NPO法人エトセトラ / Qでつなごう!幸せの子育て・目次

問題10 サルの赤ちゃんは、どちらの人形をお母さんだと思ったでしょう。

 さらに、ハーロウのこの実験について、脳科学者の澤口俊之氏は重要な補足をしています。この猿たちが死んだあとの脳を調べた結果、セロトニン(安心のホルモン)やドーパミン(好奇心のホルモン)が激減していました。安心感や好奇心を生み出す神経機能が育っていなかったわけです。そして、このようなことは、2歳くらいまでの間に隔離されると顕著に表れると言います。逆に、2歳を過ぎてから母猿と隔離をした場合は、時間がかかったとしても最後は群れに戻れるようになると言います。愛着を形成するためには重要な時期があるということも忘れてはなりません。[29]

 ここにショッキングな本があります。正司昌子氏の書いた『授乳時のケータイで子どもは壊れる』という本です。タイトルも衝撃的ですが中身もショッキングです。九州大谷短期大学の先生方がおこなったアンケート調査によりますと、赤ちゃんに母乳やミルクをあげるときにテレビをつけていたことのある母親は約8割にも達していたそうです。[30]
 授乳時にテレビをつけていたということは、母親の視線がテレビに行っていた可能性があるということです。ハーロウの実験で言えば、栄養と抱っこがあって応答が存在しない状態に陥りやすい環境です。8割の母親がテレビにくぎ付けになっていたということではありませんが、その8割の母親が「応答することの大切さ」を知っていたかどうかも不安です。知らないでテレビをつけているのと、知っていてテレビをつけているのとでは、赤ちゃんへの接し方が違ってくると思うのです。栄養と抱っこだけではない授乳の大切さを多くの人に知ってもらいたいと思います。

出題のポイント

AよりはBの方が母親と認められるというだけで、結果的にはどちらの場合も正常な発達は期待できないという事実が大切になります。正解は「B」ですが、問題を通して、「栄養+スキンシップ+応答」の3点セットが重要であるというところまでを伝えるのがポイントです。

[28]デボラ・ブラム『愛を科学で測った男』(白揚社)191-225
[29]澤口俊之『幼児教育と脳』(文藝春秋)187
[30]正司昌子『授乳時のケータイで子どもは壊れる』(KKベストセラーズ)56

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