瑞穂「じゃあ、まいちゃん、お願いするわね」

まい「うん!」

翌朝、瑞穂達は学園の門の前にいた

まいは目に見えない波紋を放射し、徐々にその範囲を広げていく

数分後、ビリビリビリッというような感覚が瑞穂達に伝わった

祐一「な、なんだ?」

瑞穂「賢者の石の波動とまいちゃんの力が反発した時に起きた反発波よ」

瑞穂は反発波の間隔から即座にその発信元を算出する

瑞穂「えっ? これは…」

Wind Of Alchemist 

〜錬金術師の風〜 
秘密そして奪取…

祐一「ここは…」

全員、なぜここなのかと思っていた

それもそのはずである

そこは、祐一、名雪、瑞穂が住んでいる家であった

つまりは水瀬秋子を主人とする家

名雪「私の家に賢者の石があるってこと?」

瑞穂「まぁ、そういうことになるわね。とりあえず、中に入ってみましょう。まいちゃん、引き続き力の放出お願いね」

まい「うん」





リビングに皆がなだれ込むように入ってくる

秋子「あらあら、どうしたの皆さん」

あゆ「わっ、びっくりした」

そこには、秋子とあゆがいた

まい「このおねぇちゃん! このおねぇちゃんが波動の元!」

突如、まいがあゆに向かってビシッと指をさした

祐一「お、おい、ちょっとまてよ。あゆは、普通の人間だぞ?」

瑞穂「本当にそうかしら? 悪いけど、ホムンクルスの完全体の容姿は限りなく人間に近いわよ。それとも祐くんにはあゆちゃんが普通の人間である証明、ホムンクルスではない証明が出来るのかしら?」

祐一「……」

瑞穂「言い方は厳しかったかも知れないけど、思い込みは真実を遠ざけるわ。私達は徹底的な現実を見る必要があるの。そして、今、あゆちゃんから賢者の石の波動が感じられる。それは何を意味するか、言わなくても分かるわね? 祐くん」

祐一「…はい」

秋子「ちょっと待ってください。話の意図が見えないのですが…」

完全に置き去りにされていた秋子が瑞穂に事態の説明を求めてきた

瑞穂は、ホムンクルスが街を襲ってきたこと。その目的が賢者の石であろうこと。そして、その賢者の石の持ち主があゆであることを説明した

あゆ「わたしがホムンクルス…」

今までの様子から、あゆは自分がホムンクルスである自覚が全くないみたいだった

佐祐理「ちょっと待ってください。賢者の石はたしか人間に使えば不老不死になると仰っていましたよね? だったら、あゆさんが生粋の人間である可能性もあるんじゃないですか?」

瑞穂「それはないわ。純粋な人間に賢者の石を使うと石の波動と相殺してその人の魔力波動が消え去るのよ。まぁ、魔力自体は消えないけど。でも、あゆちゃんからは強くはないけど魔力波動が感じ取れる。そして、あゆさんには賢者の石が埋め込まれている。以上の事を踏まえて総合的に判断するとあゆちゃんはほぼ間違いなくホムンクルスであるといえるわね」

あゆ「…バレちゃった…みたいだね」

瑞穂「あゆちゃん?」

あゆの雰囲気が変わり始める
それを感じ、瑞穂は後悔した

自分はなんて浅はかだったのだろうか
ホムンクルスとはいえ、人の心を持つ者である

人々から遠ざけられるのを避けるために
自分がホムンクルスだと言うことを隠す者もいるだろう

彼女は自分がホムンクルスだと言うことを知っていたのだろう
しかし、知らないふりをしていた
必死に隠そうとしていたことをずかずかと暴いてしまった

どれだけ、彼女を傷つけてしまったのだろうか

瑞穂「ごめんなさい、あゆちゃん。あなたの気持ちも考えずに…」

もう謝るしかなかった
謝って許されることではないだろうが
それでも、謝るしかできなかった

あゆ「瑞穂さん、もういいですよ。いつかはバレると思っていたから。でも、祐一くんには知られたくなかったかな…」

あゆはそう言い残すと家から飛び出していった

祐一「あゆ!」

瑞穂「祐くん、追いかけてあげて。私の尻ぬぐいさせるようで悪いんだけど。どうやら、あゆちゃんには祐くんが必要みたい。だから、お願い…」

祐一「わかりま────」

「きゃああああぁぁぁぁぁっ!!」

突然、家の外から叫び声が聞こえた

秋子「今のは…あゆちゃん!?」

瑞穂「マズい!! ホムンクルス!!」

瑞穂を筆頭に皆一斉、急いで家の外に出る
そこには、黒ずくめの格好をした数人のおそらくはホムンクルスが居た
そして、その内の一人が気絶したあゆを肩に担いでいた

祐一「あゆ!」

祐一があゆに近づこうとすると一人のホムンクルスが祐一の前に立ちはだかる

祐一「退けろ!」

「それは出来ないお願いだ。この娘は俺達に必要なのだ」

祐一「だからといって、さらっていくような真似が許されるわけ無いだろう!!」

祐一は風の魔法を使い高速でホムンクルスの横をすり抜けようとするが
祐一より速く、その前に立ちふさがる

香里「速い!?」

その間にあゆをつれたホムンクルスがどこかへ行ってしまった

祐一「ちっ!」

いくらすり抜けようとしてもホムンクルスはすべてその前に祐一の前に立ちはだかる

「あまりしつこいとこちらとしても考えが────」
「アースグレイブ!!」

突如、ホムンクルスの足下が隆起し槍状の岩が突き出す
しかしホムンクルスは咄嗟にそれを飛び退いてかわした

瑞穂「秋子さん!」

瑞穂が振り返るとそこには、普段の主婦の姿ではなく
深い緑のローブを羽織った秋子の姿だった

瑞穂「秋子さん、それは…」

秋子「瑞穂さん、ここは私が食い止めます。ですから早くあゆさんを追って下さい」

瑞穂「ですが、いくら秋子さんでも、相手がホムンクルスなら分が悪すぎます」

秋子「瑞穂さん、私を誰だとお思いです? マスターオブサマナーの名は伊達ではありません」

秋子はどこからかロッドを取り出し、それをかざす

秋子「我に従順なる全てを焼き尽くす炎の眷属、万物の源なる水の眷属、大気を流れし風の眷属、命を育みし地の眷属…今ひとたび我が力なることを望まん…出でよ! ブレイブロス! アクアロス! ツイストロス! ダイアロス!」

秋子の周りから現れた四つの魔法陣からそれぞれの眷属が現れた

炎を纏う屈強な姿のブレイブロス
水を纏う美しき姿のアクアロス
風を纏う清楚な姿のツイストロス
岩を纏う頑強な姿ダイアロス

ブレイブロス「お呼びでございますか? マスター」

アクアロス「お久しゅうございます、マスター」

ツイストロス「待ちくたびれましたよ、マスター」

ダイアロス「さぁ、ご命令を。マスター」

秋子「さぁ、瑞穂さん。私はこの子達が居ます。ですから、早くあゆさんを!」

瑞穂「了解しました! さぁ、いくわよみんな! 祐くん、名雪ちゃんと栞ちゃん、それから潤くんをお願い!」

祐一「了解、行くぞ! みんな。 風よ!!」

瑞穂「倉田さん、川澄さん、香里さん、まいちゃん、行くわよ! 風よ!!」

瑞穂と祐一はフライを使って宙に舞い上がりあゆを追っていった

「ちっ、逃すな!」

すかさず、ホムンクルスが瑞穂達を追おうとするが、それを四人の眷属が阻む

秋子「申し訳ありませんが、足止めをさせてもらいます。我が名は水瀬秋子。マスターオブサマナーの誇り高き名を冠し、華音市方面ハンターズギルド長である私を甘く見ると怪我ではすみませんよ?────さぁ、行きなさい!」







































祐一「随分早いな、あのホムンクルス」

瑞穂「おそらく、脚部が特化されたホムンクルスね」

高速で移動するホムンクルスを瑞穂達は、上空からそれを追っていた

佐祐理「特化って?」

瑞穂「ホムンクルスはね、どこかの能力が飛躍的に高い場合が多いのよ。今追っているホムンクルスは脚部の能力が高いわね」

香里「他にはどんなのがあるんですか?」

瑞穂「そうねぇ、腕部の能力が高い者もいるし、全身の筋力が高い者もいるし。肉体的なものじゃなくて魔力が高い者もいるわね」

栞「じゃあ、あのあゆさんもどこか…」

瑞穂「そうね。そして、その能力は賢者の石で完全体となっても失われない」

祐一「師匠! どうやら、あの建物に入るみたいです」

逐一、ホムンクルスの動きを監視していた祐一が
行動の変化に気づいた

瑞穂達は華音市からかなり離れたところまで来ていた
すでに道という道はなく、周り一面森に囲まれていた

その中にいかにもういた建物が建っていた
まさに人工物と言えるその建物は壁という壁
屋根に至るまで白に統一されていた

ホムンクルスはその中へと入っていった
すぐさま、瑞穂達はその建物へと近づいた

香里「何この建物…」

舞「…真っ白」

瑞穂「これは、研究所みたいね。先ほど街に来たホムンクルスもここから来たのでしょう。それにしても…」

真っ白な建物を見て瑞穂は首をかしげる

この建物にはあるべき物がないのだ

どんな建物には必ずある物

名雪「先生? どうかしましたか?」

考え事をしている瑞穂に名雪が声をかけてきた
その名雪に瑞穂がものすごい笑顔で振り向いた

瑞穂「名雪ちゃん、問題。この建物にない物は何でしょう?」

名雪「えっ?」

う〜? と名雪は考え込んでしまった

瑞穂「まぁ、あまり時間がないから答えね。この建物、どこから入るのかしら…」

潤「あ、扉がない!」

この白い建物にはどこを探しても扉がないのだ

しかし、確かにホムンクルスはこの中に入ったのだ

香里「…扉が見えないようにされている?」

瑞穂「!」

ぼそっと香里が言った言葉に瑞穂が反応した

瑞穂「香里さん、正解! 以前、栞ちゃんがリチャードにさらわれたときにリチャードが魔法で屋敷を見えなくしたのと同じ原理ね」

名雪「ということは」

瑞穂「エクスポーズの魔法で見えるようになるわね」

そういうと、瑞穂はエクスポーズを屋敷に掛ける

一瞬、屋敷が歪み一部分がガラスのように砕け散った

その砕けた部分から扉が現れた

瑞穂「さぁ、行くわよ!」

瑞穂の声を皮切りに全員が建物の中へとなだれこんでいった














建物の中に入った瑞穂達は思わず歩みを止めてしまった

入ってすぐに瑞穂達が見たのは複雑に入り組んだ道だった
複雑に入り組んだ道は侵入者を容易に深部まで到達させるのを防ぐためのモノだ
これでは、あゆをつれたホムンクルスがどこへ行ったのか分からないとほとんどの者が思っていた
そんななか、一人、瑞穂は精神を集中していた

あゆの残留魔力波動を探知するためだ

以前にも瑞穂はさらわれた栞を探すためにこの方法を用いた

建物の中をソナーでも掛けるようにくまなく探索していく

そして、あゆが連れられていったルートの割り出しが完了する

瑞穂「探知完了! こっちよ、みんな!」

走っている時間も惜しいのでフライを使い超低空飛行で後を追う
幾度か壁に激突しそうになるが体をうまく回転し壁を蹴ってなんとかやり過ごした
そうして進んでいると突き当たりに扉を発見した

瑞穂「エアプレッシャー!」

前方に付きだした右手から高圧の突風を巻き起こし、扉を粉砕する
開いた入り口から瑞穂達は中へと飛び込んだ

祐一「あゆ!」

中には、あゆを連れ去ったホムンクルス、磔にされたあゆ、そしてローブを纏った男がいた

男「おい、左京、つけられたな?」

男に左京とよばれたホムンクルスは咄嗟に膝を突き許しを乞う

左京「申し訳ありません、マスター」

男「まぁいい。さて、私の研究所に何のご用かな? お嬢さん方?」

瑞穂「あゆちゃんを返してほしいのよ」

男「あゆ? ああ、そのホムンクルスのことか。すまないがそれは出来ないな。このホムンクルスには賢者の石が埋め込まれている。私にはそれが必要なのだよ」

祐一「何を言っていやがる、必要だからってさらうのが許されるわけ無いだろう!」

男「ほぉ、キミはこのホムンクルスの所有者なのかね?」

祐一「所有者?」

男「まさかとは思うが、ホムンクルスを人と同じ扱いをしているのではないのかね?」

瑞穂「……」

男「ホムンクルスはモノだ。我々錬金術師の道具にすぎん。ホムンクルスに感情移入するなど錬金術師としては失格だな」

左京「…」

瑞穂「やっぱり、そういう考えだったか。『所有者』なんて言葉を使った時点でそうじゃないかと思ったけど。────ホムンクルスは立派な生命体よ。ちゃんと自分で考え行動する。それをモノ扱いするなんて錬金術師の前に人間失格よ」

男「なるほど、お前も錬金術師か。しかし、その考えは錬金術師不必要な物だ。この世の全ては我々、錬金術師の材料でしかない。それが理解できん奴に錬金術師を名乗る資格はない!」

瑞穂「自分のエゴで凝り固まった人ね。あなたみたいな錬金術師が居るからホムンクルスが世界から拒絶されるのよ。それにね、私は錬金術師の前にヒトよ。この世の物が錬金術師の材料だなんてあなたは神にでもなったつもりなの? 身の程を知りなさい! 悪いけどあなたはここで潰させてもらう!」

瑞穂は両手に魔力を纏い戦闘態勢に入る

男「悪いがお前を相手にしている時間はない。左京、右京はどうした?」

左京「申し訳ありません、先ほどから行方が分かっておりません」

男「まぁ、いいだろう。左京、他の者と一緒にしばらくこやつらの相手をしてやれ。私はこれから賢者の石を取り出す」

左京「……御意」


瑞穂達の前にホムンクルスが立ちはだかる
そうしている間に男は磔になっているあゆを奥へと運んでいった

瑞穂「邪魔するなら、力ずくでもねじ伏せる!!」

瑞穂はさらに魔力を高め始めた

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