2010年の夏に起きた「大阪二児置き去り死事件」を思い出します。母親は3歳の女の子と1歳9ヵ月の男の子をマンションの一室に残したまま育児を放棄しました。部屋のドアには粘着テープが貼られていました。トイレやキッチンで勝手に水遊びをするのを防ぐためだったそうです。冷蔵庫の中は空っぽでした。納豆やジュースなどをこぼすのを防ぐためだったそうです。母親には「しつけ(子育て)」の意志があったのだと思います。しかし、二人の遺体が発見された部屋の惨状は地獄でした。母親はこのマンションに引っ越して来てから5か月間に一度もごみを捨てていなかったことがわかっています。二人の幼な子はクーラーのない猛暑の部屋のごみの山の中で、折り重なるように亡くなっていたといいます。我が子をきちんとしつけようとする意志が見え隠れする一方で、殺意とも受け止められる残虐な放置をしてしまう母親の行動をどのように理解すればよいのでしょうか。裁判所の判決は「懲役30年」でした。一審での裁判長は次のように述べています。
被告人が自分の意思で子供らを引き取ると決めたのであるから、被告人は母親として、責任をもって子どもらを適切に養育すべきであった。
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