NPO法人エトセトラ / Qでつなごう!幸せの子育て・目次

問題23 明治時代の父親はどんな父親?

 一つは、明治時代の父親の姿にも出て来ましたが「抱いて歩き回って何かを見せる」という方法です。これは親子が一緒に同じものを見るという共同注視(ジョイント・アテンション)です。私もよくやりました。私がよくやったのはスーパーマーケットで母親が買い物をしている間に子どもを抱っこして店内を歩き回り、「これはキャベツだよ」「これはジャガイモ」「あ、ブロッコリー!」というように商品の名前を教えることでした。近所を散歩するときにも同じようなことをしていました。

 二つ目の方法は「ヒコーキ」や「逆さま」という遊びです。子どもを両腕でつかんでヒコーキのような格好をさせて家の中を「ブーン」と言いながらあちこちを飛び回る遊びです。布団の上で逆さまにする遊びもよくやりました。頭を揺らさないように気を付ける必要はありますが、逆さまにするだけで子どもは大喜びです。逆さ感覚を身に付けるためにも体験させておきたい遊びの一つだと思います。

 三つ目は「膝の上に乗せる」ということです。上に乗せて何かをするわけではありません。テレビを見ているときに子どもが乗ってきたり、新聞を読んでいるときに乗ってきたりという感じで、そこが子どもの居場所になる時期がありました。小学校1、2年生の頃だったと思います。童子教ではありませんが、そのときに頭をなでてあげることもよくありました。

 四つ目は「いないないばあ」です。これは一歳前後の頃の遊びです。

 五つ目は「こちょこちょ」系の遊びです。いきなりこちょこちょするだけでなく、「アリさんがやって来たよ」と言ってアリさんに扮した人差し指が子どもの足や腕に登って行き、最後は首のあたりをくすぐるという遊びです。同じような遊びで、蚊に扮した人差し指が「ブーン」と飛んで来て首のあたりを「チクッ」と刺すという遊びも随分やりました。

 桜美林大学の山口創准教授は『子供の「脳」は肌にある』という本の中で「こちょこちょ」と「なでなで」は日本の伝統的スキンシップ法であるとして、その効果を紹介しています。簡単に言いますと「思いやりの心が育つ」ということです。スキンシップをすると、「した人」も「された人」も脳内からオキシトシンというホルモンが分泌されます。オキシトシンは「愛情ホルモン」とも呼ばれ、分泌されることで愛情が育まれ、信頼する気持ちを強める働きをします。情緒が安定し、他人と関わる積極性も育つことから思いやりの心も育ちます。[17]

 次のような調査結果もあります。中学生の子どもを持つ親1000名を対象に、スキンシップが親子関係や人間形成にどう影響しているのかを調べたものです。それによりますと、スキンシップをとっていた親子は72.3%が現在も親子関係が「良好」と回答したのに対し、スキンシップをまったくしなかった親子ではわずか18.2%だったということです。また、スキンシップを意図的に取っていた子どもの成績は「良い」が27%、「悪い」が9%だったのに対し、親子のスキンシップを取っていなかった子どもの成績は「良い」が15%、「悪い」が24%と正反対だったということもわかりました。このことからもスキンシップが親子の愛情を確かなものにすると同時に、子どもの情緒を安定させ、自信を与えてくれる働きを持っていることがわかります。[18]

 日本の伝統的子育てであるスキンシップは、脳科学の世界でも子どもの成長にプラスであることがわかっています。明治の父親たちに負けないくらいのスキンシップで日本の子どもたちを強くて優しい子どもたちに育てていきたいものです。

[15]渡辺京二『逝きし世の面影』(平凡社)391‐392
[16]斎藤孝『童子教』(致知出版社)167‐168
[17]山口創『子供の「脳」は肌にある』(光文社新書)122‐135
[18]ゴールドコースト観光局およびクイーンズランド州政府観光局日本事務所調査

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