NPO法人エトセトラ / Qでつなごう!幸せの子育て・目次

問題13 見たい番組があるので今ならテレビをつけてもいいでしょうか。

 4ヵ月を過ぎると視力も発達してきますし、考えたり、働きかけたりする行動も活発になります(「いないないばあ」を喜ぶ時期です)。様々な能力が発達するにつれて、赤ちゃんは失敗と成功を経験するようになります。能力が身につくということは、その能力を使う機会が増えてくることでもあります。

 たとえば、お母さんがこっちにやって来たことを赤ちゃんが察知したとします。「あっ!お母さんがこっちに来るぞ!ぼくを抱っこしてくれるのかな?」などと思ったとしましょう。そして本当にお母さんがやって来て、赤ちゃんを抱っこしたとすれば、それは赤ちゃんが「察知→抱っこ」という成功体験を獲得したということになります。自分の能力を使って成功を手に入れた瞬間です。お母さんの抱っこもうれしいはずですが、自分の能力を使って成功を手に入れるということもうれしいことにちがいありません。大人だって自分の能力を発揮して手に入れた成功はうれしいはずです。それと同じです。

 聴力や視力や考える力が発達するにしたがって、能力を発揮する機会は増えます。しかし、周囲の大人がそのことに気づいてあげられないと、赤ちゃんは発達させた能力を発揮することができません。ベッドの上でお母さんの動きを探ろうとしてもテレビが大音量で鳴っていれば集中することもできません。集中力や自信は大きくなってから獲得するよりも、4カ月前後の時期に獲得しておいた方がその後の成長にどれだけプラスになるか計り知れません。逆に、お母さんを察知することが困難で失敗ばかり経験してしまったり、自分の能力を発揮する機会のないまま機械的な抱っこしか経験できないで育った赤ちゃんは自己有能感を獲得できないまま成長していくことになるわけです。

【答え】

 テレビはつけない方がよい

 理由はもうひとつあります。それはお母さんがテレビを見ている間は、赤ちゃんへ声をかけることができないという点です。赤ちゃんが起きている時間は貴重です。その時間はミルクを飲んだり、オムツを換えてもらったりするだけではありません。お母さんに話しかけてもらえる貴重な時間です。2ヵ月~4歳までの乳幼児275人に対して言葉の発達を調査した結果があります。[35]
 それによりますと、子どもの言葉の発達は他の人との会話の量によって規定されることがわかっています。ミルクを飲んだり、オムツを換えてもらったりしてもらっても、話しかけられていないとしたら言葉の発達は遅れます。また、こうしたお世話を無言でおこなうことは不自然です。笑顔や見つめ合いがないとすれば、〝針金のサル〟と同じで応答のない機械的な作業になってしまいます。赤ちゃんの発達にマイナスに作用することが想像できると思います。

出題のポイント

問題の聞き方から「つけない方がよいのかな」ということは予想できるかもしれませんが、その理由となると答えることは難しいのではないでしょうか。答え方は「よい」か「よくない」かのどちらかで正解なのですが、ベビーベッドの上にいる赤ちゃんに思いを寄せると、その理由が見えてくる人もいると思います。できればその理由を引き出すことにも挑戦してみてください。

[35]榊原洋一『エビデンスに基づく乳幼児保育・発達障害トピックス』(診断と治療社)126-128

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