次の日、なんとかホームルームまでに魔力探査機を作り終えた瑞穂は
ホームルーム終了後、祐一、名雪、香里、栞、舞、佐祐理を呼び出した

瑞穂「これが、魔力探査機ね。真琴ちゃんの魔力波動にあわせてあるから、同じ波動を持つ人に向ければ、中心のジュエルが光るようになっているわ」

香里「これは、錬金術と魔術の応用ですか?」

瑞穂「そうよ。錬魔合術って言ってね。錬金術に魔術的要素をプラスすることによって、錬金術の可能範囲を広げることが出来るのよ。────とこんな話している場合じゃないわね。じゃあ、各クラスの探索お願いね、みんな」

「「「「「「了解!」」」」」」

Wind Of Alchemist 

〜錬金術師の風〜  
捜索と目覚め


瑞穂「さて、じゃあ、報告を祐くんからお願い」

瑞穂以下6人は昼休みにいつもの実習場の広場に集まり
昼食を取りながら、これまでの状況報告を行った

瑞穂「う〜ん、全員ダメか。職員の方も全滅だし。────おかしいわね、居ないはず無いのだけど」

香里「どういう事です?」

瑞穂「えっとね…」

通常、異世界から、召還或いは異世界へ意図的に介入する場合、ゲート形成の際、双方に同調要素(シンクロファクター)が必要となる
つまり、Aという世界からBという世界に召還或いは意図的に介入する場合、両方の世界に同じ波長(シンクロ)を持つ者(ファクター)の間にゲート展開時の場所の誤差があるものの形成される

そんなわけで、この周辺に必ず、真琴の魔力波動と同じ波動を持つ者が居るはずなのである

瑞穂「仕方ない、探索範囲を広げましょう。午後からは街全域の探索に切り替えます」

香里「ちょっ、ちょっと待ってください。今日は午後も授業があるはずですけれど?」

瑞穂「大丈夫よ、麗子に許可は取るし、緊急事態だしね。それに、ハンターは机に向かって講義を受けることが仕事じゃないでしょ?」

香里「分かりました」

瑞穂「うん。じゃあ、香里さんと栞ちゃんと街の南部へ、佐祐理さんと舞さんは北部へ、祐くんは東部。名雪ちゃんは西部をお願い。私はギルドでデータベースの検索をしてみるわ」

栞「でも、祐一さんも、名雪先輩も一人ですけど大丈夫ですか?」

名雪「私は大丈夫だけど、祐一はまだ、この辺よく分からないでしょ?」

祐一「あ〜、まぁなんとかなるだろ」

瑞穂「そうねぇ、自分の持ち場が終了次第、単独行動している祐くん、名雪ちゃんに合流するって事で良いかしら?」

香里「では、私と栞は終了後、相沢くんへ合流します」

佐祐理「じゃあ、私たちは水瀬さんの方へ合流しますね」

瑞穂「分かったわ。各自は目標を発見しても直接交渉はせずに報告すること。いいわね」

佐祐理「探索終了後は学校に集まりますか?」

瑞穂「そうね、その方が良いでしょう。探索終了後は学校に集合。全員集まったら報告後解散。今日の日程はこれでいきましょう」

「「「「「「了解!」」」」」」






















ガチャ

瑞穂「こんにちは〜」

アルフ「おや、瑞穂さん。いらっしゃいませ。今日はどんな用件で?」

瑞穂がギルドに入るといつものようにアルフが受付の所に座っている

瑞穂「この魔力波動を持つ者を調べたいのですが」

瑞穂は、昨夜、真琴の魔力波動を調べた際に作った魔力波動を数値化したメモをアルフに渡す

アルフ「はい、データベースの検索ですね。閲覧レベルがAランクです。ハンター証の提示をお願いします」

瑞穂は首に掛けてあったハンター証をアルフに渡す

アルフ「はい、お預かりします」

カタカタとハンター証に記載されているIDをパソコンに打ち込むと
パソコンの画面に瑞穂のID認証後に膨大なデータが表示されていく

アルフ「地域限定はいたしますか?」

瑞穂「ええ、お願い。地域はこの街一帯」

アルフ「了解しました」

数秒後、パソコンの画面にあるハンターがはじき出された

瑞穂「これが…」

アルフ「ええ、現段階でハンター協会に登録されているハンターで条件に該当する者です」

瑞穂「悪いけど、このハンターの全情報の出力お願いできる?」

アルフ「はい、少々お待ちを」



























祐一「って何で俺はこんな所に居るんだ?」

街の東部の探索が意外に早く終わった祐一は学校へ戻ろうとしていたのだが
気がついたら、小高い丘に立っていた

とりあえず、周りを見渡してみる

祐一「あれ、なんだ? 俺、ここ…知ってる?」

確かに、ここに来たのは初めてのはずなのだが
どうしても、そんな感じがしなかった

しばらく、丘を見回していると不意に後ろに気配を感じる

「こんなところに何のご用ですか?」

祐一「だ、誰だ!」

後ろを振り返る間もなく飛び退き、距離を取る

「そんなに怖い顔しないでください、なにも取って食うわけではありませんから」

その人物は、抑揚のない口調でそういった
口調と同様にその表情も、文字通り無表情
髪はクセのあるショートカット、服は上下とも深い紺の体に密着したタイプの物

普通の人が見れば、どう考えても怪しい人なのだが
祐一は、そういった感じは一切しなかった

祐一「そう言われてもな、大体、突然後ろから現れて身構えるなという方が無理だろう?」

先ほどまでの警戒を解き、祐一は顔をゆるませる

祐一「で、名前は?」

「はい?」

祐一「名前だよ、名前。とりあえずそれくらい教えてくれたって良いだろ?」

「…そうですね。天野です。天野美汐」

祐一「そうか、じゃあ天野で良いかな? 俺は、相沢祐一。相沢でも、祐一でも好きに呼んでくれて良い」

美汐「分かりました。では、相沢さん、真琴のパートナーは見つかりましたか?」

その言葉に再び、祐一は美汐に警戒する
美汐の言う『真琴のパートナー』それは、真琴と同等の魔力波動を持つ者のことを意味する
そして、そのことを知るのはあのとき、あの場所にいた人のみ
それをこの天野美汐は知っていた

祐一「天野、それをどこで?」

努めて冷静さを保とうとしたのだが、口調の中の動揺は隠しきれなかったようだ

美汐「居たんですよ、あの時。相沢さん方は気づいていらっしゃらなかったようですが、私もあの時間、あそこで体術の修練を積んでいたのですよ」

祐一「ん? ということは…」

美汐「はい、私もあの学園の生徒ですよ。クラスはそうですね、栞さんと一緒でしょうか」

祐一「ああ、栞と一緒なのか」

美汐「ええ、でも、あまりお話は…私、いつも一人ですから」

祐一「そうか…」

それから、祐一と美汐は黙ってしまった
美汐の「私、いつも一人ですから」この言葉が祐一にはひどく憂いのあるように聞こえたからだ

沈黙はしばらくの間続いた

しかし、それは突然の招かざる者の出現によってそれは打ち破られた

美汐「来ましたか」

祐一は先ほどまで気づかなかったが、美汐は腰に付けられた小さなポシェットのような物の中から
黒いグローブと短刀を取り出す

祐一「天野、何が…」

美汐「ここ最近、このものみの丘には空間の歪みが頻発しています。私は、その歪みを超えて現れるクリーチャーを駆除しているんです」

祐一「でも、なんで天野が?」

美汐「ここを荒らされる訳にはいかないのです。ここには…。────相沢さん、こんな事を話している場合ではありません。申し訳ありませんが手伝っていただけますか?」

祐一「当然だ。女の子を放って俺だけ逃げるわけにはいかないだろ!」

祐一は地面に手を置き、地中の金属を抽出、剣を生成した

美汐「それは…」

祐一「話は後だ。来るぞ!」

美汐「はい!」

周りを見渡すと、クリーチャーの数はざっと、30といったところ
祐一と美汐は襲いかかってくる敵を迎撃するが
たった二人だけではやはり荷が重い

この状況を打開すべく、祐一は意を決め剣を立てる

祐一「仕方ないな、見よう見まねだが。風よ、我が剣に疾風の力を与えよ…風魔剣!」

祐一の持つ剣にすさまじい風が纏い出す

祐一「天野、俺の後ろに! 行くぞ!! 雪村神剣流、風式・疾風連斬剣!!」

連続した剣撃に加え、風魔剣の巻き起こす真空波が敵を次々と切り刻んでいく

祐一の剣技のおかげで約半分まで敵を減らすことが出来たが
それでも、まだ半分もいる

美汐「相沢さん、次は私です!」

祐一に続くとばかりにそう言うと美汐は先ほどまで持っていた短刀をしまい、
両腕をクロスさせる

美汐「はっ!」

裂帛の気合いとともにクロスしていた両腕を一気に広げる
すると、なぜか数体の敵の動きが止まった

美汐「滅!」

広げていた両腕をまるでローブを引くように自分の胸をもってくると
止まっていた敵が一瞬で全て解体された

これで、残りのクリーチャーは10体

ここで、敵の動きに変化が現れた

先ほどまで、クリーチャーはバラバラに動いていたのだが、
急に連携を取るような動きへと変わった

そして、攻撃力の低いと思われる美汐を標的とした

美汐の攻撃の邪魔にならないようにと祐一は離れた位置にいたが
それが仇となってしまった

一気に美汐に襲いかかるクリーチャー

その瞬間、祐一の記憶の断片がよみがえった












────ゆういちくん────





誰かが俺を呼んでいる
どこかで聞いたことがある声





────ゆういちくん────






懐かしい声
この声を聞くと、不思議と安心する

それまで真っ白だった視界にぼんやりと、風景が見えてくる
小さな女の子が目の前にいる

顔ははっきりしないが、俺はこの子を知っている
だが、誰だか分からないうちに
女の子の後ろの空間が歪み、女の子が吸い込まれていく






────ゆういちくん、助けて…────





助けなきゃ…
この子を手放してはいけない
俺は、この子を…

俺は!!











祐一「うおぉぉおおお!!」

突然、祐一から凄まじい魔力が発せられ
ほぼ一瞬で美汐の前へと躍り出る


祐一「右腕紋章刻印第一節開放!」

右腕の服が破れ飛び腕に不可思議な模様が浮き出し、輝き出す
そして、祐一の頭の中に言葉が浮かぶ
その言葉の浮かぶままに祐一はそれを口にする
              とわ                    とわ
祐一「我に敵為す者に永遠なる厄災を! 我に仇為す者に永遠なる贖罪を!! エターナルギルティ!!!」

右手を敵へと突き出し、詠唱が終了した瞬間、目の前は真っ白になり
その閃光が消えたときには先ほど美汐を襲おうとしていたクリーチャーは姿を消していた







祐一「大丈夫か?」

先ほどの衝撃で倒れていた美汐に祐一が手をさしのべるが
美汐は困ったように祐一の手を取るのを躊躇している

祐一「ほら」

美汐「あ…」

戸惑っている美汐の手を強引に取り立ち上がらせる

祐一「それで?」

美汐「えっ?」

祐一「えっ? じゃなくてなんで、天野がここを守っているかって話を聞かせてもらえないか」

瑞穂「それ、私も聞きたいわねぇ」

美汐「!」

祐一「師匠!」

突然現れた瑞穂に美汐は咄嗟に逃げようとするが
なぜだか美汐はその場所から全く動けなかった

瑞穂「ごめんねぇ、先手打たせてもらったわ。悪いけど逃げられるわけにはいかないのよ、貴方には色々聞きたいこともあるし」

見ると、美汐の足下には不動の魔法陣が形成されていた

美汐「────分かりました。この丘の伝説をご存じですか?」

祐一「伝説?」

美汐「はい、古くからこの地に伝わるものです…」

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