右京「あそこでござる!」

佐祐理達と分かれた瑞穂達はすでにかなり深部まで来ていた

そして右京が指したそこにはぽっかりと大きな空洞が口を開けていた

祐一「よし! まってろあゆ!」

瑞穂「……」

この空洞に近づくにつれ、瑞穂は微量ではあるが、体内の魔力が消費されている感じがしていた

瑞穂「あの空洞、なにか魔法が施されているわね…」

Wind Of Alchemist 

〜錬金術師の風〜 
賢者の石 争奪

空洞に入れば入るほど、魔力消費は多くなっている
しかし、祐一達にはそれが分かっていないようだ

とりあえず、空洞の中心に向かって進む

そこには、依然磔になったままのあゆと
今まさに、あゆの体内に隠されている賢者の石を取りださんとするウォレス・シュバインがいた

祐一「待て! それ以上、あゆに近づくんじゃない!」

祐一の叫びにウォレスは驚きと共にこちらに振り向く

ウォレス「ほほう、ここまで来るとは。────ん? なるほど、右京、私に謀反を翻したか」

驚いたのは瑞穂と祐一がここに来たということだけで、右京がウォレスを裏切ったことに関しては
予測範囲内だったのか、口調は冷静だった

右京「ウォレス・シュバイン、拙者以下あなたと契約したホムンクルスはすべて契約を破棄したい!」

ウォレス「かまわんよ。それだけ、お前達が賢いということだ。もはや、目的も達成しようとしているしな。お前達ホムンクルスは賢者の石を探すための探知機(レーダー)にすぎん」

瑞穂「最後までホムンクルスをモノ扱いするのね」

ウォレス「当然だ。お前達に説教を受けたところでそうそう、考えが変わるモノではあるまい」

瑞穂「それは確かに。じゃあ、こちらもあゆちゃんの奪還を突き通させてもらう」

ウォレス「悪いな、それは阻止させてもらう。強制魔力略奪魔法陣発動」

ウォレスのコマンドスペルによって床一面に魔法陣が浮き出す

祐一「ぐっ? なんだ、力が抜ける?」

瑞穂「やっぱり、吸収系の魔法がかかっていたわね」

右京「まずいでござる。このままだと根こそぎ魔力が吸われてしまうでござる」

以前にも説明したが魔力は生命力と同義である
魔力が枯れるということはすなわち命が絶えるということである

瑞穂達は急速に魔力を奪われることによって
身動きがとれなくなっていた

ウォレス「そのままでいたまえ」

祐一「くそっ!」

瑞穂「……」

ウォレスはあゆの方に向き直り、あゆに近づく

手をかざし、あゆの体の中にある賢者の石のありかを捜す

しばらくするとウォレスの手があゆの胸をあたりで止まる

ウォレス「ふむ、ここか」

ウォレスは驚くほど簡単に自らの手をあゆに胸の中へと突き入れた

あゆ「ぐふっ…」

祐一「あゆ!! ちくしょう!!」

右京「くっ、無念!」

瑞穂「……」

あゆは口と手を差し込まれた胸から大量の血液が漏れ出していた

ほどなくして、ウォレスは手を引き抜く
その手には蒼白にかがやく珠が握られていた

ウォレス「これは、素晴らしい。もっているだけで魔力がわき出てくる」

瑞穂「いい加減、満足したかしら?」

ウォレス「何?」

瑞穂「だから、賢者の石を手にして満足したかと聞いているのよ」

ウォレス「まさか、これからこの石を使うのではないか」

瑞穂「やはりね。手にしただけじゃ満足しないか。悪いけど、それはあなたの手に余るモノよ」

瑞穂はハンター証をかざす

瑞穂「セントラルハンターズギルド所属、S級ハンター雪村瑞穂の名において、錬金術の最終目的であり最高機密である賢者の石を確保します」

ウォレス「ほう、ハンターだったのか。しかし、いくらS級でも賢者の石の恩恵を受ける私から奪えるとでも? それに今お前は動けない…!?」

そう、動けないはずなのだが、瑞穂はまるで魔法などかかっていないように自由に動いている

瑞穂「動けないはず? そうね。現に今も魔法陣は発動中だし。祐くん達は動けないわね」

ウォレス「貴様、何をした?」

瑞穂「何をした? 簡単な事よ。この魔法陣の魔力吸収量より私の魔力生産量の方が高いだけの事よ。そして、生産量が高いと言うことはこんな事も出来るのよ」

瑞穂は魔法陣に手を当て、魔力を急速に放出する

その放出量に魔法陣の吸収が追いつかず魔法陣が機能を停止した

ウォレス「オーバーロードだと? まぁいい、この賢者の石、お前で試させてもらう!」

瑞穂「祐くん、今のうちにあゆちゃんを。怪我の治療はあなたに任せるわ。あれを使っても構わないから。あゆちゃんの賢者の石は必ず私が取り戻すから」

祐一「了解」

瑞穂「右京、、万が一のために脱出路の確保をお願い」

右京「御意」

瑞穂「じゃあ、行きなさい!」


瑞穂の号令でまずは、祐一があゆ奪還のために飛び出す

次に右京が脱出路の確保のために出口に向かって走り出す

そして、瑞穂は賢者の石によって魔力が異常に高まったウォレスと対峙していた























祐一「あゆ!」

祐一はあゆに近づき、まずは様子を見る

口と胸が真っ赤に濡れており、顔は血の気が失せて真っ青だった

祐一「このままじゃまずい。あれをやるか」

祐一は魔力を高め始める

徐々に祐一の体がまばゆい光に覆われる

祐一「左腕紋章刻印第一節開放!!」

祐一の左腕に紋章が浮かび出す

祐一「我、今消えし命の灯に新たなる生命の光を与えん。それまさに、不死鳥がもたらせし命の閃光! フェニックスフラッシュ!!」

祐一の体から光の鳥が飛び立ち
そのまま、あゆの体内に飛び込んでいった

すると、あゆがまばゆい光に包まれ、どんどん傷が癒えていき、顔色も元に戻っていった

祐一「よし! あゆ、おい! 大丈夫か?」

あゆ「あ……ゆういちくん……」

祐一「ちょっと待ってろ、今、解放してやるから」

祐一は近くにあった金属の柱を錬金術で剣に変換した

祐一「せいっ!」

一呼吸で、あゆの手足を縛っていた麻の縄を切り裂いていく
通常であれば、その恐怖から悲鳴の一つでも上がるところだが
あゆの場合、瀕死状態から急速の回復のため意識が朦朧としていたことが
功を奏していた

あゆ「あ……」

祐一「よっと」

拘束されていた物が無くなったため、あゆの体が重量の影響を受け
落ちてきたのを祐一はうまく受け止めた

祐一「あゆ、平気か?」

あゆ「うん、なにか、抜け落ちてる感じがするけど…」

祐一「大丈夫だ、それは師匠が取り戻してくれる。あゆ、歩けるか?」

あゆは祐一から降りて一人で立とうとするか、うまく立つことが出来ない

あゆ「あれ? 足に力が入らないよ…」

祐一「仕方ない、風よ!」

祐一はフライの魔法を使って自らとあゆを宙に浮き上がらせる

祐一「あゆ、俺にしっかり捕まっていろ」

あゆ「うん」

祐一「よし、さぁいくぞ!」




















右京「出口はこの辺でござったはずだが」

右京は、瑞穂の指示通り脱出路の確保を行っていた
まず、来た道を戻ったのだが、この空洞に入るための道がどうしても見つからないのだ

右京「おかしいでござるな」

しばらく周辺を探索するがやはり見つからない

右京「仕方あるまい、ここは応援を呼ぶでござる」

右京は精神を集中する

彼は遠距離にいる仲間に意思の疎通が出来る
つまり、テレパシーが可能なのである

右京『左京殿、左京殿。聞こえるでござるか?」
























『左京殿、左京殿…』

左京「これは、右京君? 右京君!」

佐祐理「左京さん、どうかしたんですか?」

左京「右京君が話しかけてきているんです」

佐祐理「でも、私たちには何も…」

左京「テレパシーです。右京君が私にテレパシーで話しかけているんです。どうしたんですか? 右京君」

右京『よかった、どうやら聞こえるでござるな』

左京「はい、大丈夫です」

右京『左京殿申し訳ないが、応援を頼みたいのでござる』

左京「応援……瑞穂さん達はどうしたんですか?」

右京『瑞穂殿は今、ウォレスと戦闘中でござる。祐一殿はあゆ殿、拙者達と同じホムンクルスの子を救出中でござる』

左京「右京君は何を?」

右京『拙者は瑞穂殿の指示で脱出路の確保をしていたのでござるが、退路が見つからないのでござる。来るときに来た道も見つからないでござるし、どうやら、ウォレスが何か仕掛けたのでござろう。このまま退路が確保できないと、ウォレスめが何も仕掛けていないとも限らんでござる』

左京「そうね、誰かを回したいのも山々だけど、皆、それぞれ互いを手助けするので手一杯ですし」

右京『参ったでござるな』

しばらく、考えていると左京の側に誰かがやってくる

「よかった、皆さん無事ですね?」

名雪「美汐ちゃん?」

香里「どうやってここに?」

美汐「私は潜入任務を得意としていますから、この程度の物でしたらたやすく進入できます」

佐祐理「あははー、でも私たちがここにいるってよく分かりましたね?」

美汐「ちょうど、ギルドに行こうと思っていたところに秋子さんとホムンクルスが戦闘しているところに出くわしまして、と言ってももう、終わっていましたが。そこで、秋子さんから事の顛末を聞きまして。それで、秋子さんに応援に行ってほしいと頼まれまして。詳しい場所はその場にいたホムンクルスに聞きました」

左京「終わっていた…」

美汐「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ、そこにいた皆さん、多少の怪我をしていましたがさほど酷くないようですし、秋子さんが丁寧にもてなしていましたから」

名雪「あ、あはは、お母さんらしいね」

佐祐理「! そうです! 美汐さん、頼み事があります」

美汐「はい、なんでしょう?」

左京「瑞穂さん達の応援に行ってほしいのです」

美汐「!? そういえば、瑞穂先生と祐一さんがいませんが、先生達がどうかしたんですか?」

佐祐理達はこれまでのことを美汐に説明した

美汐「そうですか、分かりました。えっと、左京さん。その右京さんがいる場所の位置が分かりますか?」

左京「はい、分かります」

左京は美汐に右京がいるであろう、場所の説明、そしてそこまでの道順を教えた

名雪「うわぁ、私、一回聞いただけじゃ覚えられないよ」

潤「俺もダメだ」

美汐「水瀬先輩に北川先輩、このくらい一回で覚えられないとハンターとしてどうかと…」

名雪&潤「すみません」

香里「天野さん、状況からしてあまり時間はないと思うの、急いでいってあげて」

美汐「了解です! では、失礼します」

美汐はそういうと、まるで突風が過ぎ去ったようにその場から消えた

潤「は、はえぇ」

香里「北川くん、うかうかしてると天野さんに抜かれるわよ」

潤「もう、抜かれている気がする(泣)」

左京「右京君、右京君。どうやら、応援、回せそうよ」

右京『助かるでござる。左京殿は先にここから脱出するでござる。拙者は瑞穂殿を手助けするでござる』

左京「分かった。右京君、必ず帰ってきて、お願い…」

左京の言葉に特別な感情がこもる

右京『左京殿……了解だ。最優先事項として完遂する』

左京の気持ちを感じて右京の普段はござる口調が一変する

特別な相手にしか使わない口調

そして、自分の決意を確認するものだった

佐祐理「左京さん、終わりましたか?」

左京「ええ、さぁ、行きましょう!」

左京は皆を連れて歩き出す
彼が必ず帰ってくることを願って

また、再会できることを信じて……

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