瑞穂達が秋子の家に着くと先に瑞穂によって飛ばされていた
名雪と香里が着替えと寝床の準備が出来ていた
祐一は、抱えていた毛布にくるまった女の子を敷かれていた布団に寝かせる
祐一「ふぅ…」
風の魔法で飛んできたとは言え、ヒト一人抱きかかえるのは容易ではない
微妙な重荷から解放された腕は軽い怠さがあった
瑞穂「お疲れ様、祐くん。さっきの説明するから居間に居てくれる?」
祐一「はい、分かりました」
Wind Of Alchemist
〜錬金術師の風〜 狐になっちゃった
瑞穂「さてと、全員集まったようね」
居間には秋子、祐一、名雪、香里、そして瑞穂の5人が集まった
瑞穂「ごめんなさいね、なんか巻き込んだ形になってしまって。とりあえず、今ここにいる人だけでも現在の状況を説明しておこうと思って」
香里「早速ですけど、あの子はいったい何なんですか? 見たところ、私達くらいの年齢の普通の女の子に見えますけど」
秋子「その件については私から。恐らく、あの子は介入者よ」
名雪「介入者?」
秋子「そうよ。祐一さん、『召喚』ってどういう現象か分かるかしら?」
祐一「えっ? あ、『召喚』は確かこちら側、つまり俺たちの住んでいる世界から別の異世界に干渉してその世界に住んでいるモノの力を得る、或いは借りる事でしたっけ?」
瑞穂「うん、ちゃんと勉強しているようで安心したわ」
祐一「ま、まぁね」
瑞穂にほめられて祐一はへへっと照れ隠しに笑う
秋子「今回の現象はその『召喚』の逆」
香里「つまり、向こう側からの干渉という事ですか?」
秋子「そうです。介入には二通りあります。 一つは、空間に偶発的な歪みが生じた際に異世界に干渉するもの。二つ目は、通常は偶発的な空間の歪みを術者が意図的に作り出し異世界に干渉するものです」
瑞穂「前者は歪みの周期が無いぶん自らの意志で介入する事は出来ないけど、その際術者に発生する魔力消費は少ないわ。それに比べて後者は半ば無理矢理な介入だから術者に発生する魔力消費は前者の比じゃない。でも、自らの意志で介入できるのが大きなメリットね」
秋子「 これは『介入』に限らず『召喚』にも言える事なんですが、異世界に入るには『ゲート』と呼ばれる世界間の通り道を通らなければいけません。そしてゲートには大きさがあって、ゲート通過者の内包する魔力に比例してゲートも大きくなくてはいけません。小さいと途中で弾かれて意図した世界とは別の世界に飛ばされるか、最悪消滅してしまいます。前者の場合のゲートの大きさはほぼランダム、後者の場合のゲートの大きさは術者の魔力消費値によって左右されるのである程度ゲートの大きさはコントロールできます」
瑞穂「まぁ、どういう理由かは分からないけど、あの子の場合は意図的な介入であると考えられるわね」
祐一「どうしてです?」
瑞穂「さっきも言ったけど、偶発的な介入ならば、介入後、意識を失うほど衰弱はしないのよ。それにゲートが小さければ内包魔力の高いモノは入る事も出来ないし。つまり、介入後意識を失うという事は、意図的に作り出したゲートを通過中になんらかの原因でゲートの大きさが変化して消費魔力が増大、こちら側に付いたときには魔力はほとんど空っぽというわけ」
祐一「なるほど…」
秋子「今のところ、危険性はありませんし、様子を見る事にします。介入の理由も聞かなければなりませんし、帰還の意志があるなら、手助けも必要でしょう」
名雪「お母さん、魔力が空っぽになるとどうなるの?」
秋子「魔力は生命エネルギーの一種だから、まるっきり空になると、死んでしまう事もあるわね。あの子の場合はほんのわずか魔力が残っていたから何とか持ちこたえる事が出来たのでしょう。今は瑞穂さんが空気中のマナを吸収できるように集魔結界を施してくれましたから回復までそうかからないと思うわ」
名雪「そっか。よかった」
瑞穂「まぁ、今日はもう遅いし、そろそろ休みましょう」
祐一「はい」
香里「じゃあ、私はこれで」
香里が家を出ようと立ち上がると秋子はそれを止めた
秋子「もう遅いですし、泊まっていかれたらいかがですか?」
香里「でも…」
秋子「ご両親の連絡は私がしておきますから、それにハンターの卵とはいえまだまだ、夜道を一人で歩かせるには不安ですから」
香里「…分かりました。では、お言葉に甘えて」
名雪「部屋は私の部屋で良いよね?」
香里「ええ、かまわないわ」
名雪「じゃあ、お母さん、祐一、先生、お休みなさ〜い」
名雪は香里と一緒に階段を上って部屋に入っていった
祐一「じゃあ、俺も」
瑞穂「ええ、お疲れ様」
祐一も自分の部屋に戻る
と同時に瑞穂の緊張がゆるんだのか、体がある要求をする
ぐぅ〜
瑞穂「あ」
秋子「そういえば、瑞穂さん夕食がまだでしたね」
瑞穂「色々忙しくてすっかり忘れてました」
秋子「少し待って下さい。瑞穂さんの分暖めなおしますから」
瑞穂「すみません」
翌朝
その日は気持ちの良いくらいの晴天で
秋子はすでに、一階の台所で朝食の準備をしていた
瑞穂は自分の部屋で昨日ヴェリスに頼んであった監視の状況報告を
名雪と祐一は未だ夢の中にいた
ここまでは、いつもの水瀬家の朝の風景である
しかし、そんなのどかな風景も大きな叫び声で一変する
「えええぇぇぇぇっ!!!」
祐一「な、なんだぁ?」
瑞穂「何事?」
秋子「あらあら」
名雪「すぅすぅ…」
各々、叫び声がした所に集合した
そこは、昨日、あの女の子の部屋だった
瑞穂を皮切りに部屋にはいるとそこには
布団の前で座り込んでいる香里と
一匹の狐がいた
瑞穂「香里さん、これはどういう事?」
香里「さ、さぁ? ちょっとこの子の様子が気になったものだから覗いてみたらこんなことに」
そうこうしていると昨日着ていたであろう服の中で寝ていた狐が目を覚ました
狐「ううん…ここは…」
祐一「しゃ、喋った!?」
狐「あぁ、ゆういち〜」
狐は祐一の姿を見つけると布団から飛び出し、祐一に飛びつく
祐一「おっと」
狐「ゆういち〜ゆういち〜」
祐一に受け止められた狐は顔を祐一の胸にこすりつけて甘えるような仕草をする
瑞穂「…えっと、祐くん。その狐と知り合い?」
祐一「さ、さぁ。もしかしたら記憶が無くなる前に会っているかもしれませんが」
瑞穂「その可能性は高いわね、狐さん名前は?」
狐「真琴っ!」
瑞穂「そう、真琴って言うの。聞きたい事は沢山あるんだけど、とりあえず一つ。どうして、狐の姿になっているの?」
真琴「……わかんない」
秋子「もしかしたら、元体状態なのかもしれません」
香里「元体状態?」
秋子「ええ、幻想界に棲む者に現れる現象なのですが、通常幻想界にいる者は皆、こちらの世界と同じヒトの姿つまり擬人化をしています。しかし何らかの理由で魔力を過剰消費すると自身の命を守るため本能的に消費魔力の少ないそれぞれの体の元となっている状態に戻ってしまうそうなんです」
瑞穂「真琴ちゃん、何か体に変化がない? あったものがないとか」
真琴「あっ、尻尾が一本ない…」
真琴はふよふよと、残された一本の尻尾を動かす
瑞穂「まさか…」
瑞穂は真琴の体を魔力探査(マジックスキャン)した
すると、尻尾の丁度真横の辺りから大量に魔力が真琴から放出されていた
瑞穂「あ〜、これか。どうやら、ゲート通過時に尻尾持ってかれたみたいねぇ」
真琴「あう〜、あたしの尻尾〜」
尻尾が無くなったの知ってすっかり真琴は落ち込んでしまった
秋子「真琴さん、あなたもしかして妖狐族の方ですか?」
真琴「そうだよ」
秋子は真琴が元々尻尾が二本あったと言うのが気になっていた
そして、真琴の口から自分は妖狐族の一員だという事を聞いて顔色が変わる
秋子「これは、大変ですね。妖狐族は尻尾が魔力の生成・貯蓄を行います。ですから、この種族は尻尾が二本以上あるのです。どうやら、真琴さんはまだ妖狐としては日が浅いので尻尾がまだ二本しか無かったようです。その内の一本が失われたと言う事は…」
香里「魔力の生成、或いは貯蓄が出来ない?」
秋子「いいえ、一本でも恐らく生成・貯蓄は出来るでしょう。ただ、一本では間に合わないでしょうね」
祐一「間に合わない?」
瑞穂「擬人化、それに異世界での存在維持には大量の魔力が必要になるのよ。暖かい気候に住んでる人が寒いところにいったら体を維持しようとエネルギーを多量消費するのと同じね」
秋子「普段、瑞穂さんの施してくれた集魔結界の中にいたとしても恐らく間に合わないでしょう。そうですね、私の見立てでは、リミットは2日」
祐一「2日!?」
香里「何とか、救う方法はないんですか?」
瑞穂「あるわ。私とヴェリスがやった事をすればいいのよ」
香里「契約…ですか?」
秋子「ええ、契約を行えば契約者から継続的に魔力の供給が出来ますし、契約者を魔力の貯蓄庫として利用できます。ただ妖狐族との契約には問題があるんです。それは…契約者の限定」
祐一「契約者の限定?」
秋子「そうです。契約には必ずと言っていいほど血の交わしという項目があります。妖狐族の場合、契約者の血に含まれている魔力の波動と一致したものでしか契約できないのです。もし合わなければ、契約した時点で、双方の魔力が反発。何が起きるかは私でも分かりません」
香里「では、真琴ちゃんを救うには2日以内に真琴ちゃんと同じ魔力波動を持った人物を捜さなきゃいけないと?」
秋子「はい。幸い、魔力波動の探索・数値化の出来る瑞穂さんが居ますから、ハンター協会のデータベースを調べてみましょう」
瑞穂「じゃあ、一応学園内も探索してみましょう。みんなが探索できるように私は簡易探索機をホームルームまでに作るから」
秋子「分かりました、私は万が一見つからなかったときのためにこの子を幻想界に送り返せるよう介入の準備をしておきます。ただ、魔力の低下している真琴にゲートをくぐらせるのは非常に危険ですので、なんとしても契約者の捜索に全力を尽くして下さい」
祐一&香里&瑞穂「了解!」
ぎゅるるぅ〜
張りつめた雰囲気の中、お腹の虫が鳴く
真琴「あぅ〜、おなかすいた…」
お腹をすかせた真琴が秋子の足にすり寄ってくる
秋子「あらあら、とりあえず、皆さん、朝ご飯にしましょう」
祐一「はい」
香里「あら? 名雪は?」
瑞穂「あ〜、多分寝てるわね」
秋子「すみません、祐一さん。名雪、起こしてもらえます?」
祐一「分かりました」
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