そして、もうひとつ重要なのは、「3歳までの愛着形成は連鎖する」ということです。たくさん抱っこをされて愛着形成がうまくいった子は脳(偏桃体)が健康に育って愛情深い子になります。成長して親になったときにも自分がされたように惜しみなく自然に赤ちゃんを抱っこして育てます。反対に、愛着形成がうまくいかなった子は自分の子育てにも「恐怖」や「放棄」といった極端な悩みを持ち込んでしまいがちです。
精神科医の岡田尊司氏の次のように言います。[25]
「抱っこは、スキンシップという面と、『支え、守る』という面が合わさった行動である。よく抱っこされた子は、甘えん坊で1見弱弱しく見えて、実のところ、強くたくましく育つ。その影響は、大人になってからも持続するほどである。」
このことはとても重要です。虐待問題に詳しい西澤哲氏は、反応性愛着障害を引き起こした子は共感性(他の人の視点で物事を考える力)の発達に困難を抱えることを指摘しています。西澤氏の例示が大変わかりやすいのでヒントにさせていただきます。[26]
たとえば、学校から帰って来た子が家にいるはずのお母さんがいない事態に直面した場合です。共感性の育っている子は、「あっ、お母さんは今、買い物に出かけているのかな」と考えることができます。同時に、「少し待っていたら戻って来るだろうな」と我慢することもできます。しかし、不安が強い子の場合はそれが出来ません。お母さんは買い物に行っているということを考えるよりも、お母さんがいないということに対する不満が先に立ち、家中を探し回ったり、お母さんが帰って来た時にお母さんを強く責めたりしてしまいます。逆に開放型の子は、相手が母親じゃなくてもいいわけですから、自分をかわいがってくれる相手の元へふらっと飛び出してしまうかもしれません。
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