NPO法人エトセトラ / Qでつなごう!幸せの子育て・目次

問題18 登園ぎりぎりの「自分でやる!」にどう対処しますか。

 なるほど。「遅れてしまう!」というイライラはその場のものですが、もう少し長い目で見れば、自分でやらせてあげた方が早かったということですね。

 はい。それだけではなく、「息子の成長」というもっともっと長い目でこのことを考えたときに、遠回りのように思えることが、実はとても重要な意味を持っていることにも気づきました。自分の力で最初から最後までやり遂げたいという行動は、その時期特有の「敏感期」と呼ばれるものであり、「一生に一度の大切な成長のチャンス」であることをあとから教えてもらいました。仕事をもちながら子育てしていると、子どもの「自分でやりたい」という気持ちにじっくり付き合ってあげることがなかなかできないのが実情ですが、親がちょっと我慢することによって、トータルでみれば「楽」になることが結構あるように思いました。

 敏感期というのはモンテッソーリが発見した特性ですね。2歳~3歳にかけての子どもが「この順番じゃなきゃヤダ!」とか、「これはパパのもの!これはママのもの!」とか、順番、場所、所有者、習慣などにこだわる時期のことを言います。あまりにも言うことを聞かないので反抗期と間違えられるくらいですが、反抗しているのではなく、「これはこうあるべき」という秩序にこだわっているわけです。「『いただきます』を言わなきゃダメでしょ!」と指摘したり、「ここはママが座る場所でしょ!」と場所を指定したりするわけです。大人はちょっとくらいいつもと違ってもいいじゃないかと考えることができますが、この時期の子どもは「世の中には秩序というものがあり、それを守らなければいけないのだ」ということを人生の中のこの時期に身に付けようとしているわけです。子どもが大きくなってから「ルールを守りなさい」とか「順番を守りなさい」と言っても言うことを聞かなくて困るという話がよくありますが、ルールや順番や整理整頓や礼儀や善悪などの秩序感覚は2歳や3歳の敏感期に培われるものなのです。[5]

 急いでいる中でも、なんとか時間をつくって「やらせてあげる」という方向にちょっとでも近ければ正解です。そのためにはこんな方法もあります。「予告」です。時計を示して「長い針が12のところに来たら出発するからね。それまでに自分で用意しておくんですよ」そう言って自分でやらせる時間をつくってあげる方法です。これはただ待っているよりは少し合理的です。しかも自分のやり方で最初からやりたいという子どもの気持ちを尊重したやり方です。いずれにしても時間はかかります。お母さんにとっては、あれこれと万策の工夫が求められる「闘い」の時期です。

【答え】

やらせてあげる(秩序感覚を育てるために)

[5]相良敦子『お母さんの「敏感期」』(ネスコ)57-58

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