリスに向かって右手をかざす
瑞穂「雪村瑞穂は異世界から呼ばれし者との契約を望む者なり。我と血を交わし、我が力となる事を我は望む。契約の証として我が紋章を我が手に刻もう。最後に問う、我と契約し、我が使い魔となる事を許されるか?」
ヴェリス「異存は何もない、血を交わし、お前の力となるために、お前の使い魔となる事を認めよう」
ヴェリスの応答を確認後、瑞穂は数種ある道具の中から短刀を取り上げ、手首に当て一気に引く
ポタポタと真っ赤な液体が腕を伝って落ちる
それを小さな杯に採る
次にヴェリスの足を少し切り同じように血をその杯に取る
二人の混ざった血を瑞穂は指に付け、手のひらより少し小さい羊皮紙と呼ばれる特殊な紙に瑞穂だけの紋章を描く
書き終わった羊皮紙を瑞穂の手とヴェリスの額の間に挟む
瑞穂「今ここに契約は成立せり。────コントラクト!」
手と額の隙間から、眩いばかりの光が放ち始める
瑞穂「くっ…」
ヴェリス「むぅ…」
光りの放っている場所は思いの外熱かった
少しばかり気を入れなければ、耐えられないくらいに
しばらくすると、光りが収まり始め
契約の儀式も無事に終わるかに見えたのだが
ここに来て、異変が発生した
それに気づいたのは、過剰魔力の逃げ場を確保していた麗子だった
麗子「…おかしい、先輩の儀式はもう終わりかけているのにどこからか、魔力が流入している」
麗子の異変に気づいた秋子は、遮断壁を解除し麗子のサポートに回った
秋子「麗子さん、大丈夫ですか?」
麗子「秋子先輩、何かおかしいです。どこからかは分かりませんが、流入する魔力値が増大していっています」
儀式を終了した瑞穂もこの異変に気づいていた
瑞穂「秋子さんこれは…まさか」
秋子「ええ、間違いありません。これは────」
瑞穂「介入ですね。ちょっと待って下さい、今、探知します」
瑞穂は目に見えない蜘蛛の巣のように微弱な波動を周囲に張り巡らせ反応を見る
すると一点だけ強い反応を見せるポイントを発見する
瑞穂「────ここ! ここが魔力の流入量が一番高い!」
秋子「皆さん、何が介入してくるか分かりません、臨戦態勢で待機して下さい!」
秋子の呼びかけに皆、それぞれに戦闘態勢に入る
瑞穂「流入量の増加から考えて……介入まであと15秒!」
瑞穂のその言葉と同時にある一点の空間が歪みだし渦を巻き出す
瑞穂「3…2…1…、来る!」
空間の歪みが限界に達したときに、一気に渦が逆転し、渦の中心から光りが飛び出してくる
周りにいる全員があまりの眩しさに、目を背けてそれに耐える
そのうち、光りが収まり、皆一斉に光りの正体を見ようと振り返るとそこには
祐一「────これは……」
「「「見ちゃダメ!!」」」
祐一が言葉を言い切る前に周りにいる女の子全員に男二人は目やら体やらを押さえられる
介入者の正体は一糸も纏わない女の子だった
どうやら、意識を失っているようで
地面に倒れぴくりともしない
麗子「先輩、これは…」
瑞穂「う〜ん、介入者でしょうね。でも、なんでこんな女の子が」
二人して頭をかしげていると、秋子がどこからか毛布を取り出し、女の子を包んだ
秋子「どうやら、危険はなさそうですし、このまま放っておくわけにはいきません。祐一さん、すみませんがこの子を家まで運んでくれませんか?」
秋子が毛布に包まれた女の子を祐一に任せる
祐一「えっ? は、はい」
戸惑いながらも祐一は女の子を抱きかかえる
その腕に抱えられ当の本人はスースーと小さく寝息を立てている
秋子「名雪、あなたは先に帰って、この子の着替えと空いてる部屋にお布団の準備をしてくれる?」
名雪「うん、わかったよ〜」
香織「あ、私も手伝うわ」
瑞穂「待って、魔法で飛ばしてあげるわ」
名雪「え゛っ?」
瑞穂の一言に額に名雪は脂汗を浮かべた
脳裏に浮かぶは、先日の生身状態でのマッハ速度の飛行
瑞穂「風よ、彼の者達の体を運ぶ力となれ! トランスポート!!」
「「きゃあぁぁぁぁぁぁああああああ!!」
風に巻かれながら二人は悲鳴を上げて飛んでいった
瑞穂「さてとヴェリス、悪いけどあなたはしばらくここを監視してもらえるかしら? 契約の副産物で遠距離間の意思の疎通が出来るはずだから連絡はそれで」
ヴェリス「了解した」
ヴェリスはそういうと瑞穂に背を向け、ひとっ飛びで暗闇へと消える
麗子「さて、とりあえず、今日はもうみんな帰りなさい、質問は明日、聞きますから」
残っている佐祐理達に麗子が帰るよう促す
特に残っている理由もないので佐祐理達は素直に帰っていった
瑞穂「よし、ここはとりあえず、ヴェリスが見てくれるから私たちも早く、この子を秋子さんの家に連れて行きましょう」
麗子「ええ」
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