NPO法人エトセトラ / Qでつなごう!幸せの子育て・目次

問題22 「立派な父親」の四つの条件とは。

 夜回り先生が呼びかけている印象的な話があります。土曜か日曜の朝に、繁華街や歓楽街の光景を我が子に見せてあげてくださいという話です。きらびやかに見える夜の光景が、朝日の中ではどのような姿になっているのか。きれいに見えたネオンや看板が、実は薄汚れた古臭い作り物であったり、路上にはごみや汚物が散らかったままであったりするでしょう。夜回り先生こと水谷修氏は言います。[13]

 美しいものを見せるのだけが親の責任ではありませんし、教育でもありません。子どもたちに、醜いものや本当の姿を見せることも必要です。夜の世界がつくりものの世界だということをきちっと教えるのも、親の責任の一つです。

 夜回り先生らしい強烈なメッセージです。「いろいろなことを教える」という父親の役割を語るときに、このメッセージがひとつのイメージになるのではないでしょうか。

 もうひとつ、今度は逆の視点からこの問題を見ておきます。「いろいろなこと」の「いろいろ」は範囲が広いので「何でもあり」と言えば何でもありです。子どもがその場で体験したことに応じて教えてあげるところに意味があるので、何もないところで教えるのは不自然になるでしょう。しかし、世の中に存在する様々な事象をあらかじめ整理しておくことも、いざ教える時に役立つはずです。簡単に言いますと、何が良い行いで何が悪い行いであるかということをはっきりさせておくことが大人の側に必要だということです。それがあるからこそ、いざという時に子どもに教えることができるわけです。

 では、良い行いと悪い行いを整理したものとは何でしょう。世の中にはたくさんの社会規範があって「これだ」というものを限定的に示すことは難しそうです。平安時代末期から明治時代末期まで道徳の教科書として使われていた『童子教』という本には50近くの項目があります。現在学校で教えられている道徳の時間でさえ16〜24の内容項目があります。これらをもっとシンプルにしたものはないのでしょうか。そう考えてこの作業に着手したのが向山洋一氏です。向山氏の『心を育てる家庭学習法』の中から引用します。

 しんとなる規範は、せいぜい十もあればいいのです。いえ、五つぐらいにしぼってもよいでしょう。 それは何なのか! だれも知りません。ポイントのある指導がなされていません。日本の「道徳教育」では、一度としてこの点が論議されていないのです。

 そこで向山氏が提唱したのが次の五つです。[14]

 「人間の生き方の原理・原則」
 第一、他人のことを心から考える
 第二、弱いものいじめをするな
 第三、世のため、人のためになることをする
 第四、まず自分のできることをしよう
 第五、先人に学ぶ

 我が子に、「いろいろなことを教える」ときの芯≠ノしていただけたらと思います。

[11]水谷修『夜回り先生50のアドバイス・子育てのツボ』(日本評論社)62
[12]林道義『立派な父親になる』(童話社)16
[13]水谷修『夜回り先生50のアドバイス・子育てのツボ』(日本評論社)112-113
[14]向山洋一『心を育てる家庭学習法』(主婦の友社)38

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