NPO法人エトセトラ / Qでつなごう!幸せの子育て・目次

問題31 人生で「成功する子」と「失敗する子」の分かれ目は?

 グラフは、このことをわかりやすくイメージしたものです。
 底辺にあるのは幼少期の逆境体験です。それがどのような不幸とつながっていくのかを見てみましょう。下から二番目の層が同年齢の子と比べた場合の発達不全です。三歳児健診や就学時健診などのときに発見されることがあります。下から三番目は情緒や認知の障害です。気持ちのコントロールがうまく出来ずに友だち関係で苦労したり、勉強の理解の仕方に困難が表れて苦労したりします。下から四番目は危険な行動、問題行動をとるようになるということです。非行などもここに当てはまるでしょう。そして、上から二番目が疾病や二次的障害などといった社会的問題。一番上が早期の死亡です。[36]

 ACEは1万7000人以上の成人に対して幼少期の養育体験と成人期の疾患などの関連を数値化した大規模調査です。この研究は「不幸」という目に見えないものを数値化し、統計学的な有意を示したことにおいて社会に衝撃を与えました。この事実は脳科学の面からも確かめられています。[37]

 脳のなかで幼少期のストレスから最も強く影響を受けるのが前頭前皮質、つまり自分をコントロールする活動―――感情面や認知面におけるあらゆる自己調整機能―――において重大な役割を果たす部位である。

 前頭前皮質というのは脳の中で「実行機能」という役割を持った場所です。実行機能は、集中する・じっと座っている・失敗から立ち直る・指示に従うといった学校の成績に影響するような機能を受け持っています。ここがうまく働かないと、大人になって仕事を持ったときにも、人間関係が広がったときにも苦労することになります。年齢が増え、生活の場が広がるにつれて、家庭でのストレス、学習でのストレス、友人関係でのストレス、社会でのストレスと広がっていくわけです。

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