右京「おっと、参ったでござるな。このままだと、皆生き埋めでござる」
右京は落ちてきた岩盤を避けると焦り始めた
それもそのはず、先ほどの瑞穂とウォレスとの戦闘でこの空洞が崩れ始めているのだ
右京「ちっ! どなたかは存じ上げんが早く来てくれ、間に合わなくなるでござる!!」
「────もし、誰かいたらこの壁から離れてください。怪我しますよ」
焦る右京にどこからか声が聞こえる
どういうことだか分からなかったが、右京はとりあえず、言葉の指示に従い壁から離れた
「────爆雷牙!!」
大きな爆音を立てて壁は崩れ去った
Wind Of Alchemist
〜錬金術師の風〜 脱出
美汐は左京の言われた道をたどっていった
すると、目的の場所の手前で行き止まりに当たった
美汐「左京さんの言っていたのは確かにこの先。と言うことはこの壁を崩せば」
美汐は腰のバックパックからクナイを取り出し、一言声を掛ける
美汐「もし、誰かいたらこの壁から離れてください。怪我しますよ」
声は掛けた、もしそこに誰かいて巻き込まれても仕方ない
美汐はクナイを壁に投げつける
美汐「────爆雷牙!」
クナイが壁に刺さると同時に大きな爆発を起こし壁を崩した
美汐は壁に出来た穴から空洞内に侵入する
そこで、黒ずくめの男を見つける
美汐「右京さんですね?」
右京「そうでござるが、応援でござるか?」
美汐「はい、天野美汐と言います。左京さんにお願いされて来ました。先生達はどこです?」
右京「瑞穂殿は先ほどウォレスとの戦闘が終了したところでござる。祐一殿はあゆ殿を救出に向かってから会っていないでござる。おそらく、この崩壊で身動きがとれないのでござろう」
美汐「分かりました。では、私が相沢さん達を探索します。右京さんはこの出口の確保をお願いします」
右京「了解でござる!」
美汐「では、行きます!!」
美汐は音も立てずに右京の前から姿を消す
そして、右京は、空間の魔法陣を描く
それは、出口をすっぽりと覆う見えないバリアを形成する
これこそが、右京のホムンクルスとしての能力
自身の魔力を直接、物理干渉を防ぐバリアを形成することが出来るのだ
右京「あまり長くは持たないでござる。美汐殿、早く頼むでござる」
祐一「大丈夫か? あゆ」
あゆ「うん、大丈夫だよ…」
大丈夫なんかじゃない
祐一はおぶっているあゆが背中越しではあるが、息が上がっているのが分かった
祐一「くそっ、まずいなこのままじゃ…」
空洞の崩壊により、祐一達は身動きがとれなくなっていた
さらには、右京の場所まで分からなくなっていた
あゆ「はぁ、はぁ…」
あゆの状態も芳しくない、賢者の石の欠落で
補填されていた魔力が足りなくなってきているのだ
通常のホムンクルスだとこのようなことは起きない
もともと、賢者の石が無しの状態で生まれてくるからだ
しかし、あゆの場合は違うのだ
祐一も自身の魔力の上昇で相手の魔力の状態が分かるようになってきた
今のあゆは魔力がどんどん減少している
再度、魔力補填をしたいのだが、いかんせん、この状況では出来ない
祐一「うわっ!」
目の前に岩盤が落ち、足を止められてしまう
脱出路を探すが、どこも岩盤でふさがれている
祐一「万事休すってか、拙いぞ…」
「────爆雷牙!!」
突如、目の前の岩盤が破壊される
「よかった、ここにいましたか」
爆発時の煙により、誰だか姿が見えないが聞き覚えのある声
祐一「…天野か?」
美汐「はい、急いでここから脱出しましょう」
祐一「助かる、悪いが天野、誘導をお願いできるか?」
美汐「そのつもりです」
祐一「走っている時間はないな」
祐一はおぶっているあゆを左に、美汐を右に抱えた
美汐「な、何をするんですか?」
突然の事に美汐は顔を赤くして動揺する
祐一「悪いな、この方が安定するんだ」
美汐「安定?」
祐一「フライ!」
風を操り、三人は宙に浮く
祐一「浮いているとな、離れているよりくっついた方が宙間では安定するんだ」
美汐「そうなんですか、私は魔法はあまり使えないんで…」
祐一「ま、そういうことだからしっかり捕まっててくれ。行くぞ!!」
祐一は高速で出口へと向かった
瑞穂「だいぶ崩れてきたわね」
ウォレス「そんな、悠長なことを言っている場合か?」
瑞穂「分かっているわよ、地上だったら無理矢理脱出できるんだけど、ここ地下だから、空間跳躍しかないわね」
ウォレス「お前、空間魔法が使えるのか?」
瑞穂「あら、知っているのね?」
空間跳躍
文字通り、離れた空間へ一瞬にして跳躍する魔法で
テレポートといった方がわかりやすいだろう
瑞穂は片手を前に出し、詠唱を始める
瑞穂「世界を統べしものよ、我に空間を越える力を与えよ。遙かなる地へ瞬きの如く跳び躍らせる道を開け! シャイニングロード!!」
前に出した手の更に前方に空間の歪みが発生する
ウォレス「話には聞いていたがこれが、空間を超越する光の道。シャイニングロード…」
瑞穂「そ、界間移動を可能にするゲートの原型となった魔法。うわっと、ウォレス、説明している時間はないみたい、さぁ、行くわよ!」
ウォレス「ああ!」
瑞穂とウォレスは光の道の中へと消えていった
香里「みんな、こっちよ!」
香里が先頭に立ち、他の皆を研究所の外へと誘導する
佐祐理「ふえ〜、間に合いました」
名雪「やっと出られたよ」
潤「ほら、大丈夫か?」
皆、続々と外へ出てくる
左京「右京君、大丈夫でしょうか…」
舞「…約束したなら、大丈夫」
左京「えっ?」
誰にも聞こえないように呟いたつもりなのに舞がそれに答えていた
そして、自分と彼しか知らないはずのことを知っていた
左京「どうして貴方がそのことを」
まい「ごめんなさい…」
舞の後ろからぴょこっと小さいのが出てくる
左京「あなたは…」
舞「…この子は私の力。先生のおかげで体をもらったの」
まい「私は力の結晶みたいなもの。だから、お姉ちゃんと遠くの誰かとお話ししてたの聞いてたの」
舞「…この子と私は繋がっている。だから、この子の聞いたことは全部分かるの」
左京「そう、だから知っていたのね」
舞「…うん。右京さんは必ず来る。大丈夫、祐一もいる。先生もいる」
左京「ありがとう。そうね、きっと大丈夫ね…」
右京「うおおおっでござる!!!」
祐一「右京さん、もう少し、静かにしてもらえませんか!?」
右京「そんなこと言われても…うわああああ!!!」
祐一達は途中で退路を確保していた右京を引き連れて
高速で研究所内を飛行していた。しかも、超低空で…
加えて、落ちてくるもの、倒れてくるものをすんでの所で避けるものだから
慣れていない者にはたまったものじゃない
美汐「……」
ゴスッ!!
美汐の拳が右京の鳩尾に突き刺さる
右京「きゅう…」
祐一「えっと、天野さん?」
美汐「はい、静かになりました♪」
ものすごい笑顔で答える美汐に祐一は
祐一(なんか、天野って怖いんだな…)
そう思っていた
多少のアクシデントもあったが、美汐によるともうそろそろ出口だという
祐一「げっ、出口塞がってるぞ」
美汐「おそらく、瓦礫が積まれているだけですので強い衝撃で崩せるはずです」
祐一「とは言っても、留まっている時間はないな。仕方ない師匠の十八番やらせてもらうか」
祐一は、突進状態のまま魔法を発動させる
祐一「ドリルプレッシャー!!」
ドリルのような突風が出口の瓦礫を粉砕しながら
外へと飛び出す!
祐一「っしゃあ! うまくいったな!」
祐一はすでに脱出していた皆の元に降りる
香里「相沢くん!」
名雪「ゆういち!」
佐祐理「祐一さん!」
舞「祐一!」
潤「相沢!」
祐一「みんな、無事のようだな!」
左京「右京君!」
右京を見つけ、左京はおもわず、飛びつく
右京「おお、左京殿。無事で何よりでござる」
左京「うん…うん!」
祐一「あゆ、大丈夫か?」
あゆ「……」
返事がない
相当消耗が激しいのだろう
祐一は再び、魔力補填をするためにあゆを寝かせる
祐一「左腕紋章刻印第一節解放」
左腕がまばゆい光に包まれ、紋章が浮き上がる
祐一「我、今消えし命の灯に新たなる生命の光を与えん。それまさに、不死鳥がもたらせし命の閃光! フェニックスフラッシュ!!」
光は鳥の姿になり、そのまま、あゆに飛び込んでいく
瞬く間にあゆの血色が良くなっていく
祐一「よし、これで少しは持つな」
美汐「相沢さん?」
魔力補填が終わった祐一に美汐が近づく
祐一「ん? どうした天野?」
美汐「その、相沢さんは大丈夫なんですか?」
祐一「ああ、問題ないぞ? どうかしたか?」
美汐「いえ、以前、真琴にその魔法を使ったときには眠ってしまうほど相沢さん、消耗していましたから」
祐一「今は平気だな。まぁ確かに疲れていないと言えば嘘になるけど、眠ってしまうほど消耗はしていない。師匠によると俺の魔力が上がってきているからだって言っているけどな」
美汐「そうですか」
美汐は魔法に関してはあまり得意ではない
しかし、ほんの数日で一度使えば眠ってしまうほど消耗する魔法を
数度使うことが出来、なおかつ平気でいられるほど
魔力が成長したと言う話は聞いたことがなかった
美汐(もしかしたら、相沢さんも先生みたいなハンターになるかも知れませんね)
舞「…何か来る」
佐祐理「ふぇ? 何が来るの舞?」
まい「おねえちゃんだ!」
研究所の近くの空間が突然歪み出す
そして、その中から瑞穂とウォレスが飛び出してくる
瑞穂「よっと」
香里「先生!」
瑞穂「うん、みんな無事のようね」
祐一「師匠、あゆが…」
瑞穂「分かっているわ」
瑞穂は賢者の石をあゆの胸に置く
瑞穂「祐くん、よくここまであゆちゃんの状態を保ってくれたわね」
賢者の石がゆっくりとあゆの体の中に沈んでいく
あゆ「う、ううん」
祐一「あゆ! 大丈夫か!!」
あゆ「あ、ゆういちくんだぁ…」
瑞穂「よし、賢者の石の機能が再開したわね」
ウォレス「右京、左京…」
右京「ウォレス、言ったはずでござる。我らはおぬしと手を切ると」
ウォレス「それは分かっている。だが、これは私の意志ではないのだ。瑞穂からな、お前達のことを考えろと言われた」
左京「でも、マスターは私たちのことをモノと…」
ウォレス「ああ、少し前まではな。だが、私は瑞穂に負けたのだ、賢者の石を用いたにも関わらずだ。賢者の石さえあれば何でも出来ると思っていたが故にお前達をモノ扱いしてしまった。だが、賢者の石は万能ではないのだ。賢者の石は使われるべき者に使われる物なのだと瑞穂は教えてくれた。そして、倒された私に慈悲をかけてくれた。私は一度死んだようなものだ。生まれ変わったと思って瑞穂の言ったことに従おうと思ってな。恥を忍んで言おう、もう一度、お前達と一緒にいてはくれないだろうか?」
瑞穂「私からもお願いするわ」
右京「瑞穂殿…」
左京「右京君、私は良いと思います。こんな事言ったマスターは初めてですし」
右京「そうでござるな、瑞穂殿からも頼まれては断れないでござる」
ウォレス「すまない。だが、右京、左京。お前達は瑞穂に就け。その方がお前達にとって良いだろう。なに、私も瑞穂の傘下にはいるのださほど変わらんだろう」
右京「分かったでござる」
左京「了解です」
瑞穂「さて、話も済んだところでこの研究所直すからみんな手伝って。壊れたままじゃここに住めないからね」
「「「了解!!!」」」
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