瑞穂「秋子さん、名雪ちゃんを連れて急いでここから離れて!」

秋子は瑞穂から名雪を受け取り、ネクロマンサーから大きく飛び退いた

それと同時にネクロマンサーを中心に一度空間が集束した後、元の空間に戻った

ただ一つ違ったのは・・・

瑞穂「魔力が・・・消えた?」

「封印空間とでも言いましょうかね。この空間では魔法の一切を禁じさせて貰いました。私を除いて」

瑞穂「くっ」

状況は不利に陥った

だが、攻撃の手段がないわけではない
瑞穂にはまだ、手が残っている

Wind Of Alchemist 

〜錬金術師の風〜 
混戦

瑞穂「錬金術に、魔法が使えないんじゃ剣術はほぼ無理か。仕方ない」

瑞穂は普段武器を持ち歩いていない
その理由として本人曰く、邪魔になるから

その代わり、瑞穂は地中から金属を収集、結合し剣を作るか或いは
魔力を用いて空間を操り独自の倉庫と呼べる空間よりエレメンタルソードを引き出すことによって
武器を得ている
今回、その手の行動も封じられている

瑞穂はその状況の中での答えとして、素手で構えた

「素手で私とやる気ですか。私に近寄ることが・・・がっ!」

喋っている途中でネクロマンサーが吹き飛ばされた

瑞穂が瞬動を使って瞬時に移動
そのまま回り蹴りを放った

瑞穂「あまり、戦闘中に隙を見せない方が良いわよ。ハンターはね、あらゆる状況下を想定して訓練を積んでるの。もちろん魔法が使えない状況下でもね。私の場合、そう言うときはコレなんだけどね」

そういって、手のひらひらと振る

先のウォレス戦でも見せた、雪村神拳流である

「その瞬間的な動作。なぜ、魔力はつかえないはずでは・・・」

瑞穂「だから、みすみす自分の能力なんて教えないって。そんなに知りたければ、戦いの中で知りなさい」

「・・・そう、させて貰いましょう!」

突然、ネクロマンサーから大量の魔力が発せられた

瑞穂「・・・肉体変化してるわね」

ばきばきと音を立てて、ネクロマンサーの肉体が巨大硬質化していく

「グォォォォォ・・・・」

瑞穂「コレはまた、醜くなっちゃって」

「仕方アリマセン、強サヲ追求スルトコレシカナイノデ」

ヒュンと風切り音と同時にネクロマンサーの体が消える

ドン!

次の瞬間には瑞穂はネクロマンサーの攻撃を受け止めていた

瑞穂「なかなか、良いスピードね。・・・名前があるなら聞いておこうかしら?」

「私ノ名前ハ、ネクロマンサー、ウルド。マァ、ネクロマンサーダッタノハ7年前デスガネ」

瑞穂「やっぱりそうか、その感じじゃ、ネクロマンサーの能力はサモンシール位か」

ウルド「ゴ名答、デスガ、7年間アノ娘ノ中ニイタノハ無駄デハアリマセンデシタネェ」

瑞穂「・・・どういうことかしら?」

ウルド「アノ娘、内ニ高密度ノ魔力ヲ内包シテイタ。ソコマデハ、別段変ワリハナイガ一ツ、面白イモノヲ内包シテイタ」

瑞穂「?」

ウルド「知リタケレバ、戦イノ中で知レト言ッタノハアナタデシタネ?」

瑞穂「くすっ、そうでしたね。では、そうさせて貰いましょうか!!」






























秋子はその頃、ウルドと瑞穂から数百メートル離れた場所に退避していた

秋子「これは・・・まずいですね」

名雪に触れていた秋子があせり始めていた
魔力を根こそぎ奪われた名雪は体温を失い、脈拍も微弱となっていた

こればかりは、回復魔法ではどうにもならない。
ヒールウインドやリカバリーなどの回復魔法は通常、対象者の生命力を強化し自然治癒力を促進
物理的な外傷による体力の減少より早く体組織を修復することによって体力の回復を図っている

だが、魔力を奪われた名雪に回復魔法をかけたところで物理的な外傷ではないので
全く意味がない。

秋子「助けるためには・・・魔力の補填」

秋子はそう呟くと腰のバックパックから小さなナイフを取り出す
そして、それを自分の手首に当てると一気に引いた

秋子「くっ!」

ぽたぽたと血が手首から滴り落ちるが、構わずに名雪の手首にナイフを当てる
そして、自分と同じように名雪の手首を切った

名雪の手首からも血が流れたがその量がすくない

秋子「やっぱり、心拍が弱ってきてる」

いそいで、秋子は自分の切った手首と名雪の手首を合わせる

秋子「これで!」

秋子は合わせた部分に魔力を集中させる

秋子「ブラッディーインジェクション!

秋子の魔力が傷口を通して名雪に流れ込む

しばらくすると、名雪の体温が上昇し、脈拍も正常値まで落ち着いてきた
が、その代わりに秋子の体力が激しく消耗してしまった

秋子「よかった・・・」

名雪の回復を確認すると、秋子は意識を失いかけていた

意識が遠のくさなか、誰かの声が聞こえる

どうやら、男性の声。一人ではなさそう

どうか、名雪を助けて欲しいと願いながら、秋子の意識はとぎれた






















あゆに状況を知らされ、祐一は香里以下他のメンバーより早く瑞穂の元へ向かっていた

大体の場所をあゆから聞いていたとはいえ、詳しい場所まで把握は出来てなかったが
ここでも、祐一は新たな能力を開眼させようとしていた

祐一(慌てて、飛び出したが詳しい場所がさっぱりだな。だけど、なんだかこっちのような気がする)

なんとなくではあるが、祐一にも魔力探査の能力が備わってきていた
ただ、瑞穂の魔力を視覚イメージ化する探査とは違い、今の祐一のは直感的なものであった
その分、正確性には欠けるがあるのとないのとでは大違いである

祐一(ん? 大きいのが二つ、それから、小さいのが二つ・・・)

大きい方の一つははなんとなく、瑞穂だと直感したが
小さい二つは始めは分からなかった
だが、すぐに思いついた

祐一(まさか!)

祐一はまず、小さい魔力の方へ向かった

イヤな予感がする祐一は、フライの最大速力を使い、その地点へ向かう
ものの数秒で到着した祐一は、そこで倒れている秋子と、名雪を発見した

祐一「名雪! 秋子さん!」

急いで駆け寄った祐一は何かを感じ取った

祐一「足りない?」

数度、魔力補填を行ってきた祐一は対象の本来あるべき量の魔力が分かるようになっていた
しかし、今の名雪と秋子がその量と大幅に下回っていた

祐一「魔力を回復させないと」

祐一は、まず、秋子に手をかざす

祐一「左腕紋章刻印第一節解放!」

左腕に紋章が光り輝く

祐一「我、今消えし命の灯に新たなる生命の光を与えん。それまさに、不死鳥がもたらせし命の閃光! フェニックスフラッシュ!!

祐一の体から光が飛び出し、秋子の体に吸い込まれていく

祐一「よし、秋子さんの方はこれでよし。次は名雪だ!」

名雪にも秋子と同様の紋章魔法を使うが

祐一「魔力が補填できない?」

名雪に魔力を補填するが体内に安定せずに体外に放出してしまっているようだった

先ほど、秋子が名雪に魔力を譲渡していたが

その分の魔力はほとんど流れ出してしまっていた
一時的に命をつなぎ止めることは出来ていたようだが

「ふむ・・・どうやら、体内の魔力の通り道、マジックサーキットが破断しているみたいですね」

どうしようかと、思っていた祐一にどこからか男が現れた

祐一「アルフさん?」

アルフ「心配になってきてみれば、やはり大変なことになっていましたね」

祐一「どうしてここが?」

アルフ「それより、名雪さんを何とかしないと」

アルフが名雪の体に手をかざす

アルフ「ふむ、どうやら、ここが破断しているみたいですね。祐一さん、左腕の紋章刻印第二節です」

祐一「え?」

なぜ、祐一が紋章魔法の使い手なのを知っているのか
そもそも、左腕紋章刻印第二節とは・・・
それに、たやすく破断した場所を特定したこと

アルフ「いいですか、相手のことを強く思うのです。助けたいと。救ってやりたいと」

祐一「わ、わかりました」

祐一は名雪に手をかざす

祐一(俺は・・・名雪を助けたい。7年も俺の事を待っていてくれた名雪を。俺は、名雪をこのまま死なせたりはしない!)

左腕にまず第一節の紋章が浮かび上がる
そして、頭に中に第一節の詠唱が流れる

『我、今消えし命の灯に新たなる生命の光を与えん。それまさに、不死鳥がもたらせし命の閃光』

その詠唱の奥でもう一つ、詠唱が流れる
流れるまま、祐一はその詠唱を口にする

祐一「我が産みし閃光は、途切れた命を再び呼び戻す福音。リザレクションゴスペル!!」

祐一の左腕に二つめの紋章が浮かび上がり、周囲が暖かな光に包まれる

そして名雪の体がゆっくりと浮かび上がり、淡く発光する

魔力を感じ取ることが出来る物ならば名雪の体に魔力が戻っていくのが分かるだろう

しばらくすると、光が収まり、名雪の体は地に降りた

アルフ「さすが、隆之さんの息子さんだ」

アルフが祐一に笑顔を浮かべて近づいてくる

祐一「! 親父を知ってるんですか?」

アルフ「ええ、古くからの友人ですよ。それより、あまり和んでもいられません」

祐一「な、なんだこいつらは」

気がつくと、祐一達を数名の人が囲んでいた

ただ、人と違うところは

祐一「こいつら、何かおかしい」

アルフ「どうやら、生気が感じられませんね。ということは、この辺一体に出没しているというグールか・・・」

祐一「グール?」

アルフ「詳しい話しは後にしましょう。向こうさんはどうやら、こちらを敵・・・いや、餌と認識したみたいです」

祐一「二人を守りながら戦えるのか?」

アルフ「大丈夫。いいですか、グールは生きた屍。命を象徴する火、或いは全てを照らし暴く光の属性に弱いのです。うまく、利用してください」

祐一「わ、分かりました」

アルフ「では、行きます!」

アルフはグールとの、祐一は名雪と秋子を守る戦いに入った








瑞穂「よっ、はっ!」

ウルド「グオォォォォォォッ」

まるで爆発したような衝撃が瑞穂の攻撃とウルドの攻撃がぶつかるたびに周囲に放射される

しばらく戦っていて瑞穂はおかしな事に気づく

瑞穂(ん〜、本気じゃないわね)

ウルドの表面筋肉を見る限り、今受けている打撃の重さが軽すぎるのだ

瑞穂「ストップ!」

ウルド「?」

瑞穂「拍子抜け。あなた、本気じゃないでしょ」

ウルド「ホウ、見抜カレテイマシタカ」

瑞穂「まぁ、色々と事情があるようだけど?」

ウルド「フム、話スノハモウ少シ後ト思ッテイタノデスガ」

瑞穂「あー、とりあえず元に戻りなさい。そのしゃべり方じゃ聞きにくい」

ウルド「ウム」

バキバキと音を立てて元の姿に戻っていく

瑞穂「あまり良い見せ物じゃないわね」

ウルド「何か?」

瑞穂「いえ、なんでもないです。で、もしかするとネクロマンサーっていうのも嘘っぽいんだけど?」

ウルド「いかにも。私はネクロマンサーではありません。まぁ、姿は7年前に現れたネクロマンサーに似せてありますが」

瑞穂「なるほど。で、とどのつまり、あなたは何者?」

ウルド「眷属です。水瀬名雪の眷属です」

瑞穂「眷属・・・あー、秋子さんのと同じ」

ウルド「厳密に言えば同じではないですが。水瀬名雪・・・私にとってはマスターなのですが。マスターは私の事は知りません」

瑞穂「知らないって」

ウルド「いえ、正確には覚えていないですね。私が生まれたのは7年前、相沢祐一の力にマスターが触れたことがきっかけです」

瑞穂「・・・教えなさい。7年前、祐くんが何をしたのか」












私はマスターである、水瀬名雪の断片的な記憶とそれを補うために土地の記憶を使って
お話ししましょう。

7年前、ゲートが開き、中からクリーチャーが出現しました。

普段であれば、ゲートキーパーがクリーチャーを阻止したのですが
数が多すぎて、阻止し損ねたようでした

クリーチャーは街中に現れ、町の被害を抑えるためにハンターが出撃しました。
その中にマスター、相沢祐一、月宮あゆ、美坂姉妹、川澄舞、倉田佐祐理、天野美汐など、多数のマスターのご友人のご両親が
殲滅に当たりました。

この時、マスター達はものみの丘と呼ばれる場所で遊んでおりました。
いたのは、マスター、相沢祐一、月宮あゆ、川澄舞の四名です

そして、その丘にもクリーチャーは現れました

クリーチャーはまず月宮あゆに襲いかかりました
傷を負った月宮あゆをみて
相沢祐一が怒りの感情から内包されていた魔力を暴走させています
暴走した魔力は周囲にいる者に影響を与えました。

月宮あゆは怪我とショックで心停止状態にあったのですが魔力が体に留まった状態に
川澄舞はもともとあった魔力が独立し、具現化状態に
そして、マスターは眠っていたマジックサーキットが活性し魔力飽和状態なり
それを処理するために本能的に私が生み出されました

クリーチャーは暴走した相沢祐一の紋章魔法で消滅しましたが

暴走した相沢祐一には高位施錠式結界封滅法を

魔力飽和状態になったマスターには自己魔力抑制封法を

魔力が独立した川澄舞は魔力が安定していたので特に処理はありませんでした。

月宮あゆは通常心停止を起こせば魔力が体内から枯渇し死に至るはずでしたが
おそらく相沢祐一の魔力に影響を受け体内に魔力が残ったままになり、元の体をそのまま素体として
利用し、ホムンクルス化することにより命をつなぎ止めました。言うなれば半ホムンクルスと言えるでしょう

いずれも、これらの処理はそれぞれの親が担当しました
これを最後に事象は終息しました

ウルド「以上が簡単ですが概略です」

瑞穂「一つ質問なんだけど?」

ウルド「何でしょう」

瑞穂「どうして、ウルドはマスターである名雪ちゃんを傷つけるようなことを?」

ウルド「あれは予想外でした。本来ならば、もうすこし、マスターの魔力が成長するまで私がマスターの余剰魔力を処理するはずでしたが、血まみれの水瀬秋子の姿を見た際に一時的な感情の爆発から私はマスターからはじき出されました。その際に魔力回路、マジックサーキットに損傷を受けてしまいました。その修復のために一時的にマスターの魔力を限界まで減少させる必要があったのです」

瑞穂「なるほど、魔力の流れを抑えてそれ以上崩壊しないようにし、修復をしやすくしたのね?」

ウルド「そうです。マスターの中から見ている限り、マジックサーキットの修復が出来るのはあなたか、相沢祐一のどちらかです。今回は成功率を考えて、あなたを魔力の減少させる役を。相沢祐一を修復役に選びました」

瑞穂「それで、あなたは私と戦ったのね」

ウルド「はい、私が実体化して戦闘を行うことが一番マスターの魔力を消費することですから」

瑞穂「これで、名雪ちゃんの件は納得したわね。でも、まさか祐ちゃんがマジックアプローチャーなんてねぇ」

ウルド「マジックアプローチャー?聞いたこと無い単語ですねぇ」

瑞穂「その魔力回路は人によって数が違うんだけど、魔法を使える人ならどんな人にも数本どの回路とも繋がっていない回路があるのよ。それをミッシングサーキットって言うんだけど」

ウルド「その回路をつなげることが出来るのがマジックアプローチャーですか?」

瑞穂「つなげるというか、きっかけを与えると言った方が正しいわね。アプローチだから。このミッシングサーキットって自らの力じゃ絶対開けないのよ」

ウルド「そうですか。! マスターの状態が回復に向かいました。どうやら、相沢祐一は修復に成功したようですね」

瑞穂「それは良かった。さて、ウルド。あなたの行ったのはあまり褒められるものではありません。ですが、今回は水瀬名雪の件を考慮して不問とします。で、ウルド、いそいで名雪ちゃんの所に向かうわよ」

ウルド「! 私も妙な気配を感じました。これは一体」

瑞穂「あなたのマスターに命の危険が迫っているってことよ。急ぐわよ!」

ウルド「! 了解しました。影飛びを使って瞬時移動を行います。お先に」

ウルドの体が地中に消え、それと同時に気配も消えた

瑞穂「私もぐずぐずしてられない!」

フライの最大速度を使い、祐一達にむかった

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