NPO法人エトセトラ / Qでつなごう!幸せの子育て・目次

問題45 有名中学に合格する子に共通した家のつくりとは?

 四十万靖氏・渡邊朗子氏の共著『頭のよい子が育つ家』には有名中学に合格した11家庭の家の間取りやその使い方が公開されています。四十万氏は言います。[37]

 受験、受験、とギスギスした雰囲気が、家庭内にない。それどころか、家族の仲が良く、会話が多く、早い話、家庭内が明るい。そして注目すべきは、有名中学受験に成功した子どもたちのほとんどが、子ども部屋の机で勉強をしていない―――とまあ、世間に流れる有名受験のイメージと、実際に受験に成功したおうちの実態とは、ずいぶんかけ離れているのでした。

 では、どこで勉強していたかということですが、その場所はリビングだったり、ダイニングだったり、子ども部屋だけども個室になっていなかったりと様々です。『子どもの才能は間取りが育てる』の著者・諸葛正弥氏は次のようにまとめています。[38]

 大切なことは、これらの子どもは「孤独な環境で勉強していない」という共通点を理解することなのです。つまり、勉強場所というより、住まい方や習慣で安心感や帰属意識を子どもにきちんと持たせることが結果として集中することのできる環境を提供していると考えられるのです。

 ふりかえってみますと、我が家の娘たちの子ども部屋も(偶然ですが)ここに書かれているような環境につくられていました。我が家の場合は公営住宅で家が狭いということもあったのですが、親の考えとして「お互いの気配が感じられるようにしたい」という願いもありました。そのために高校生の女の子の部屋であっても個室ではなく、引き戸や本棚など空気が伝わる工夫をしながら子どものプライベートを守るようにしてきました。我が家の子ども部屋が日本の伝統的な居住空間を引き継いでいたことを知ったのは、住宅や子育てのことを勉強してからのことです。現在ではこうした「つながる工夫」を最初から取り入れている住宅メーカーも増えてきています。「見える」「感じられる」という部分をちょうどいいバランスで取り入れる工夫が重視されてきたことによって、遠回りでしたが、日本独自の生活文化が受け継がれているように思います。

【答え】

孤独な環境で勉強させない(子ども部屋を勉強部屋という名の個室にさせない)

出題のポイント

これらの本の帯には「勉強部屋なんていらない!」「できる子は、子ども部屋では勉強しない」といった主張が書かれていますが、その根本には親子のコミュニケーションを大切にする生活やお互いの気配が感じられる日本独特の間取りや空間の使い方の工夫があります。完全な個室に閉じこもった環境ではないという内容になっていれば正解ということになります。

 親子のコミュニケーションは、家の間取りや空間の使い方のほかに、時間の使い方とも関係してきます。
 TOSS代表の向山洋一氏は全校児童を対象に親子のコミュニケーションの時間を調査しました。その結果、保護者の方は「1時間」とか「2時間」と答えたのに対して、子どもの方は「10分」とか「15分」という答えが多く、親子の認識に差が生じたことを報告しています。これは、親の方が「こうありたい」という願望に引きずられて答えてしまうのに対して、子どもの方はシビアな数値で答えることによる差であると向山氏は解説します。そして実際に向山氏が一日を時間で区切った詳細な調査をした結果、一日の親子の会話の合計時間は「十分以内」だったと言います。このことは日常生活において親子のコミュニケーションの確保することの難しさを伝えています。だからこそ、空間や時間の使い方は親が意図的に配慮しなえればならないと考えます。向山氏が提唱する「親子の会話が生まれるゴールデンタイム」を紹介します。[39]

@お風呂の時間
Aお手伝いの時間
B食事の時間

 この三つは親子の間に自然と会話が生まれるゴールデンタイムです。間取りや空間づくりと合わせて大切にしておきたい「時間」です。

[32]独立行政法人 国立青少年教育振興機構「青少年の体験活動等に関する実態調査」報告書
[33]松田妙子『家をつくって子を失う』(住宅産業研修財団)356
[34]三澤千代治『200年住宅誕生』(プレジデント社)203
[35]三澤千代治『200年住宅誕生』(プレジデント社)204
[36]八納啓造『わが子を天才に育てる家』(PHP研究所)42
[37]四十万靖氏・渡邊朗子『頭のよい子が育つ家』(日経BP社)7
[38]諸葛正弥『子どもの才能は間取りが育てる』(マイコミ新書)39
[39]向山洋一『心を育てる家庭学習法』(主婦の友社)66

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