このように「見える」「感じられる」は住居の形と結びついた日本の生活文化でした。それを「見えてしまう」「感じられてしまう」というマイナス面でとらえて切り捨ててしまったところに一つ目の落とし穴がありました。もう一つは欧米型の住宅の形だけを取り入れて西洋の生活文化を考慮しなかった点です。たしかに欧米では個室のある住居が主流ですが、家族のコミュニケーションを大切にする文化(ルール)があり、「子ども部屋は寝る時だけで家族はなるべくリビングで過ごす」といったことが強く決められています。『わが子を天才に育てる家』の著者・八納啓造氏は欧米の子ども部屋を次のように説明しています。[36]
基本的に、部屋には一人で寝るためのベッド、自分で服をたたんでしまう習慣を促すための棚などがあります。特別なケースでないと、個室に学習机などは入れないし、日本とは違って、学習専用机というものはほとんど存在しないのです。本家本元のアメリカやヨーロッパの子供部屋の考え方を知ると、日本の子供部屋がどれだけ特殊なものかが実感できるでしょう。
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こうした文化の違いを考慮せずに個室に走ってしまったのが戦後の日本です。高度成長と学歴社会がその後押しをする形となり、子どもには勉強部屋という名の個室を与える風潮が強まりました。「小学校に入学した時には学習机を与える」「年頃になったら個室を与える」といった風潮は今でも強くありますが、その背景にはこうした文化の違いや住宅が変化してきた歴史があります。現在の私たちが子育てをする時に、どのような選択をするにせよ、こうした背景を知っておいて損はないはずです。そして、その上で、「勉強ができる子はどんな環境で生活しているのか」という最近の状況を見ていくことにしましょう。
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