NPO法人エトセトラ / Qでつなごう!幸せの子育て・目次

問題44 先天性表皮水疱症という難病の子に共通していることは?

 埼玉県の名栗村では、年代別に子育てに関する調査が行われ、結果が注目されました。戦前に子育てをした世代と戦後に子育てをした世代では、我が子に対する育て方がまったく違っていたのです。当時(2003年)に80代だった方は、「子どもをできるだけくっつけて、おっぱいは欲しいだけあげて育てた」と言います。「いつも抱いているか、あるいは自分が抱けないときは自分のお母さん(おばあちゃん)がおんぶして育てていた」という答えからわかる通り、常に肌のふれあいがあったようです。

 しかし、70代の方に聞くと、すでにそのような子育てはしていませんでした。70代の方は戦後にアメリカから入って来た育児法を取り入れていたので、常に肌をくっつけて子育てるそれまでの子育てを否定した形になっていました。

 その結果、どのような違いが生まれたのでしょうか。次のエピソードがその結果を物語っています。[31]

  80代のおばあさんが言うには。「病気で入院したときも、80代のおばあさんと70代のおばあさんでは、お見舞いに来る家族の対応が違う」のだそうです。80代のおばあさんのところにはお子さんもほとんど毎日のように来て、孫が来てもずっと離れないでいるけれど、70代の人の家族はちらっと来たら、もう次の一週間は来ない。非常に冷たいのよ、と。

 これが名栗村のおばあさんたちが実感した出来事です。

 この事例における80代と70代との間が、ちょうど日本の子育てが変化した時代にあたるので、このようなはっきりとした違いが出たのだと思います。 子育ての仕方は小中学校の教科書には出て来ません。それなのに私たちは結婚をして子どもが生まれると子育てをします。その子育ての仕方は誰から教わったのでしょう。核家族化が始まったのは1960年代だと言われています。親と同居しながら子育ての仕方を教えてもらったという人は少ないはずです。また、子育ての仕方を教えてくれる親がそばにいたとしても、その親たちは戦後生まれです。日本は敗戦によって過去の伝統的な子育ての方法を切り捨ててしまったという歴史を持っています。戦後生まれが知っている子育ては欧米から持ち込まれたものである場合も少なくありません。戦前までの日本の風土に根差した伝統的な子育ての方法を知っているのは80代を過ぎたお年寄りたちだけになりました。

 その一方で、脳科学や経済学の分野でエビデンス(科学的根拠)のある子育ての方法が明らかになってきました。現代の子育てではスキンシップの大切さが認められています。名栗村のおばあさんたちの事例はスキンシップの大切さを見直す機会を与えてくれます。

[28]『致知』二〇一三年一月号(致知出版)35
[29]山口創氏『子どもの脳は肌にある』(光文社新書)67‐77
[30]田下昌明『一に抱っこ 二に抱っこ 三、四がなくて五に笑顔』(高木書房)74
[31]三砂ちづる『オニババ化する女たち』 (光文社新書)34

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