アルフ「今渡した個体識別魔道具を肌身離さず持っていてください。瑞穂さんがネックレスタイプにしておいてくれましたから常に首に掛けておいてくれればよろしいかと」

秋子が入院した次の日、瑞穂は朝一番にアルフの元へいき、魔道具を配布、そして、すぐに千尋のところに行き同じく魔道具を配布していた
その魔道具をアルフが祐一達に瑞穂から頼まれた言づてと共に渡していた

祐一「それで、アルフさん」

アルフ「はい?」

祐一「師匠はどこへ?」

アルフ「ええ、秋子さんのところにいくとおっしゃっていましたよ」

香里「…祐一君、名雪は?」

祐一「ああ、部屋から出てこようとしない。相当ショックだったみたいだ。とりあえず、あゆにその場を頼んでおいたが…」

香里「そう、心配ね…思い詰めてなきゃいいのだけど」

Wind Of Alchemist 

〜錬金術師の風〜 
失踪

ガチャ

瑞穂「失礼しまーす」

瑞穂は秋子が入院した病院に来ていた

瑞穂「秋子さんご苦労様です」

秋子「いえいえ」

瑞穂が入った病室そこは秋子が居る病室だった
そして、そこには昨日大けがを負って入院していたはずの秋子が笑顔でベッドの上に体を起こしていた

瑞穂「すいません、秋子さん。咄嗟にこんな事をしてもらって」

秋子「さすがの私も驚きましたけど。瑞穂さん、理由、聞かせて貰えるんですよね」

瑞穂「もちろん」

瑞穂は秋子のベッドの横に座った

瑞穂「まず、昨日、私達が帰ってきたときに血を流している秋子さんを発見しました。血だまりが出来るほどだったのですが、風と光の回復魔法で90%ほど回復させることが出来ました。ただ、秋子さんほどの実力者に対してこれほどの怪我を負わせるものが居ると判断したとき、秋子さんが無事と情報が流れた際再び、水瀬家を襲ってくることが予想できました。よって、回復魔法で意識を取り戻しかけた秋子さんに意識レベルでコンタクトして周りに気づかれることなく、そのまま意識がないフリをしてもらいました」

瑞穂はそこまで一気に喋るとふぅとため息をついた

秋子「なるほど、そう言うわけでしたか」

瑞穂「秋子さん、あの夜のこと教えて貰えますか?なにがあったのか」

秋子「はい。先の戦闘で怪我をしたホムンクルス達を家に入れて治療していました。そこへ来客があったんです」

瑞穂「やっぱり・・・」

秋子「主人・・・幸信さんともうひとり」

もうひとり・・・
瑞穂は引っかかった
確かに秋子さんが気を許せる相手それは知り合いや身内だとは思っていたからだ
そして瑞穂は、その後の秋子の言葉に驚いた

秋子「瑞穂さんでした」

瑞穂「ええっ!?」

まいった。
まさか、自分を使ってくるとは・・・

しかし、よくよく考えれば秋子の旦那である水瀬幸信
7年前に死んだとされる人物だけが来ても秋子がそうそう信じるはずはない
そこに加えて自分の偽者がいるとなると話は別だ

話しをでっちあげて、秋子を信用させることなどいくらでも出来る
秋子は瑞穂のように魔力を分析し個体判別をする事が出来ないからだ
まったく、厄介な話しになってきた

瑞穂「これは、かなり警戒しないといけないわね」

秋子「そうですね、早くなんとかしないと更に被害が出るでしょう。相手の目的が未だに分かりませんが」

瑞穂「目的はおそらく私でしょう。私の偽者を使った辺りその線がますます濃厚になりました」

秋子「そうですか。それで、瑞穂さん。なにか、対策は?」

瑞穂「はい、個体識別魔道具を水瀬家関連の者すべてに配布しました。ですが・・・」

秋子「?」

瑞穂「私を使ってきたとなると矛先が少し変わりますね。水瀬家関連ではなく、私関連に警戒を変更しないと」

秋子「大丈夫ですか?なにかお手伝いを・・・」

瑞穂「秋子さんは療養してください。魔法で回復したとはいえ、まだ完治じゃないのですから・・・。大丈夫です。私一人ではそろそろ限界なのでセントラルに連絡を取ります」

秋子「そうですか。でも、セントラルに連絡をするとここにいることがバレてしまいますよ?」

瑞穂「! やっぱり秋子さんにはすべてお見通しでしたか・・・」

秋子「昔からそうじゃないですか。誰にも連絡を入れずに飛び回る。瑞穂さんの十八番です」

瑞穂「フフッ。まぁ、仕方ないことです。では、一応、秋子さんにも魔道具おいていきますから持っていてください」

秋子「分かりました。・・・ああ、それと頼みたいことがあるんですが」

瑞穂「? なんでしょう」

秋子「名雪のこと、よろしくお願いします」

瑞穂「あ・・・はい。分かりました。祐くんに任せます」

秋子「そうですね、その方が良さそうです」











病院を出た瑞穂は水瀬家の自分の部屋に戻っていた
そして、部屋の奥にある通信機の前にいた

瑞穂「こちら、セントラルハンターズギルド所属S級ハンター雪村瑞穂。応答ねがいます」

「・・・こちら、セントラルハンターズギルド通信局です。声紋分析完了、雪村瑞穂S級ハンターと確認しました。ご用件をどうぞ」

瑞穂「コマンドコード、YX7OSTT」

「そのコードは・・・ギルドマスター命令を受け付けました。マスターご命令を」

瑞穂「悪いんだけど、サブマスター出してくれる?」

「了解しました。少々お待ちください」

数分後・・・

「マスター!」

瑞穂「李音(りおん)ちゃん?ちょっとばかり頼みたいことがあるんだけど・・・」

李音「頼みたい事じゃありません! 一体何処に居るんですか!!」

通信機が壊れるんじゃないかと思うくらいの大音量でまくし立ててきた

瑞穂「ちょ、ちょっと落ち着きなさい。たしかに勝手に留守にしたのは悪かったけど・・・」

李音「マスターが居ないおかげで、その分の仕事が全部こっちに回ってるんです。落ち着いてなんて居られません!」

瑞穂「わかった、わかったから。今は緊急事態なのよ。ネクロマンサーが現れたのよ」

李音「ネ、ネクロマンサーですか」

李音の声のトーンが急に下がる
それはネクロマンサーがどれほど凶悪なものかを示していた

瑞穂「マスターオブサマナー、水瀬秋子がやられています」

李音「うそ・・・秋子さんが・・・」

瑞穂「本当よ、幸い命に別状はないけど、かなりまずかったから」

李音「分かりました、マスター。私に連絡を取ってきたと言うことは応援要請と取って良いのですね?」

瑞穂「さすがは李音ちゃん。話が早いわ。4時間以内に華音市にS級ハンターを2人派遣して頂戴」

李音「2人?2人で良いのですか?」

瑞穂「十分よ、人選はそっちに任せるから。それと、私の部屋にあるアレを持たせて頂戴」

李音「! アレですか。それほどなんですか?今回のネクロマンサーは」

瑞穂「まだ、接触してないから何とも言えないけど、備えはあるに越したことはないでしょう」

李音「了解しました。華音市にS級ハンターを4時間以内に配備ですね?」

瑞穂「よろしく頼むわね」

李音「あ、マスター」

瑞穂「ん?」

李音「お願いですから、連絡ください。心配しますから・・・」

瑞穂「・・・了解」

思った以上に李音に心配をかけてしまっている
瑞穂はすこし反省していた
でも・・・

瑞穂「こっちの方が楽しいんだもん・・・って言ったらきっと殺されるわね」

やっぱり懲りてなかった

瑞穂「さてと、一度ギルドに行ってみるかな」

部屋を出た瑞穂はギルドへと向かった











瑞穂「アルフいる?」

アルフ「はい、なんでしょうか?」

カウンターの奥の方に居たアルフは瑞穂の問いかけに応え、出てきた

瑞穂「魔道具の方は?」

アルフ「はい、祐一さん達に魔道具を配布しました。千尋さんは天野さんと一緒に郊外の森に行ってるはずです」

どうやら、昨日自分が指示したとおりに動いてくれているらしい
瑞穂はアルフからその報告を聞くとすこし安心した

アルフ「どうしました?」

瑞穂「?」

アルフ「いえ、なにか気を抜いたようでしたので」

どうやら、随分と気を張っていたらしい
アルフにはそれが見抜かれていたみたいだった

瑞穂「うん、ちょっと一度に沢山のことがあってね」

アルフ「そうですね、華音市でもこれほど沢山の事が起きたのは久しぶりですね」

瑞穂「まぁ、まだ気を抜ききるわけにはいかないんだけどね」

アルフ「ええ・・・瑞穂さん、今回の仕事終わったら、祐一さん達とどこかへ行ってみては?」

瑞穂「そうねぇ、あの子達と色々約束して随分延ばし延ばしになってるからそれもいいかもね」

アルフ「喜びますよきっと」

瑞穂「そのためにも、早くこの仕事を片付けないと」

アルフ「はい、いつでもご協力いたしますよ」

瑞穂「ありがと。じゃあ、千尋さんが帰ってきたら報告して。学園にいるから」

アルフ「了解しました」

瑞穂「ああ、それから、セントラルからS級ハンターが2名緊急配備されるから手続きよろしく」

アルフ「分かりました、あとはこちらにお任せください」

瑞穂「・・・助かります」

一言、そうお礼を言って瑞穂はギルドを後にした

ギルドには主であるアルフが瑞穂の後ろ姿を微笑んでみていた












ギルドを後にした瑞穂は歩いて学園へ向かっていた

商店街を抜けたところで見覚えのある少女が走っていた

瑞穂「あれは・・・あゆちゃん?」

瑞穂は、あゆの元に駆け寄り声をかけた

瑞穂「あゆちゃん、どうしたの? そんなに慌てて」

あゆ「あ、瑞穂さん・・・うぐぅ・・・」

あゆは今にも泣きそうな顔になっていた

瑞穂「ど、どうしたの。なにかあったの?」

あゆ「うぇ〜ん」

瑞穂「あらら・・・」

結局、あゆのダムは決壊した

ようやく、あゆから話しが聞けるようになったのはそれから10分後のことだった

瑞穂「なんてこと・・・名雪ちゃんが・・・」

朝、祐一から名雪のことを頼まれたあゆはしばらく名雪の部屋にいた
だが、お手洗いのため、ほんの数分部屋を離れた後
戻ってみると、ベッドの中が空になっていた

瑞穂は名雪が居なくなった様々な原因を考えていた

何者かによる誘拐
自らの意志による失踪

一度寝付くと中々起きない名雪から自らの失踪は考えにくかった
そうなると何者かによる誘拐なのだが
その何者かが誰なのか・・・

もし、今起きているネクロマンサー関連であるならば質が悪い

瑞穂「とりあえず、名雪ちゃん探さなきゃ」

あゆ「うん」

瑞穂は名雪の魔力探査を行う

瑞穂「・・・こっち、名雪ちゃんの魔力残渣がこっちから感じる」

瑞穂はあゆを連れて名雪の方へ向かっていった

「・・・名雪が・・・これはまずいですね」

物影に隠れていた男性
それは、そう呟くと消えるようにその場からいなくなっていた













瑞穂「どうして?町からどんどん離れてる」

瑞穂とあゆは名雪の魔力残渣を追っていた

どういう訳か、名雪の痕跡は華音市を抜けていた

おかしい
女の子一人で短時間にこんなに移動できるわけがない

瑞穂「誘拐の線が濃厚になってきたわね」

瑞穂はふいに足を止めた

あゆ「どうしたの瑞穂さん?」

瑞穂「あゆちゃん、悪いんだけど祐くん達に名雪ちゃんが居なくなったことを知らせて欲しいの」

あゆ「・・・わかった」

瑞穂「結構な距離をきちゃったから、魔法で送るわね」

あゆ「・・・うん」

なぜか、あゆは身構える

瑞穂「どうして身構えるの?」

あゆ「祐一くん達から聞いたの。怖いって」

がくっとこける瑞穂

瑞穂「・・・それは、身構えるからよ。いい、力を抜いて風に身を任せなさい。そうすれば、大丈夫」

あゆ「うん!」

元気よく応えるあゆをみて瑞穂は魔法をかける

瑞穂「風よ、彼の者の体を運ぶ風・・・」

そこまで言いかけたとき、あゆの体が反応した

あゆ「え?」

バサッ
そう、こんな擬音がぴったりな感じにあゆの背から純白の翼が生えた

瑞穂「あゆちゃん、それ・・・」

あゆ「ええっ!?」

あゆは自分の背中から生えてる翼を見てびっくりしていた

おそらく、これがあゆのホムンクルスとしての能力
瑞穂の魔法に反応して開花したのだろう

あゆ「瑞穂さんこれ・・・」

瑞穂「えっと、多分、あゆちゃんの能力かしらねぇ。翼、動かせる?」

瑞穂に言われて、あゆはぎこちなく翼を羽ばたかせる

あゆ「動く・・・みたい」

発現したばかりでまだ自由には使いこなせないのだろう

瑞穂「ふむ・・・どうやらサポート程度の魔法でいいみたいね。風よ!」

瑞穂が風の魔法であゆを浮き上がらせる

あゆ「うわわっ」

瑞穂「落ち着いて、翼に風をとらえなさい。そうすれば、風があなたを助けてくれます」

あゆは翼を大きく広げ、風を翼に当てる
すると、あゆの体は安定してどんどん浮き上がっていく

瑞穂「うんうん。その調子。あとは自分で翼の使い方を習得しなさい。私じゃ教えられないしね」

あゆ「なんとか、やってみる」

あゆは翼を羽ばたいたり拡げたりして空を飛び回る

あゆ「瑞穂さーん、なんとか飛べるよー!」

瑞穂「そう、じゃあ、祐くんに伝言頼むわねー!」

あゆ「わかったー!」

そういうと、あっという間にあゆは祐一達が居る町へと飛んでいった

瑞穂「さて、隠れてても私には丸わかりなんで出てきて貰えるとありがたいんだけど?」

瑞穂が何もない空間に向かってそう言うと、ふいに空間が歪み男が現れた

「流石、瑞穂さん。おわかりでしたか」

瑞穂「まぁね。バニッシュ程度じゃ魔力波動までは隠しきれないからね」

「そうでした・・・。それで、名雪はこの先ですか?」

瑞穂「はい、間違いありません。奪取者はおそらく、あなたが追っているネクロマンサーでしょう」

「そこまで、お見通しですか」

瑞穂「伊達にセントラルに所属してませんから♪」

「ふふ。では、二手に分かれましょう。あなたはこのまま魔力残渣を追ってください。私は独自のルートで奴を追います」

瑞穂「了解しました」

ではと一言いい、男は再び消えていった

瑞穂は、再び名雪の魔力残渣を追い始める
向かうは、華音市から南方。
三咲町

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