瑞穂「いい、祐くん。体の中を流れる魔力を感じなさい」

祐一「はい…」

ここは華音ハンター学園の実習場
その実習場の中央で瑞穂は祐一の眠っていた力を呼び戻そうとしていた

祐一は直立不動の状態から精神統一に入る

しばらくすると、祐一の体が淡い光を帯び始める

瑞穂「ん、良い感じね、いい、これからその魔力を一旦、体の中心に集めてその魔力が弾け飛ぶという順序でイメージをしてみなさい」

祐一(体の中心に魔力を集める…)

祐一は瑞穂に言われたとおり自身の体を流れる魔力を体の中心に集まっていくイメージをする

すると、祐一の体からはなっていた淡い光は祐一の体の中心に集まっていき、その光は徐々に強くなっていった

祐一(どんどん、魔力が俺の中心に集まってくる…くっ、なんだ、体が内側から爆発しそうだ)

瑞穂「今よ、魔力を開放しなさい!」

祐一は必死に押さえ込んでいた魔力を解放した

その刹那、激しい衝撃波が祐一を中心に放射状に放たれた

Wind Of Alchemist 

〜錬金術師の風〜 
開放そして襲撃

瑞穂「うん、上出来上出来」

瑞穂は笑いながら先ほど自らの衝撃波で尻もちをついている祐一に手を差し出す

祐一「あ、すみません」

瑞穂の手をつかもうと祐一が手を伸ばそうとしたとき瑞穂の手の回りに何かがぼんやりと光っているのが見えた

祐一「師匠、その手…」

ん? と瑞穂は自分の手を見る。そして少し考えた後、再び笑顔になる

瑞穂「祐くん、これが見えるようになったのね」

自分の手を祐一に向け、反対側の手でそれを指す
祐一は瑞穂の問いに首を縦に振って答える

瑞穂「これは私の魔力。祐くんの魔力限界値が上昇したから通常時の魔力も比例して上昇したのよ。その結果、相手の魔力を視覚化できるようになったということ。さて、じゃあ、実践と行きましょう。いい、これからは魔法を放つ時は魔力を自分の限界まで溜めた後放つようにしなさい」

祐一「はい」

瑞穂「じゃあ、とりあえず、私にファイアボール撃ってみて」

祐一は再び限界まで魔力を高める
そして、爆発寸前に詠唱に入る

祐一「契約に基づき、全てを燃やし紅蓮の炎よ、その姿、火球と成して敵を討て!」

詠唱が終了すると、祐一の手に炎の玉が生まれる
ここまでは、通常のファイアボールの魔法だったのだが、ここから変化が始まる

祐一の火球の周辺にさらに火球が生まれたのだ
その数、はじめの分を含めて6球

自分の生み出された火球を見て少し驚いたが
瑞穂の方を見ると笑顔で手招きをしている

祐一はそのままその火球を瑞穂に向かって放った

祐一「いっけぇぇぇぇぇ!」

それはまるで大砲を撃つかのような勢いで瑞穂に向かって飛んでいく

それと同時に瑞穂はすぐさま、防御行動に入る

左手を前方にかざし、その手に魔力を送る

そして、手を人差し指だけ立て、空中に陣を描く

瑞穂「反衝陣、リペル!」

宙に浮かんだ魔法陣が祐一に放ったファイアボールを全て弾く
逸れたファイアボールは周囲に着弾し大きな爆発を起こす

祐一「師匠、平気ですか?」

祐一は思ったより威力の高い攻撃に慌てて瑞穂に寄ってくる

瑞穂「ん? 平気平気」

ひらひらと手を振りながら笑顔で祐一に答える

祐一「は〜、そうですか」

瑞穂「そうよ、あのくらい反応できないようじゃS級ハンターになんてなれないわよ」

軽い口調で瑞穂はそう言うが、放たれた魔法に反応して防御魔法を張るには相当な訓練が必要となる
だが瑞穂はそういったことを全く感じさせない
意識しているではないのでおそらく性格的なものだろうがそのおかげで瑞穂の場合、見かけと実力がかなり違ってしまっている

瑞穂「それより、だいぶ魔法に変化が出たわね」

祐一「ビックリしましたよ。ただのファイアボールを呼び出しただけなのに・・・」

祐一は自分の手を開いたり閉じたりしている

瑞穂「そうね、魔法はね、その魔法を成立させるために必要な魔力以上の魔力を送り込むとその魔法は強化されるの」

祐一「強化…」

瑞穂「所謂、魔力の加給、マジックターボって言うんだけどファイアボールの場合は一度に出るファイアボールの数と威力が上がるわね」

瑞穂はおもむろに祐一を背にし片手を突き出す

一回、深呼吸をすると瑞穂の周りから凄まじい魔力の奔流が発生する

瑞穂「エアプレッシャー!」

瑞穂の突き出した片手から、まるで台風のような突風が巻き起こる
地面を削り、木をなぎ倒していった

祐一「すっげぇ…」

そんな呻きしか出なかった

瑞穂「ま、こんな感じね。今度祐くんは最低でもこれを防げる魔法を覚えなきゃね」

祐一「マジか…」

瑞穂「マジマジ。出来なきゃ……死ぬわよ」

祐一「うっ?」

瑞穂「冗談じゃなくて、本当に死んじゃうから。実は攻撃よりも重視して欲しいのよ。いい、生きていればやり直しは利くのよ。死んでしまったら何も出来ないの。だから何よりも、命を大切にしなさい。無理だと思ったら退くことも必要よ。今の祐くんは攻撃に重点を置きすぎて防御が疎かになっているわ。だから、これからは防御行動を重点に訓練しなさい」

祐一「分かりました」

瑞穂「そうねぇ、私が教えてあげても良いけど私も色々忙しいから、倉田さんあたりに習うと良いわね」

祐一「佐祐理さんに?」

瑞穂「うん、倉田さんはかなりの防御魔法の使い手よ。彼女に付けばほとんどの防御魔法は使えるようになるわね」

祐一「へぇ〜、そうは見えなかったなぁ」

瑞穂「人は見かけによらないって事よ」

う〜ん、と祐一が呻っているのを瑞穂は少し笑いながら見ていた

そんなとき、転送魔法陣から誰かが飛び出してきた

アルフ「瑞穂さん、大変です!」

血相を変えたギルドの管理人アルフが瑞穂に駆け寄ってきた

瑞穂「どうしたの? こんな所に」

アルフ「街が何者かに襲われています」

瑞穂「なにそれ? 他のハンターは?」

アルフ「A、AAクラスのハンターがまるで歯が立たないんです」

その言葉を聞いたとたん、瑞穂の顔色が変わる
通常、A、AAクラスのハンターであれば大抵のことは収拾がつくのである
それが全く歯が立たないとなると、相手はAAA、Sクラス並の能力を持つ者だと言うことだ

瑞穂「なんで、ここにそんな奴がいるのか分からないけどとりあえず、出ます! 祐くん、麗子に言って学校中の教師、生徒で住民を学校に集めて。多分、ここの方が安全だから」

祐一「分かりました!」

瑞穂「頼むわよ、さぁ、行くわよアルフさん!」

アルフ「はい!」



































瑞穂「これはまた、派手にやっているわねぇ」

学校の外に出たとたん、あちこちから煙が上がっていた
そして、近くからは爆発音がしている
おそらくは、そこに襲撃者がいるのだろう

瑞穂「フライ!」

風の力で舞い上がりその場所へ急行する

近づくにつれ、ハンターの数人が襲撃者を相手にしているのが見えた

瑞穂「やっぱり劣勢か…よっと!」

瑞穂はちょうど、襲撃者とハンターに挟まれるように着地した

まずはハンターの方に向く

瑞穂「どうやら、大きな怪我はないようね」

多少の怪我はしているものの命に関わる怪我をしているものはいなかった

次は襲撃者の方に向き直る
容姿は全身真っ黒。頭の先からつま先まで全て黒で統一されている

瑞穂「さて、な〜にをやっているのかしら?」

「答える必要はないでござる」

声の様子からこの黒ずくめは男だと言うことが分かった

瑞穂「なるほど、でもねぇ、黙ってこの町を壊させるわけにはいかないのよ。少し、相手してもらうわよ」

静かに戦闘態勢に入る瑞穂
それを見て、相手も同様に構える

瑞穂(この構え、全く隙がない。それに、この人、なんか変だ)

「参る!」

数分の間の後、向こうの方から仕掛けてきた

その速さ、まるで閃光
普通の人間はおろか、ハンターでも見ることは難しいだろう

ガン!

衝撃音と共に首を狙った黒ずくめの男の攻撃を瑞穂は見向きもせずに腕で防いだ
その後の頭を狙った第二撃、足下を狙った第三撃も難なくかわす

黒ずくめの男「むぅ…」

瑞穂「な〜に〜? これで終わりかしら?」

今までの相手とは段違いの相手に男は呻きをあげる

黒ずくめの男「本気で行かなければならないようでござるな」

その言葉と同時に男の雰囲気が変わる
どうやら、魔力の流れが変わったのだろう

男の周りが陽炎のように歪んで見えるほど魔力があふれ出ている

瑞穂「これは、なかなか」

その姿を見て周りのハンターは怯えて後ずさるのだが、瑞穂だけは怯えるどころかむしろ感心していた

黒ずくめの男「滅させていただくでござる!」

激しい狂気と共に男は再び瑞穂に襲いかかる

先ほどと違うのは男の両腕、両足が炎に包まれていること
そして、スピードが上がっていること

瞬時に瑞穂の後ろに回り込み、回し蹴りを放つ
今度は瑞穂は防がずその攻撃を受けて数メートル吹き飛ばされ、石塀に叩きつけられた

確かな手応えに男は満足そうに叩きつけられた瑞穂を見る

がしかし、その満足げな顔はすぐさま歪んだ顔に消される

瑞穂「はあぁぁぁぁ…」

男の視線の先には全身に凄まじいほどの魔力を纏っている瑞穂がいた

瑞穂「!」

閉じている目をカッと見開いた瞬間その魔力はさらに膨れあがる
その強大な魔力は周囲に転がっている小石を弾けさせるほどだった

突如、男の視界から瑞穂が消える
そして、次の瞬間、今度は男の方が吹き飛んでいった

瑞穂「今のが全力だったのかしら? もう少し楽しませてもらわないとつまらないわよ」

男の脳裏に敗北という言葉がよぎった
段違いなんていうレベルではない

相手にしてはいけない者を相手にしてしまった

自分の全力が相手の足元にすら及ばない

恐怖のあまり体が勝手に震え出し、立ち上がることが出来なかった

瑞穂「あなた、ホムンクルスなんだから普通の人間よりは体は丈夫でしょ?」

黒ずくめの男「!」

思わずなぜ分かったという顔をしてしまう

ホムンクルス
錬金術にて作られた人造人間で幼年期・青年期は通常の人間より外界よりの影響に弱いが
それを過ぎ、成体期に入ることが出来れば人間より遙かに丈夫な肉体となり、寿命も長いのだが
生殖器官がないため、子供を作ることが出来ない
生体ベースとなる人のポテンシャルに左右されるのだが生まれた段階からすでに豊富な知識、高い魔力をもっている

瑞穂「あなたの魔力の流れ方がね人間とは違うのよ。今思い出したんだけどね、その流れ方はホムンクルス独特の物よ」

男の無言の問いに瑞穂はそう答えた

先ほど感じた違和感、まさにそれがホムンクルス独特の魔力の流れ
もちろん、それは魔力の流れを感じ取ることが出来る瑞穂だからこそ言える答えだった

瑞穂「とは言っても今回は相手が悪すぎたわねぇ。だから、今回の所は手を引いてくれるかしら?」

男は黙ったまま立ち上がり、そのままその姿を消した

瑞穂「全く、誰が作ったのやら」

そういいながら、周辺の破壊された物の修復に入る

周りのハンター達は今の瑞穂のやりとりに完全に呆気にとられていた
ハンターの中には瑞穂のことを突然この町に来て、よそ者扱いをしていた者もいただろう

それが今の出来事で認めるしかない者、尊敬する者。受け止め方はそれぞれであるが、悪いイメージはすべて払拭されてしまった

「あ、あのぅ…」

瑞穂「ん?」

一人のハンターが瑞穂に近づき声をかける

「なにか、私も出来ることは…」

瑞穂「そうねぇ、何が出来るの?」

「えっと、錬金術が少し、それと地の魔法が得意ですけど」

瑞穂「じゃあ、こっちの石垣直してくれる? 大まかは錬金術で構成して足りない部分は魔法で」

「分かりました!」

それを皮切りに、大勢が瑞穂の元に集まってくる
そして、瑞穂は皆にその能力に応じた街の修復を指示する

そのおかげか、街の修復はさほど時間がかからずに終了した

瑞穂「さてと、みんな、助かりました。じゃあ、私、学園に戻って避難している人を家に帰しますから」

そういうと、瑞穂は学園に向かって飛んでいった

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