瑞穂「ふ〜っ、とりあえずこれでみんな帰ったわね?」

麗子「はい、お疲れさまです先輩」

避難していた人を全て帰し終わって、瑞穂、他いつものメンバーは一息ついていた

瑞穂「それにしても…」

瑞穂は先ほどの男の事を思い出していた

なぜこの町にホムンクルスが襲ってくるのだろうか
いったい何の目的があって

いや、ホムンクルスの目的はただ一つ

瑞穂「ってことは、やっぱりあれか」

Wind Of Alchemist 

〜錬金術師の風〜 
ホムンクルス

先ほどから、ぶつぶつとつぶやきながら考える瑞穂に皆、注目していた

その中で聞こえた言葉

ホムンクルス

香里「ホムンクルスってもしかして」

祐一「ああ、錬金術の一つで人造人間のことだ」

「「「人造人間!?」」」

3名ほど思わず驚き、大声を上げた

名雪「人造人間なんて漫画の中の話と思っていたよ」

栞「ええ、ビックリです」

祐一「錬金術を学ぶ者なら、必ずここに行き着くな。ただ、簡単に作れるモノじゃない、錬金術者の中でもかなり熟練した者じゃないと人じゃないモノが出来上がるらしい」

名雪「人じゃないモノって?」

祐一「つまりは、ちゃんと人の形をしていないって事だ。心臓が剥き出しになっていたりとかな」

その言葉を聞いて、女子全員、顔が青ざめる

瑞穂「それにね、ホムンクルスは製造が制限されてる術なのよ」

先ほどまで考え事をしていた瑞穂が祐一達の話の中に加わった

佐祐理「それはどうしてです?」

瑞穂「モラルの問題とかいろいろあるんだけど、一番の問題は、ホムンクルスには人権がないってことよ」

舞「…人権がない?」

瑞穂「そう、ホムンクルスはあくまで人が作ったモノ。外見は普通の人間とさほど変わらないけど、ポテンシャルが通常の人間より高い。それを危険視して人権を与えなかった。そうそれは、人ではなく物として扱われる事を意味するの。でもねやっぱり外見は人間だもの流石にいたたまれなくなったのね、人を物扱いするのが。それで正式な許可が下りないと作れなくなったのよ」

栞「じゃあ、作らなきゃ良いじゃないですか。なんで制限されているとはいえ製造は可能なんです?」

瑞穂「ホムンクルスには得る物が多いのよ。例えば、ホムンクルスが居れば錬金術の成功率が格段にアップするし、それに錬金術の真髄を作り出すために必要な存在なのよ」

名雪「真髄?」

香里「エリクサー、賢者の石ですね?」

瑞穂「さすが、香里さん。そう、それこそが錬金術の真髄、すべての物質を完全の状態にすることの出来る秘薬、それが賢者の石」

栞「完全な状態?」

香里「栞、錬金学で習わなかったの?」

栞「えぅ、錬金学は難しくて…」

栞はそのまま俯いてしまう

瑞穂「まぁまぁ、錬金学ではすべての物質は完全な状態になることが出来ると言われているの。例えば、銅や銀は金属の内最大の価値である金に昇華することが可能だし、人間は永久不滅、つまりは不老不死ね。そして、人間としては半端であるホムンクルスは人間そのものになることが出来るのよ」

祐一「でも、賢者の石はそれこそ、世の常識を覆しかねないほどの力を持っている。だから、無闇に製造方法を他に流したりしないし、賢者の石自体も他人に譲渡したりしない。錬金術が一子相伝なのはこれが理由だったりするんだ」

瑞穂「で、今回の話だけど、おそらく街を襲ったのはホムンクルスが賢者の石を欲したからだと思うのよ」

香里「さきほど雪村先生が言った自らを完全な形、つまりは本当の人間になるためにですね?」

瑞穂「そう、人間になれれば、人権が与えられる。でもね、ホムンクルスを物ではなく人として見てあげることが出来ればこんな暴挙に出ることはないのよ。人として見られない。そんな絶望と嫉妬、悲しみが彼らを悪者にしているの。────おそらく、彼はまた来るわよ。その時はなんとか彼をこの苦しみから解放してあげないと」

祐一「でも、ホムンクルスがこの街を襲ったって事はこの街に賢者の石が存在するって事ですよね」

瑞穂「ん〜♪ さすが、我が弟子! 冴えてるじゃない。そう、この街には確かに賢者の石が存在するわ。ただ、それはすでに機能しているのよ」

舞「……機能?」

舞の頭の上に沢山の?が浮かんでいた

祐一「金への昇華、それと不老不死へは賢者の石をエリクシールに薬化にする必要がある。でも、賢者の石をそのまま機能させるとなると…この街に完全化したホムンクルスが居るんですか!?」

祐一は思わず、立ち上がり叫んでしまった

潤「でも、そんな奴見かけなかったぞ?」

名雪「私も見たこと無いよ〜」

他のメンバーもうんうんと頷いていた

瑞穂「当然でしょ。もうそれはホムンクルスではなく人間なんだから」

佐祐理「でも、このまま放っておく訳にはいきませんよね」

香里「そうね、その賢者の石を使っている人が危険にさらされるわね。先生、何か見分ける方法はないのですか?」

瑞穂「……無い」

祐一「へっ?」

瑞穂の答えに一同、耳を疑う

皆、瑞穂なら何か打開策があるのだろうと思っていたからだ

瑞穂「だから、無いのよ。人間化されたらね、その人のホムンクルス独特の魔力波長が無くなってしまうのよ。個人の特定は出来るけど、ホムンクルスの判別は無理ね」

祐一「八方塞がりか」

瑞穂「そんなこともないわよ。まぁ、あまりやりたくはないけど、これしかないわねぇ」

瑞穂は皆にその方法を説明する

その方法に一番先に異議を唱えたのは香里だった

香里「先生! それじゃ、その人に危害が加わる可能性が高いじゃないですか!」

瑞穂「そうね。でも、本当にこれしかないのよ」

瑞穂の言った方法とはこうである

先ほど、瑞穂が見逃したホムンクルスが再び賢者の石を求めてこの街にやってくる
今回は、襲撃を阻止せずにそのまま泳がし
ホムンクルスが賢者の石を持つ者に接触するのを見計らって
捕縛そして、賢者の石を持つ者の保護というものである。

佐祐理「先生、一つ質問していいですか?」

瑞穂「なにかしら?」

佐祐理「なぜホムンクルスは賢者の石の場所が分かるんですか?」

瑞穂「賢者の石は言うなればホムンクルスを構成する最後のかけらなのよ」

そう、賢者の石はホムンクルスを人間として完成させるための最後のパーツ
そして、賢者の石はホムンクルスが自ら力を持って生み出す物

半身とも言える賢者の石をホムンクルスは離れていても感じ取ることが出来るのだ

たとえそれがすでに他のホムンクルスの体内にあろうとも

まい「ねぇ、おねぇちゃん?」

突然、舞からちいさなまいちゃんが飛び出してくる

瑞穂「あら、久しぶり。どうしたの?」

まい「けんじゃの石ってはどうが出ているのかな?」

瑞穂「そうねぇ、おそらくホムンクルスしか感じることの出来ない波動が出ているわね」

まいは瑞穂の言葉に少し考えた後、口を開いた

まい「まい、けんじゃの石のばしょ分かるかも」

瑞穂「!」

どうやら、まいは自らの力を放出させ、賢者の石の波動と反発させてその時起きる力の歪みを目印にするのだという

瑞穂「純粋な力の固まりのまいちゃんなら、もしかしたら出来るかも知れないわね。まいちゃん、やってくれる?」

まい「うん! まい、がんばる!」

まいは両手を握ってうん! と意気込む

瑞穂「じゃあ、そろそろお開きにしましょう。麗子、悪いんだけどここにいるメンバーは明日学園欠席させるから」

麗子「分かりました、十分気をつけてください。先輩が居るから大丈夫だとは思いますが…」

瑞穂「ありがと。じゃあ、まいちゃん、明日お願いね?」

まい「えっと…その…」

珍しく、まいがもじもじしている
言って良いものか悪いものか迷っているように見えた

瑞穂「どうしたのかな?」

まい「あのね、もしね、まいがうまく出来たら…ごほうびくれる?」

舞が封印した力、それがまい
言い換えれば、幼い頃の舞、それがまいなのである
うまくできればなにかご褒美が欲しい
小さな子ならごく当たり前の要求なのである

瑞穂「もちろん! まいちゃんは何が欲しいの?」

まい「うんと…まいとあそんでほしいな。まいと舞とおねぇちゃんと祐一とみんなと一緒に」

まいは順に舞達に指をさしてそういった

瑞穂「そうね。みんなでどこか遊びにいくのも良いわね。みんなはどうかしら?」

名雪「私は大丈夫だよ」

栞「みんなとお出かけするの楽しみです」

香里「じゃあ、お弁当はどうしようか」

佐祐理「あははーっ、お弁当は私が沢山作ってきますね」

潤「このメンバーなら悪くないな」

祐一「だとさ、良かったな。まい」

祐一はまいの頭を優しく撫でる

まい「うん!」

満面の笑みを浮かべてまいは喜んだ

麗子「あら、私は仲間はずれですかぁ?」

本気で寂しそうに麗子がそうつぶやく

まい「ううん。れいこおねぇちゃんもいっしょにいこ」

まいは麗子の背中に抱きついてそんな言葉をかける

瑞穂「全く、麗子は…。さて、みんなで遊びに行けるように、頑張りましょう!」

「「「「「「「はい!!」」」」」」」

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